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9.彼の失敗(モブ視点)
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ヴォンドラ伯爵ウルガドは、エルヴァイン公爵の元に赴くことになった。
先日の失言の謝罪をしなければならないからだ。
若きウルガドは、これまでも何度か失敗していた。彼は未熟者であり、色々と気が回らないことが多かったのだ。
しかし、そういった時も真摯に謝罪すれば許してもらえる。ウルガドはそう認識していた。
今まで彼のことを許さなかった者はいない。若さや先代である父の影響でそうなっているのだと、ウルガドは思っていた。
「エルヴァイン公爵、先日は本当に申し訳ありませんでした。自分の短絡的な発言を深く反省しております」
「……反省、か」
「どうかお許しください。決してカルナック男爵のことを侮辱した訳ではないのです。私はただ、彼のような英傑が亡くなるのを惜しんでいただけで……」
ウルガドは先日、民に尽くし過労で亡くなったカルナック男爵のことを侮辱する発言をした。
民に尽くしてその結果亡くなるなんて愚かだと、ウルガドは思っており、それをそのまま口にしてしまったのである。
それは、エルヴァイン公爵の逆鱗に触れてしまった。カルナック男爵が誇り高き貴族であったと思っている彼にとって、ウルガドの発言は許せないものだったのだ。
「まあ、良いだろう。その件について、私は既に許すと決めた。その考えを覆すのは、彼女に免じてよしておこう」
「彼女に免じて?」
「だが、私は君が先日離婚したということに関して、少し言いたいことがある。もっとも、それは個人の問題である故に、必要以上に言うつもりはないが」
エルヴァイン公爵の言葉に、ウルガドは目を丸めていた。
目の前にいる高貴な男性が、何を言っているか彼にはわからなかったのだ。
「先代のヴォンドラ伯爵は、ルヴァーリ伯爵家との婚約を成立させた英傑だ。その息子である君がそれを蔑ろにしたことにひどく心を痛めていることだろう」
「な、何をおっしゃっているのですか?」
「リメリアは英雄の末裔だ。ラルバルースは、王国が成立する前から活躍していた英雄だった。ルヴァーリ伯爵家には、他の家以上の伝統がある。そこには大きな力があった。それをまず君は理解していなかったのだろうな」
エルヴァイン公爵は、ウルガドに対して冷たい目を向けてきた。
その視線に、ウルガドは怯える。まだ若い彼にとって、長年公爵だったエルヴァイン公爵の気迫は受け止め切れないものだったのだ。
「何よりも、リメリアは強かな女性であった。彼女の支えがあってこその自分であると思わなかったのか?」
「わ、私は……」
「しかし、もう何もかもが遅いか。君はある意味、全てを失ったともいえる。これからは色々と困難が降りかかってくるだろう。まあ精々、頑張り給え」
突き放すような言葉に、ウルガドは固まっていた。
しかし彼は、まだ理解することができていなかった。自分が一体、何をしたのかということを。
先日の失言の謝罪をしなければならないからだ。
若きウルガドは、これまでも何度か失敗していた。彼は未熟者であり、色々と気が回らないことが多かったのだ。
しかし、そういった時も真摯に謝罪すれば許してもらえる。ウルガドはそう認識していた。
今まで彼のことを許さなかった者はいない。若さや先代である父の影響でそうなっているのだと、ウルガドは思っていた。
「エルヴァイン公爵、先日は本当に申し訳ありませんでした。自分の短絡的な発言を深く反省しております」
「……反省、か」
「どうかお許しください。決してカルナック男爵のことを侮辱した訳ではないのです。私はただ、彼のような英傑が亡くなるのを惜しんでいただけで……」
ウルガドは先日、民に尽くし過労で亡くなったカルナック男爵のことを侮辱する発言をした。
民に尽くしてその結果亡くなるなんて愚かだと、ウルガドは思っており、それをそのまま口にしてしまったのである。
それは、エルヴァイン公爵の逆鱗に触れてしまった。カルナック男爵が誇り高き貴族であったと思っている彼にとって、ウルガドの発言は許せないものだったのだ。
「まあ、良いだろう。その件について、私は既に許すと決めた。その考えを覆すのは、彼女に免じてよしておこう」
「彼女に免じて?」
「だが、私は君が先日離婚したということに関して、少し言いたいことがある。もっとも、それは個人の問題である故に、必要以上に言うつもりはないが」
エルヴァイン公爵の言葉に、ウルガドは目を丸めていた。
目の前にいる高貴な男性が、何を言っているか彼にはわからなかったのだ。
「先代のヴォンドラ伯爵は、ルヴァーリ伯爵家との婚約を成立させた英傑だ。その息子である君がそれを蔑ろにしたことにひどく心を痛めていることだろう」
「な、何をおっしゃっているのですか?」
「リメリアは英雄の末裔だ。ラルバルースは、王国が成立する前から活躍していた英雄だった。ルヴァーリ伯爵家には、他の家以上の伝統がある。そこには大きな力があった。それをまず君は理解していなかったのだろうな」
エルヴァイン公爵は、ウルガドに対して冷たい目を向けてきた。
その視線に、ウルガドは怯える。まだ若い彼にとって、長年公爵だったエルヴァイン公爵の気迫は受け止め切れないものだったのだ。
「何よりも、リメリアは強かな女性であった。彼女の支えがあってこその自分であると思わなかったのか?」
「わ、私は……」
「しかし、もう何もかもが遅いか。君はある意味、全てを失ったともいえる。これからは色々と困難が降りかかってくるだろう。まあ精々、頑張り給え」
突き放すような言葉に、ウルガドは固まっていた。
しかし彼は、まだ理解することができていなかった。自分が一体、何をしたのかということを。
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