旦那様の不手際は、私が頭を下げていたから許していただけていたことをご存知なかったのですか?

木山楽斗

文字の大きさ
11 / 50

11.緊張していたかは

しおりを挟む
 両親もお兄様もお義姉様も、バルハルド様との婚約をとても喜んでくれた。
 妾の子であっても、やはりベルージュ侯爵家との繋がりは大きい。そう思っているのも、その理由の一端であるだろう。
 ただ喜んでくれている一番の理由は、私がバルハルド様のことを楽しそうに話したからであるそうだ。私が婚約に前向きならそれでいいと、皆思ってくれているらしい。

「……しかし、流石ですね、バルハルド様は」
「……何の話だ?」
「挨拶ですよ。こう言うのはなんですが、とても良かったです」

 バルハルド様は、私の家族に挨拶するためにルヴァーリ伯爵家にやって来た。
 彼の挨拶は、見事なものだったといえるだろう。私の家族も皆、好感を抱いていたように思える。やはり商会の長だけあって、人の心を掴むのは上手いということだろうか。

「それなら良かった。俺としても安心できる」
「安心……バルハルド様でも、そういう風に思われるんですね?」
「……どういう意味だ?」
「いえ、とても堂々としていたので、緊張とかしていないのだと思っていましたが」
「……いや、緊張はしていた。当然のことではあるが、俺はこういった挨拶に赴くのは、初めてのことだからな」
「そうなのですか……」

 バルハルド様の言葉に、私は少し驚いた。
 彼は緊張とかそういったものとは、無縁とばかり思っていた。堂々と、また飄々としているバルハルド様がでも、人並みに緊張するものなのだろうか。

「意外そうな顔をしているな?」
「え? あ、その……意外ですから」
「くくくっ……まあ、そう見られているというなら、わざわざ種を明かす必要もなかったか。妻の前では、多少格好つけられる方が良い」
「……バルハルド様は、ちょっとキザですね?」
「冗談だ……」

 私の言葉に、バルハルド様はまた自嘲気味に笑みを浮かべていた。
 それは、あまり面白くもない冗談を言ったからだろうか。いや、多分そういう訳でもないだろう。

「どう見えているかは知らないが、俺はこれでも普通の人間だ。そこまで立派な人間ではない。そうあろうとはしているが、そうできないのが現実というものだ」
「そうあろうとしていることが、そもそも立派なことだと思います。本当に普通の人であるならば、どこかで心が折れてしまうものでしょうから」
「ふっ、あなたはどこまでも俺を肯定してくれるな。悪くない気分だが、その言葉を疑いそうになってしまう」
「私は本当にそう思っていますよ」

 バルハルド様のことを知れば知る程、彼に対する敬意が芽生えてくる。
 だからこそ、思うのはバルハルド様の自己評価の低さだ。
 それをなんとかしたいと思ってしまう。これから私が、バルハルド様が嫌がるくらいに褒めるとしようか。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

結婚5年目のお飾り妻は、空のかなたに消えることにした

三崎こはく
恋愛
ラフィーナはカールトン家のお飾り妻だ。 書類上の夫であるジャンからは大量の仕事を押しつけられ、ジャンの愛人であるリリアからは見下され、つらい毎日を送っていた。 ある日、ラフィーナは森の中で傷ついたドラゴンの子どもを拾った。 屋敷に連れ帰って介抱すると、驚いたことにドラゴンは人の言葉をしゃべった。『俺の名前はギドだ!』 ギドとの出会いにより、ラフィーナの生活は少しずつ変わっていく―― ※他サイトにも掲載 ※女性向けHOT1位感謝!7/25完結しました!

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】私に可愛げが無くなったから、離縁して使用人として雇いたい? 王妃修行で自立した私は離縁だけさせてもらいます。

西東友一
恋愛
私も始めは世間知らずの無垢な少女でした。 それをレオナード王子は可愛いと言って大層可愛がってくださいました。 大した家柄でもない貴族の私を娶っていただいた時には天にも昇る想いでした。 だから、貴方様をお慕いしていた私は王妃としてこの国をよくしようと礼儀作法から始まり、国政に関わることまで勉強し、全てを把握するよう努めてまいりました。それも、貴方様と私の未来のため。 ・・・なのに。 貴方様は、愛人と床を一緒にするようになりました。 貴方様に理由を聞いたら、「可愛げが無くなったのが悪い」ですって? 愛がない結婚生活などいりませんので、離縁させていただきます。 そう、申し上げたら貴方様は―――

9番と呼ばれていた妻は執着してくる夫に別れを告げる

風見ゆうみ
恋愛
幼い頃から言いたいことを言えずに、両親の望み通りにしてきた。 結婚だってそうだった。 良い娘、良い姉、良い公爵令嬢でいようと思っていた。 夫の9番目の妻だと知るまでは―― 「他の妻たちの嫉妬が酷くてね。リリララのことは9番と呼んでいるんだ」 嫉妬する側妃の嫌がらせにうんざりしていただけに、ターズ様が側近にこう言っているのを聞いた時、私は良い妻であることをやめることにした。 ※最後はさくっと終わっております。 ※独特の異世界の世界観であり、ご都合主義です。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。

完結 貴方が忘れたと言うのなら私も全て忘却しましょう

音爽(ネソウ)
恋愛
商談に出立した恋人で婚約者、だが出向いた地で事故が発生。 幸い大怪我は負わなかったが頭を強打したせいで記憶を失ったという。 事故前はあれほど愛しいと言っていた容姿までバカにしてくる恋人に深く傷つく。 しかし、それはすべて大嘘だった。商談の失敗を隠蔽し、愛人を侍らせる為に偽りを語ったのだ。 己の事も婚約者の事も忘れ去った振りをして彼は甲斐甲斐しく世話をする愛人に愛を囁く。 修復不可能と判断した恋人は別れを決断した。

完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ

音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。 だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。 相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。 どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。

処理中です...