旦那様の不手際は、私が頭を下げていたから許していただけていたことをご存知なかったのですか?

木山楽斗

文字の大きさ
38 / 50

38.二人の帰宅

しおりを挟む
「まさか、パルセットさんが来ているとは……」
「バルハルド様、お久し振りですね」
「お久し振りです、パルセットさん。お元気でしたか?」
「ええ、元気でしたよ」

 バルハルド様は、少し気まずそうにしながらパルセットさんと話していた。
 挨拶する前に訪ねられたという事実が、そうさせているのだろう。その気持ちは理解できる。私も先程、味わったばかりだからだ。

「リメリア嬢、こちらの女性は例の……」
「ええ、そうです。バルハルド様がこの町でお世話になっているパルセットさんです」
「そうでしたか……」

 ともに帰って来たエルガドも、パルセットさんの来訪には驚いているようだった。
 そんな彼に対して、パルセットさんは神妙な顔をしている。エルガドが誰だか、彼女からはまったくわからないからだろう。
 その説明をしなければならないのだが、それは中々に難しい。エルガドの事情は、どのように話すべきなのだろうか。

「あ、えっと、僕は居候のエルガドと申します。縁あって、バルハルド様の元でお世話になっています」
「そうですか。私はパルセットと申します」

 私が悩んでいると、エルガドが自己紹介してくれた。
 居候、確かにそれが今の彼の状況を手っ取り早く伝えられることだろうか。本当はもっと色々と根深い事情があるのだが、それを彼女に話す訳にはいかないし。

「しかしバルハルド様、婚約なんて驚きました」
「ああ、そのことも含めて、挨拶に行きたいと思っていましたが……」
「いえ、そんな。事情があることは理解しています。バルハルド様は、中々に複雑な立場ですからね。私に伝えるまで、時間がかかるのも当然のことでしょう」
「ご理解、感謝致します」

 パルセットさんは、ゆっくりと首を振ってバルハルド様の言葉を遮った。
 彼女の人柄からして、本当に気にしてはいなさそうだ。ただ、その言葉をすんなりと受け入れられはしないだろう。私だって、未だに申し訳なく思っているし。

「それにしても、リメリア様は良き人ですね。私なんかがそんなことを言うのはおこがましいのかもしれませんが、バルハルド様にお似合いだと思います」
「……それについては、自分でもそう思っています。いや、それは思い上がりでしょうか。俺にはもったいないくらいの婚約者ですから」
「バルハルド様、褒め過ぎですよ」

 色々と前後してしまったが、パルセットさんへの挨拶はとりあえずできたといえる。
 これから彼女とも長い付き合いになるだろう。私はそんなことを思うのだった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

結婚5年目のお飾り妻は、空のかなたに消えることにした

三崎こはく
恋愛
ラフィーナはカールトン家のお飾り妻だ。 書類上の夫であるジャンからは大量の仕事を押しつけられ、ジャンの愛人であるリリアからは見下され、つらい毎日を送っていた。 ある日、ラフィーナは森の中で傷ついたドラゴンの子どもを拾った。 屋敷に連れ帰って介抱すると、驚いたことにドラゴンは人の言葉をしゃべった。『俺の名前はギドだ!』 ギドとの出会いにより、ラフィーナの生活は少しずつ変わっていく―― ※他サイトにも掲載 ※女性向けHOT1位感謝!7/25完結しました!

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】私に可愛げが無くなったから、離縁して使用人として雇いたい? 王妃修行で自立した私は離縁だけさせてもらいます。

西東友一
恋愛
私も始めは世間知らずの無垢な少女でした。 それをレオナード王子は可愛いと言って大層可愛がってくださいました。 大した家柄でもない貴族の私を娶っていただいた時には天にも昇る想いでした。 だから、貴方様をお慕いしていた私は王妃としてこの国をよくしようと礼儀作法から始まり、国政に関わることまで勉強し、全てを把握するよう努めてまいりました。それも、貴方様と私の未来のため。 ・・・なのに。 貴方様は、愛人と床を一緒にするようになりました。 貴方様に理由を聞いたら、「可愛げが無くなったのが悪い」ですって? 愛がない結婚生活などいりませんので、離縁させていただきます。 そう、申し上げたら貴方様は―――

9番と呼ばれていた妻は執着してくる夫に別れを告げる

風見ゆうみ
恋愛
幼い頃から言いたいことを言えずに、両親の望み通りにしてきた。 結婚だってそうだった。 良い娘、良い姉、良い公爵令嬢でいようと思っていた。 夫の9番目の妻だと知るまでは―― 「他の妻たちの嫉妬が酷くてね。リリララのことは9番と呼んでいるんだ」 嫉妬する側妃の嫌がらせにうんざりしていただけに、ターズ様が側近にこう言っているのを聞いた時、私は良い妻であることをやめることにした。 ※最後はさくっと終わっております。 ※独特の異世界の世界観であり、ご都合主義です。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。

完結 貴方が忘れたと言うのなら私も全て忘却しましょう

音爽(ネソウ)
恋愛
商談に出立した恋人で婚約者、だが出向いた地で事故が発生。 幸い大怪我は負わなかったが頭を強打したせいで記憶を失ったという。 事故前はあれほど愛しいと言っていた容姿までバカにしてくる恋人に深く傷つく。 しかし、それはすべて大嘘だった。商談の失敗を隠蔽し、愛人を侍らせる為に偽りを語ったのだ。 己の事も婚約者の事も忘れ去った振りをして彼は甲斐甲斐しく世話をする愛人に愛を囁く。 修復不可能と判断した恋人は別れを決断した。

完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ

音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。 だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。 相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。 どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。

処理中です...