旦那様の不手際は、私が頭を下げていたから許していただけていたことをご存知なかったのですか?

木山楽斗

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37.幸運な訪問

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「パルセットさん、本当にありがとうございます。お陰で助かりました」
「いえいえ、お気になさらないでください。どうせ今日は、暇でしたから」

 パルセットさんに指導してもらいながら、私は家の掃除を終えた。
 やってみるとわかったが、そんなに恐れるものではなかったといえる。もちろん、きちんと綺麗にするのは難しいことではあるが、少なくとも尻込みする必要はなかっただろう。
 しかし、パルセットさんには申し訳ないことをしてしまった。私のせいで、推定休日を潰してしまったのだから、ここは何か補填をバルハルド様に頼むべきかもしれない。

「それにしても、リメリア様がわざわざ掃除するなんて、意外でした。てっきり、使用人の方々に任せるものだと思っていましたが……」
「こちらに来るまでは、私もそれでいいと思っていました。ただ、バルハルド様を見ていると、自分でやれることはやった方がいいと思うようになったんです」
「それはご立派ですね。流石は、バルハルド様が選んだ方……という言い方は、失礼でしょうか?」
「いいえ、私にとっては賞賛の言葉です」

 パルセットさんは、バルハルド様のことをかなり信頼しているようだった。
 それは当然のことだといえる。バルハルド様は信頼できる人なのだから、長い付き合いをしていれば、そうなるものだろう。

「といっても、掃除なんかどうしたらいいかわからなくて、悩んでいたんです。パルセットさんが訪ねて来て下さったことは、私にとって幸運でした」
「そんなことを言っていただけるなんて、なんだかとても嬉しいですね。でもそういうことなら、いつでも私を頼ってください。花嫁修業なんて大げさかもしれませんが、そういった事柄なら教えることができます」
「そうですね。せっかくですから、お願いしましょうか」

 パルセットさんから色々と習うことは、私の今後に活かせるような気がする。
 レスティア商会を率いるバルハルド様を支えたい。それが今の私の気持ちだ。
 となると、こういった家を預かるというのも私の役目だといえる。それらを学んでおくことは、きっと有意義であるだろう。

「しかし、本当に安心できます。バルハルド様に、リメリア様のような方が嫁いでくださるなんて……」
「そんなに大袈裟なことではありませんよ。私なんて、別に普通ですから」
「いえいえ、リメリア様はご立派な方です。どうかこれからも、バルハルド様のことを支えてあげてください」
「ええ、もちろんです」

 パルセットさんの言葉に、私は力強く頷いた。
 変な形になってしまったが、彼女に認められたことは嬉しいことだ。これは帰って来るバルハルド様に、良い報告ができるかもしれない。
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