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36.ありがたい提案
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「パルセットさん、私はリメリアといいます。バルハルド様とは、婚約させてもらっています」
「婚約、ですか……婚約? バルハルド様が?」
「ええ、まあ、そうなんです」
私は、パルセットさんに自分の素性を明かした。
すると彼女は、目を丸めている。やはりバルハルド様は、人から婚約などはしないと思われていたらしい。
「てっきり、生涯独り身を貫くものだと思っていましたが……」
「皆さん、そう言いますね……」
「ああ、すみません」
パルセットさんは、ばつが悪そうな表情をしていた。
バルハルド様に失礼なことを言ってしまったと思っているのだろう。
そういう表情を見ていると、私も罪悪感を覚えてしまう。私も、バルハルド様がそういう雰囲気がある人だと思ってしまっているからだ。
「まあ、気持ちがわからない訳ではありませんからね……それより、パルセットさんはどうしてこちらに?」
「ああ、この家は普段誰も住んでいないでしょう? だから時々、様子を見に来ているんです。近頃は空き巣なんかもいて、色々と物騒ですからね」
「そうですか。それはありがとうございます」
パルセットさんは、任されていること以上にこの家のことを気遣っているらしい。
その辺りのことも、バルハルド様が話していたことから、なんとなく理解することができる。
『この町に来て、右も左もわからない時にパルセットさんにはお世話になった。レスティア商会の者達には申し訳ない限りだが、俺がこの町で最も信頼できるのは彼女だ』
パルセットさんとは、結構長い付き合いであるようだ。
かなり信頼しているようだし、この町における母親のような存在なのかもしれない。それはパルセットさんにとっても、同じということだろうか。
「でも、バルハルド様はこちらに戻って来ていたのですね。それも、こんなに可愛らしい婚約者さんを連れて……」
「お上手ですね、パルセットさんは……ただすみません、お知らせするのが遅くなってしまって」
「いえ、構いませんよ。バルハルド様もお忙しい方ですからね」
バルハルド様の信頼している方には、当然挨拶に伺わなければならなかった。
ただお義母様のお墓参りがあり、今日はどうしても外せない用事であるらしく、先送りにせざるを得なかったのである。
パルセットさんは笑って許してくれているが、やはり申し訳ない。なんというか、私はいつも二手三手遅れているような気がする。
「所でリメリア様、その恰好ですが……」
「格好? あっ……」
「もしかして、お掃除ですか? よろしかったらお手伝いしますよ?」
私が掃除するためにエプロン姿だったのを見て、パルセットさんは笑顔でそう言ってくれた。
それは私にとって、とてもありがたい提案である。少々気が引けるが、ここはその厚意に甘えた方がいいのかもしれない。
「婚約、ですか……婚約? バルハルド様が?」
「ええ、まあ、そうなんです」
私は、パルセットさんに自分の素性を明かした。
すると彼女は、目を丸めている。やはりバルハルド様は、人から婚約などはしないと思われていたらしい。
「てっきり、生涯独り身を貫くものだと思っていましたが……」
「皆さん、そう言いますね……」
「ああ、すみません」
パルセットさんは、ばつが悪そうな表情をしていた。
バルハルド様に失礼なことを言ってしまったと思っているのだろう。
そういう表情を見ていると、私も罪悪感を覚えてしまう。私も、バルハルド様がそういう雰囲気がある人だと思ってしまっているからだ。
「まあ、気持ちがわからない訳ではありませんからね……それより、パルセットさんはどうしてこちらに?」
「ああ、この家は普段誰も住んでいないでしょう? だから時々、様子を見に来ているんです。近頃は空き巣なんかもいて、色々と物騒ですからね」
「そうですか。それはありがとうございます」
パルセットさんは、任されていること以上にこの家のことを気遣っているらしい。
その辺りのことも、バルハルド様が話していたことから、なんとなく理解することができる。
『この町に来て、右も左もわからない時にパルセットさんにはお世話になった。レスティア商会の者達には申し訳ない限りだが、俺がこの町で最も信頼できるのは彼女だ』
パルセットさんとは、結構長い付き合いであるようだ。
かなり信頼しているようだし、この町における母親のような存在なのかもしれない。それはパルセットさんにとっても、同じということだろうか。
「でも、バルハルド様はこちらに戻って来ていたのですね。それも、こんなに可愛らしい婚約者さんを連れて……」
「お上手ですね、パルセットさんは……ただすみません、お知らせするのが遅くなってしまって」
「いえ、構いませんよ。バルハルド様もお忙しい方ですからね」
バルハルド様の信頼している方には、当然挨拶に伺わなければならなかった。
ただお義母様のお墓参りがあり、今日はどうしても外せない用事であるらしく、先送りにせざるを得なかったのである。
パルセットさんは笑って許してくれているが、やはり申し訳ない。なんというか、私はいつも二手三手遅れているような気がする。
「所でリメリア様、その恰好ですが……」
「格好? あっ……」
「もしかして、お掃除ですか? よろしかったらお手伝いしますよ?」
私が掃除するためにエプロン姿だったのを見て、パルセットさんは笑顔でそう言ってくれた。
それは私にとって、とてもありがたい提案である。少々気が引けるが、ここはその厚意に甘えた方がいいのかもしれない。
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