18 / 30
18.知らない世界
しおりを挟む
「それでルシウスは、これからどうするつもりなの?」
「まあ、しばらくは王都に留まろうと思っています。その後は北へ向かおうかと」
「そう。それならしばらくは会えるということね」
「ええ、そういうことになります」
ルシウスの言葉に、私は少し嬉しくなっていた。
彼と気軽に会えるのは、私にとってはとても喜ばしいことだ。色々としがらもなくなったことだし、弟と親交を深めたいという気持ちもある。なんというか、これからの毎日が楽しくなりそうだ。
「お金はあるのかしら?」
「ええ、その辺りに関しては問題ありません。それなりに稼いでいますから」
「冒険者は中々安定しないと聞いているけれど、上手くやっているのね?」
「真面目に依頼をこなしていれば、生活に困るなんてことはありませんよ。生活ができるからこそ、冒険者もそれなりに数がいる訳ですし」
「まあ、言われてみればそれはそうよね」
冒険者は基本的に自由な職業である。そのため色々な人がいるのだろう。私が噂に聞くような人達は、悪い冒険者ということだろうか。
「困っているなら頼ってくれてもいいのよ?」
「ご心配なく、王都でも稼ぐつもりですからお金に困ることはないと思います」
「王都でも依頼はあるものなの?」
「ええ、もちろんです。むしろ、依頼は王都にこそ転がっていますよ」
「冒険者に関しても、王都が一番盛り上がっているのね……」
どうやら私は、冒険者に関してまったく知らないようだ。わかっていたことではあるが、それは少し恥ずかしい。
今後のために、弟から色々と聞いておいた方がいいかもしれない。私だって、冒険者に何かしらの依頼をすることはあるのかもしれないし。
「でも、騎士団の本拠地では討伐依頼なんかは少ないんじゃないの?」
「いいえ、騎士団の本拠地であるからこそ、むしろそういう依頼は多いんですよ。騎士団が依頼を出しますからね」
「そうなの? でも自分達でやる方が早いんじゃ……」
「騎士団だけでは手が回らないんですよ。王国直々の部隊ですから、色々と制約もありますし、全て手が回らないというのが現状らしいです」
「制約……そっか」
ルシウスの言葉に、私は騎士団や魔術師団がどういった組織であるかを思い出していた。
王国によって作られた二つの組織には、色々と決まりごとがあるのだ。自由な気質である魔術師団であまりそれを意識することがないので、少し頭から抜けていた。
そんな組織が自由に討伐できる訳なんてないのだ。だからこそ、自由な冒険者に頼るということなのだろう。
「それに魔術師団からも依頼が出ることがありますよ」
「え? そうなの?」
「ええ、知りませんでしたか?」
「ええ、その辺りはまったく……」
どうやら私は、冒険者所か騎士団や魔術師団に関する知識までなかったらしい。なんというか、少し情けなくなってくる。弟の前で無知を晒すのは流石に恥ずかしい。
「騎士団や魔術師団といった王国直属の組織からの依頼は信頼もできますから、冒険者としてはありがたい限りなんですよ。依頼を出した所によっては、問題が起こったりもしますからね」
「……世の中には色々な人がいるのね」
「ええ、そうですね。お陰で、色々な世界を見てきましたよ」
ルシウスは私に笑顔を向けてきた。きっと大変だったはずだが、彼はとても嬉しそうにしている。やはり彼には、冒険者が肌に合っているということなのだろう。
そんな彼に比べて、私は無知である。それは私が貴族の世界くらいしか知らないからなのだろう。私はもっと、色々なことを知る必要があるのかもしれない。今後この世界で自由に生きていくためには、それがきっと必要だ。
「見聞を広めるのはいいことよね。私もそれは見習わなければならないわね」
「おや、姉上も冒険者に?」
「いいえ、それは流石に無理だわ」
ルシウスの言葉を、私は即座に否定した。
確かに彼のように世の中を知っていく必要はあると思ったが、冒険者にはなりたくない。私には多分、魔術師団のような組織に属する方が似合っているはずだ。
「そうですか。それは残念です。姉上ならいい冒険者になれると思ったのですが……」
「私はわざわざ危険に飛び込もうなんて思わないわ」
「俺とコンビを組んで、各地を旅してもらえると結構嬉しかったんですけどね」
「残念ながら、今はここを離れるつもりはないわ」
私は今まで、危険を避けて生きてきた。そんな私に危険を好む冒険者なんて無理だ。
もっとも、ルシウスと旅をするというのはそれなりに魅力的な提案ではある。機会があったら、そういう旅をしてみるのもいいかもしれない。
そんなことを思いながら、私はルシウスと話を続けるのだった。
「まあ、しばらくは王都に留まろうと思っています。その後は北へ向かおうかと」
「そう。それならしばらくは会えるということね」
「ええ、そういうことになります」
ルシウスの言葉に、私は少し嬉しくなっていた。
彼と気軽に会えるのは、私にとってはとても喜ばしいことだ。色々としがらもなくなったことだし、弟と親交を深めたいという気持ちもある。なんというか、これからの毎日が楽しくなりそうだ。
「お金はあるのかしら?」
「ええ、その辺りに関しては問題ありません。それなりに稼いでいますから」
「冒険者は中々安定しないと聞いているけれど、上手くやっているのね?」
「真面目に依頼をこなしていれば、生活に困るなんてことはありませんよ。生活ができるからこそ、冒険者もそれなりに数がいる訳ですし」
「まあ、言われてみればそれはそうよね」
冒険者は基本的に自由な職業である。そのため色々な人がいるのだろう。私が噂に聞くような人達は、悪い冒険者ということだろうか。
「困っているなら頼ってくれてもいいのよ?」
「ご心配なく、王都でも稼ぐつもりですからお金に困ることはないと思います」
「王都でも依頼はあるものなの?」
「ええ、もちろんです。むしろ、依頼は王都にこそ転がっていますよ」
「冒険者に関しても、王都が一番盛り上がっているのね……」
どうやら私は、冒険者に関してまったく知らないようだ。わかっていたことではあるが、それは少し恥ずかしい。
今後のために、弟から色々と聞いておいた方がいいかもしれない。私だって、冒険者に何かしらの依頼をすることはあるのかもしれないし。
「でも、騎士団の本拠地では討伐依頼なんかは少ないんじゃないの?」
「いいえ、騎士団の本拠地であるからこそ、むしろそういう依頼は多いんですよ。騎士団が依頼を出しますからね」
「そうなの? でも自分達でやる方が早いんじゃ……」
「騎士団だけでは手が回らないんですよ。王国直々の部隊ですから、色々と制約もありますし、全て手が回らないというのが現状らしいです」
「制約……そっか」
ルシウスの言葉に、私は騎士団や魔術師団がどういった組織であるかを思い出していた。
王国によって作られた二つの組織には、色々と決まりごとがあるのだ。自由な気質である魔術師団であまりそれを意識することがないので、少し頭から抜けていた。
そんな組織が自由に討伐できる訳なんてないのだ。だからこそ、自由な冒険者に頼るということなのだろう。
「それに魔術師団からも依頼が出ることがありますよ」
「え? そうなの?」
「ええ、知りませんでしたか?」
「ええ、その辺りはまったく……」
どうやら私は、冒険者所か騎士団や魔術師団に関する知識までなかったらしい。なんというか、少し情けなくなってくる。弟の前で無知を晒すのは流石に恥ずかしい。
「騎士団や魔術師団といった王国直属の組織からの依頼は信頼もできますから、冒険者としてはありがたい限りなんですよ。依頼を出した所によっては、問題が起こったりもしますからね」
「……世の中には色々な人がいるのね」
「ええ、そうですね。お陰で、色々な世界を見てきましたよ」
ルシウスは私に笑顔を向けてきた。きっと大変だったはずだが、彼はとても嬉しそうにしている。やはり彼には、冒険者が肌に合っているということなのだろう。
そんな彼に比べて、私は無知である。それは私が貴族の世界くらいしか知らないからなのだろう。私はもっと、色々なことを知る必要があるのかもしれない。今後この世界で自由に生きていくためには、それがきっと必要だ。
「見聞を広めるのはいいことよね。私もそれは見習わなければならないわね」
「おや、姉上も冒険者に?」
「いいえ、それは流石に無理だわ」
ルシウスの言葉を、私は即座に否定した。
確かに彼のように世の中を知っていく必要はあると思ったが、冒険者にはなりたくない。私には多分、魔術師団のような組織に属する方が似合っているはずだ。
「そうですか。それは残念です。姉上ならいい冒険者になれると思ったのですが……」
「私はわざわざ危険に飛び込もうなんて思わないわ」
「俺とコンビを組んで、各地を旅してもらえると結構嬉しかったんですけどね」
「残念ながら、今はここを離れるつもりはないわ」
私は今まで、危険を避けて生きてきた。そんな私に危険を好む冒険者なんて無理だ。
もっとも、ルシウスと旅をするというのはそれなりに魅力的な提案ではある。機会があったら、そういう旅をしてみるのもいいかもしれない。
そんなことを思いながら、私はルシウスと話を続けるのだった。
25
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢がヒロインからのハラスメントにビンタをぶちかますまで。
倉桐ぱきぽ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した私は、ざまぁ回避のため、まじめに生きていた。
でも、ヒロイン(転生者)がひどい!
彼女の嘘を信じた推しから嫌われるし。無実の罪を着せられるし。そのうえ「ちゃんと悪役やりなさい」⁉
シナリオ通りに進めたいヒロインからのハラスメントは、もう、うんざり!
私は私の望むままに生きます!!
本編+番外編3作で、40000文字くらいです。
⚠途中、視点が変わります。サブタイトルをご覧下さい。
シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした
黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)
巻き込まれて婚約破棄になった私は静かに舞台を去ったはずが、隣国の王太子に溺愛されてしまった!
ユウ
恋愛
伯爵令嬢ジゼルはある騒動に巻き込まれとばっちりに合いそうな下級生を庇って大怪我を負ってしまう。
学園内での大事件となり、体に傷を負った事で婚約者にも捨てられ、学園にも居場所がなくなった事で悲しみに暮れる…。
「好都合だわ。これでお役御免だわ」
――…はずもなかった。
婚約者は他の女性にお熱で、死にかけた婚約者に一切の関心もなく、学園では派閥争いをしており正直どうでも良かった。
大切なのは兄と伯爵家だった。
何かも失ったジゼルだったが隣国の王太子殿下に何故か好意をもたれてしまい波紋を呼んでしまうのだった。
悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
※他サイト様にも掲載中です
異世界転生した私は甘味のものがないことを知り前世の記憶をフル活用したら、甘味長者になっていた~悪役令嬢なんて知りません(嘘)~
詩河とんぼ
恋愛
とあるゲームの病弱悪役令嬢に異世界転生した甘味大好きな私。しかし、転生した世界には甘味のものないことを知る―――ないなら、作ろう!と考え、この世界の人に食べてもらうと大好評で――気づけば甘味長者になっていた!?
小説家になろう様でも投稿させていただいております
8月29日 HOT女性向けランキングで10位、恋愛で49位、全体で74位
8月30日 HOT女性向けランキングで6位、恋愛で24位、全体で26位
8月31日 HOT女性向けランキングで4位、恋愛で20位、全体で23位
に……凄すぎてびっくりしてます!ありがとうございますm(_ _)m
悪役令嬢の取り巻き令嬢(モブ)だけど実は影で暗躍してたなんて意外でしょ?
無味無臭(不定期更新)
恋愛
無能な悪役令嬢に変わってシナリオ通り進めていたがある日悪役令嬢にハブられたルル。
「いいんですか?その態度」
悪役令嬢に転生したら手遅れだったけど悪くない
おこめ
恋愛
アイリーン・バルケスは断罪の場で記憶を取り戻した。
どうせならもっと早く思い出せたら良かったのに!
あれ、でも意外と悪くないかも!
断罪され婚約破棄された令嬢のその後の日常。
※うりぼう名義の「悪役令嬢婚約破棄諸々」に掲載していたものと同じものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる