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17.旅に出た弟
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「まさかあなたが私の元を訪ねて来るなんて思っていなかったわ」
「王都に立ち寄る用があったので、せっかくなら姉上に挨拶をしようと思ったのです」
「私が王都にいるということは誰から?」
「リベルトから聞きました。この前、あいつらの元を訪ねたのです」
「ああ、そうだったのね」
ルシウスは、私の腹違いの弟だ。彼は双子であり、リベルトという兄がいる。ちなみにウェルリグル侯爵家十八番目の子供であるレミティアも、彼らの直接の妹だ。
そんな三人とは、親しくさせてもらっている。私がウェルリグル侯爵家で最も親しい兄弟は、彼らといえるだろう。というか、彼ら以外の兄弟とはほぼ関わりがない。
「あなたは今、どこを拠点としているの?」
「今は特にどこということはありませんね。放浪中です」
「放浪中ね……指名手配とかされていないでしょうね?」
「それは問題ありません。これでも界隈では善人と知られています」
私ですらほとんど放っておかれていることからもわかるかもしれないが、三兄弟もお父様からはほとんど見向きされていない。そのため、各々結構自由にしているというのが現状である。
その中でもルシウスは最も自由だといえるだろう。何せ彼は貴族の枠を超えて、旅に出ていてるのだから。
「冒険者界隈ということかしら?」
「ええ、その通りです」
「荒くれ者が多い界隈と聞いているけれど、その中での善人という評価は一体どう考えればいいのかしらね?」
「姉上、それは偏見というものです。確かに荒くれ者も多いですが、気のいい奴らもいるのですよ?」
「まあ、確かに偏見に塗れていることは否定しないわ」
冒険者という存在は、ゲームにおいてはまったく触れられていない要素だった。そして貴族として生まれた私はこちらの世界においても冒険者と関わることがなかったため、よく知らないというのが正直な所だ。
ただその職業柄危険が多いことは確かである。そんなことを弟がやっているというのは、姉としては少々心配だ。
「あまり無茶をしたら駄目よ?」
「それはわかっています。とはいえ、危険に飛び込んでこそ冒険者ともいえますから」
「そういう考え方をするのが、荒くれ者と言われる原因なのではないかしら?」
「……まあ、確かにそれはそうかもしれませんね」
ルシウスは貴族というものを窮屈に思うような性格であった。だから彼にはきっと冒険者は肌に合っているのだろう。
しかしやはり心配である。危険に飛び込んだ結果帰って来ないなんてことにならないことを願うばかりだ。
「ああ姉上、そういえばレミティアが、姉上は全然遊びに来てくれないと愚痴っていましたよ?」
「え? ああ、まあそうね。最近は色々と忙しかったから……」
「もしも暇があったら、訪ねてやってください。リベルトが魔法学園に入学して、一人になったから寂しがっていましたから」
「魔法学園……ああ」
ルシウスの言葉に、私は彼ら双子がその年齢に達していることを思い出した。
思い返してみれば、確かに私が卒業したら入学したと以前話していたような気もする。色々と忙しくて、すっかり頭から抜けていたが、入学祝などを用意しておくべきだったかもしれない。
「レミティアは、姉上のことを慕っているみたいですからね。まあ、俺も姉上のことは慕っていますが」
「それはありがたい限りね」
三兄弟は、私のことを慕ってくれている。それはとても嬉しいことではあるのだが、少々わからない。こんな私のどこがいいのかが。
親しくさせてもらっているが、諸事情により私は結構冷たい態度を取ってきたような気がする。それなのにどうしてここまで慕えてもらえるのかは結構謎だ。
「……そういえば、姉上は魔術師団に入ったのですよね?」
「ええ、そうよ?」
「魔術師団には、何度かお世話になっていますが、まさか姉上がその一員になるとは思っていませんでした。魔術師団はどうですか?」
「まあ、それなりに順調にやらせてもらっているわ」
「そうですか。それなら何よりです」
私の言葉に、ルシウスは笑顔を見せてくれた。
この弟も、私の新たなる門出を祝ってくれているようだ。それも本当に嬉しいことである。魔術師団に何度かお世話になったというのは、少々気になる言葉ではあるが。
「王都に立ち寄る用があったので、せっかくなら姉上に挨拶をしようと思ったのです」
「私が王都にいるということは誰から?」
「リベルトから聞きました。この前、あいつらの元を訪ねたのです」
「ああ、そうだったのね」
ルシウスは、私の腹違いの弟だ。彼は双子であり、リベルトという兄がいる。ちなみにウェルリグル侯爵家十八番目の子供であるレミティアも、彼らの直接の妹だ。
そんな三人とは、親しくさせてもらっている。私がウェルリグル侯爵家で最も親しい兄弟は、彼らといえるだろう。というか、彼ら以外の兄弟とはほぼ関わりがない。
「あなたは今、どこを拠点としているの?」
「今は特にどこということはありませんね。放浪中です」
「放浪中ね……指名手配とかされていないでしょうね?」
「それは問題ありません。これでも界隈では善人と知られています」
私ですらほとんど放っておかれていることからもわかるかもしれないが、三兄弟もお父様からはほとんど見向きされていない。そのため、各々結構自由にしているというのが現状である。
その中でもルシウスは最も自由だといえるだろう。何せ彼は貴族の枠を超えて、旅に出ていてるのだから。
「冒険者界隈ということかしら?」
「ええ、その通りです」
「荒くれ者が多い界隈と聞いているけれど、その中での善人という評価は一体どう考えればいいのかしらね?」
「姉上、それは偏見というものです。確かに荒くれ者も多いですが、気のいい奴らもいるのですよ?」
「まあ、確かに偏見に塗れていることは否定しないわ」
冒険者という存在は、ゲームにおいてはまったく触れられていない要素だった。そして貴族として生まれた私はこちらの世界においても冒険者と関わることがなかったため、よく知らないというのが正直な所だ。
ただその職業柄危険が多いことは確かである。そんなことを弟がやっているというのは、姉としては少々心配だ。
「あまり無茶をしたら駄目よ?」
「それはわかっています。とはいえ、危険に飛び込んでこそ冒険者ともいえますから」
「そういう考え方をするのが、荒くれ者と言われる原因なのではないかしら?」
「……まあ、確かにそれはそうかもしれませんね」
ルシウスは貴族というものを窮屈に思うような性格であった。だから彼にはきっと冒険者は肌に合っているのだろう。
しかしやはり心配である。危険に飛び込んだ結果帰って来ないなんてことにならないことを願うばかりだ。
「ああ姉上、そういえばレミティアが、姉上は全然遊びに来てくれないと愚痴っていましたよ?」
「え? ああ、まあそうね。最近は色々と忙しかったから……」
「もしも暇があったら、訪ねてやってください。リベルトが魔法学園に入学して、一人になったから寂しがっていましたから」
「魔法学園……ああ」
ルシウスの言葉に、私は彼ら双子がその年齢に達していることを思い出した。
思い返してみれば、確かに私が卒業したら入学したと以前話していたような気もする。色々と忙しくて、すっかり頭から抜けていたが、入学祝などを用意しておくべきだったかもしれない。
「レミティアは、姉上のことを慕っているみたいですからね。まあ、俺も姉上のことは慕っていますが」
「それはありがたい限りね」
三兄弟は、私のことを慕ってくれている。それはとても嬉しいことではあるのだが、少々わからない。こんな私のどこがいいのかが。
親しくさせてもらっているが、諸事情により私は結構冷たい態度を取ってきたような気がする。それなのにどうしてここまで慕えてもらえるのかは結構謎だ。
「……そういえば、姉上は魔術師団に入ったのですよね?」
「ええ、そうよ?」
「魔術師団には、何度かお世話になっていますが、まさか姉上がその一員になるとは思っていませんでした。魔術師団はどうですか?」
「まあ、それなりに順調にやらせてもらっているわ」
「そうですか。それなら何よりです」
私の言葉に、ルシウスは笑顔を見せてくれた。
この弟も、私の新たなる門出を祝ってくれているようだ。それも本当に嬉しいことである。魔術師団に何度かお世話になったというのは、少々気になる言葉ではあるが。
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