21 / 30
21.弟からの評価
しおりを挟む
私は、エクティス様とアルメリアの元を訪ねていた。
二人に、というよりも弟であるエクティス様にウェルド様のことを相談しようと思ったからである。
「ウェルド兄上のことについては、僕も心配していました。騎士団長に就任してから、かなり元気がなくなったと兄上や姉上から聞いています。僕は三年間魔法学園に通っていましたから、丁度ウェルド兄上が苦しんでいた期間について知らないのですが……」
私から話を聞いたエクティス様は、苦い顔をしながらそう言ってきた。
彼が兄弟と仲が良いということは知っている。ゲームの中で、そのようなやり取りがあったからだ。
そのため、彼に頼るのが一番いいと思った。しかし、どうやらエクティス様も既に悩んだ後だったようである。
「まあ、ウェルド兄上は自分に厳しい人ですからね……どうしても過ぎたる役職を与えられたと思ってしまうのでしょう」
「……実際の所、ウェルド様の騎士団長としての手腕はどうなのですか?」
「弟であるため贔屓目は少しあるかもしれませんが、少なくとも前の騎士団長の時よりも騎士団は良いものになっていると思いますよ」
「そうなのですか?」
「ええ、昔はもっと張り詰めた空気でしたからね……」
エクティス様は、苦笑いを浮かべていた。それはつまり、かつての騎士団がかなり荒れていたということを表しているのだろう。
ということは、ウェルド様には確かな手腕があるということだ。それなのにあんなに自己評価が低いのは、どういうことなのだろうか。
「まあそれに関しては、魔術師団との対立がなくなったということもあるんだとは思います。フラウバッセンさんが魔術師団の団長になってから、かなり変わりましたからね……」
「そんなに変わったんですか?」
「ええ、あの人はなんというか飄々としていて、怒りを躱すのが上手くてですね。前の騎士団長が突っかかっていっても、それはもう右から左に受け流して……」
「……まあ、なんとなくわかります」
フラウバッセンさんが魔術師団長になったのは、王国にとってとても有益だったのかもしれない。それによって、二つの団の対立がなくなった訳だし。
ただもしかしたら、それがウェルド様の自己評価が低い原因という可能性もある。フラウバッセンさんの功績に目がいって、自分を正しく見られていないのかもしれない。
「ウェルド兄上は、ああいう団長になりたいと思っているのかもしれません」
「……フラウバッセンさんに、ですか?」
「ええ、この前見習いたい点が多くあると言っていましたから」
「いや、それはなんというか……」
フラウバッセンさんが尊敬に値する人であることは間違いないとは思う。しかしウェルド様が彼のようになるのはあまりいいことだとは思えない。騎士団と魔術師団は気風も違うので、フラウバッセンさんのようになるのは明らかに間違っている。
どうやら、ウェルド様は中々迷走しているようだ。そういう所も含めて、彼は本当にすごく真面目な人なのだろう。
「まあ実の所、兄上のそういう所を解決する方法はあるとは思っているんです」
「え? そうなんですか?」
「ええ、身を固めるのが一番だと思います」
「身を固める……?」
エクティス様の言葉に、私は言葉を詰まらせることになった。
もちろん、その言葉の意味はわかる。ウェルド様は独身だ。つまり、妻を迎えるのが一番だとエクティス様は言っているのだろう。
ただなんというか、他意があるような気がする。彼の私を見る目がそんな感じなのだ。
「そういう人ができれば、兄上も多少は安らぎを得られると思うんです。一人で思い詰めがちですから、傍に相談できる人がいれば少しは気が楽になると思いませんか?」
「それはそうかもしれませんが……」
「ラナトゥーリ嬢……ご婚約の予定などはありますか?」
「やはり、そういう話なのですね……」
エクティス様の発言に、私は頭を抱えることになった。
まさか、ここでそのような話をされるとは思っていなかった。だがエクティス様は真剣な表情をしている。つまりこれは、私が思っているよりも重大な話なのだろう。
私は一度深呼吸をしてから姿勢を正す。ここは真剣に話を聞くべきだろう。今は恐らく、そういう場なのだ。
二人に、というよりも弟であるエクティス様にウェルド様のことを相談しようと思ったからである。
「ウェルド兄上のことについては、僕も心配していました。騎士団長に就任してから、かなり元気がなくなったと兄上や姉上から聞いています。僕は三年間魔法学園に通っていましたから、丁度ウェルド兄上が苦しんでいた期間について知らないのですが……」
私から話を聞いたエクティス様は、苦い顔をしながらそう言ってきた。
彼が兄弟と仲が良いということは知っている。ゲームの中で、そのようなやり取りがあったからだ。
そのため、彼に頼るのが一番いいと思った。しかし、どうやらエクティス様も既に悩んだ後だったようである。
「まあ、ウェルド兄上は自分に厳しい人ですからね……どうしても過ぎたる役職を与えられたと思ってしまうのでしょう」
「……実際の所、ウェルド様の騎士団長としての手腕はどうなのですか?」
「弟であるため贔屓目は少しあるかもしれませんが、少なくとも前の騎士団長の時よりも騎士団は良いものになっていると思いますよ」
「そうなのですか?」
「ええ、昔はもっと張り詰めた空気でしたからね……」
エクティス様は、苦笑いを浮かべていた。それはつまり、かつての騎士団がかなり荒れていたということを表しているのだろう。
ということは、ウェルド様には確かな手腕があるということだ。それなのにあんなに自己評価が低いのは、どういうことなのだろうか。
「まあそれに関しては、魔術師団との対立がなくなったということもあるんだとは思います。フラウバッセンさんが魔術師団の団長になってから、かなり変わりましたからね……」
「そんなに変わったんですか?」
「ええ、あの人はなんというか飄々としていて、怒りを躱すのが上手くてですね。前の騎士団長が突っかかっていっても、それはもう右から左に受け流して……」
「……まあ、なんとなくわかります」
フラウバッセンさんが魔術師団長になったのは、王国にとってとても有益だったのかもしれない。それによって、二つの団の対立がなくなった訳だし。
ただもしかしたら、それがウェルド様の自己評価が低い原因という可能性もある。フラウバッセンさんの功績に目がいって、自分を正しく見られていないのかもしれない。
「ウェルド兄上は、ああいう団長になりたいと思っているのかもしれません」
「……フラウバッセンさんに、ですか?」
「ええ、この前見習いたい点が多くあると言っていましたから」
「いや、それはなんというか……」
フラウバッセンさんが尊敬に値する人であることは間違いないとは思う。しかしウェルド様が彼のようになるのはあまりいいことだとは思えない。騎士団と魔術師団は気風も違うので、フラウバッセンさんのようになるのは明らかに間違っている。
どうやら、ウェルド様は中々迷走しているようだ。そういう所も含めて、彼は本当にすごく真面目な人なのだろう。
「まあ実の所、兄上のそういう所を解決する方法はあるとは思っているんです」
「え? そうなんですか?」
「ええ、身を固めるのが一番だと思います」
「身を固める……?」
エクティス様の言葉に、私は言葉を詰まらせることになった。
もちろん、その言葉の意味はわかる。ウェルド様は独身だ。つまり、妻を迎えるのが一番だとエクティス様は言っているのだろう。
ただなんというか、他意があるような気がする。彼の私を見る目がそんな感じなのだ。
「そういう人ができれば、兄上も多少は安らぎを得られると思うんです。一人で思い詰めがちですから、傍に相談できる人がいれば少しは気が楽になると思いませんか?」
「それはそうかもしれませんが……」
「ラナトゥーリ嬢……ご婚約の予定などはありますか?」
「やはり、そういう話なのですね……」
エクティス様の発言に、私は頭を抱えることになった。
まさか、ここでそのような話をされるとは思っていなかった。だがエクティス様は真剣な表情をしている。つまりこれは、私が思っているよりも重大な話なのだろう。
私は一度深呼吸をしてから姿勢を正す。ここは真剣に話を聞くべきだろう。今は恐らく、そういう場なのだ。
22
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。
槙村まき
恋愛
スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。
それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。
挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。
そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……!
第二章以降は、11時と23時に更新予定です。
他サイトにも掲載しています。
よろしくお願いします。
25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!
乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!
ユウ
恋愛
平凡な伯爵令嬢のリネットは優しい婚約者と妹と穏やかで幸福な日々を送っていた。
相手は公爵家の嫡男であり第一王子殿下の側近で覚えもめでたく社交界の憧れの漆黒の騎士と呼ばれる貴族令息だった。
結婚式前夜、婚約者の妹に会いに学園に向かったが、そこで事件が起きる。
現在学園で騒動を起こしている第二王子とその友人達に勘違いから暴行を受け階段から落ちてしまう…
その時に前世の記憶を取り戻すのだった…
「悪役令嬢の兄の婚約者って…」
なんとも微妙なポジション。
しかも結婚前夜で傷物になる失態を犯してしまったリネットは婚約解消を望むのだが、悪役令嬢の義妹が王子に婚約破棄を突きつける事件に発展してしまう。
悪役令嬢がヒロインからのハラスメントにビンタをぶちかますまで。
倉桐ぱきぽ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した私は、ざまぁ回避のため、まじめに生きていた。
でも、ヒロイン(転生者)がひどい!
彼女の嘘を信じた推しから嫌われるし。無実の罪を着せられるし。そのうえ「ちゃんと悪役やりなさい」⁉
シナリオ通りに進めたいヒロインからのハラスメントは、もう、うんざり!
私は私の望むままに生きます!!
本編+番外編3作で、40000文字くらいです。
⚠途中、視点が変わります。サブタイトルをご覧下さい。
悪役令嬢に転生したら手遅れだったけど悪くない
おこめ
恋愛
アイリーン・バルケスは断罪の場で記憶を取り戻した。
どうせならもっと早く思い出せたら良かったのに!
あれ、でも意外と悪くないかも!
断罪され婚約破棄された令嬢のその後の日常。
※うりぼう名義の「悪役令嬢婚約破棄諸々」に掲載していたものと同じものです。
【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。
巻き込まれて婚約破棄になった私は静かに舞台を去ったはずが、隣国の王太子に溺愛されてしまった!
ユウ
恋愛
伯爵令嬢ジゼルはある騒動に巻き込まれとばっちりに合いそうな下級生を庇って大怪我を負ってしまう。
学園内での大事件となり、体に傷を負った事で婚約者にも捨てられ、学園にも居場所がなくなった事で悲しみに暮れる…。
「好都合だわ。これでお役御免だわ」
――…はずもなかった。
婚約者は他の女性にお熱で、死にかけた婚約者に一切の関心もなく、学園では派閥争いをしており正直どうでも良かった。
大切なのは兄と伯爵家だった。
何かも失ったジゼルだったが隣国の王太子殿下に何故か好意をもたれてしまい波紋を呼んでしまうのだった。
悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
※他サイト様にも掲載中です
公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。
三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*
公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。
どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。
※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。
※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる