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22.婚約の勧め
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「まず前提としてお尋ねしたいのですが、ウェルド様は今まで婚約者などがいなかったのですか?」
「ええ、そうですね」
「……何か問題でも?」
「問題……まあ、問題といえるのかもしれませんね」
私はとりあえず、ウェルド様の婚約関係について聞いてみることにした。
私のような特殊な侯爵令嬢ならともかく、彼のような王子があの年齢で婚約していないというのは変だ。だから何か事情があるのではないかと思ったのである。
「ウェルド兄上には、かつて婚約者がいたのです。父上が選んだ方だったんですが……まあその方に少々が難があって……」
「難?」
「ええ、端的に言ってしまえば浮気していたんです」
「なるほど……それは大問題ですね」
エクティス様は、苦い顔をしていた。
どうやら、ウェルド様のかつての婚約者には大きな問題があったようだ。
それによって、その婚約は恐らく破談となったのだろう。それは当然だ。浮気なんてした相手を信用できる訳がない。
「王族と婚約したのに浮気するなんて、随分とすごい人ですね……」
「なんでも、愛する人がいたとかで……ウェルド兄上は、その点に関しては同情していたのです。親に勝手に決められるのは酷だと」
「まあ、そうですよね」
この国は比較的自由に恋愛を行える国である。魔法学園で貴族が相手を見つけることも多いので、そういう面を考慮するとその女性に同情できる点がない訳ではない。
しかしそれなら、最初からその旨を伝えれば良かったのではないかとも思ってしまう。それでウェルド様は迷惑をかけられた訳だし、もっとなんとかならなかったのだろうか。
もっとも、私は事情をそれ程知らないし、それは今重要なことではないので考えるのはやめておく。問題はウェルド様の方だ。
「それからウェルド様は?」
「婚約については、無頓着になりましたね……勧めた相手がそんな感じだったもので、父上もそれについては強く言えず、結局今のような状態ということです」
「なるほど……ありがとうございます。事情は大体わかりました」
ウェルド様の事情は、よく理解できた。
しかし、そんな彼の相手として私は適切なのだろうか。それは微妙な所である。
「ただ私は、ウェルリグル侯爵の末端の令嬢……それも結構冷たい女です。そんな私がウェルド様の相手として相応しいのでしょうか?」
「僕はそう思っています。アルメリア、君はどう思う?」
「私も同じ意見です。ラナトゥーリ様は、とても優しい人ですから」
そこでエクティス様は、初めてアルメリアに話を振った。
彼女はいつも通りの笑顔で、私の方を見てくる。その眩しい視線に、思わず目をそらしてしまいそうだ。
ルシウス達もそうだが、私は時々過ぎた評価をされることがある。アルメリアの視線からも、それを感じてしまう。
「ウェルド兄上も、ラナトゥーリ嬢には好感を抱いているようですし、これはお互いにとって悪い話ではないと思うんです」
「……え? ウェルド様は、私について何か言っていたのですか?」
「ああ、いえ、風の噂で聞きましたが、魔術師団にわざわざ挨拶しに行ったり、騎士団を案内していたとか……」
「ああ、いえ、それは単純に仕事だからだと思いますけど……」
「そうなんですか?」
「ええ、多分……」
エクティス様に言われて、私は最近のウェルド様の行動を思い出していた。
確かに最近私は彼に関わっている。ただそれらは仕事のはずだ。別に他意なんてないはずである。
「しかし、この間兄上と話した時にはラナトゥーリ嬢のことを高く評価していたような気がしますが……」
「それは、どのように?」
「優れた魔術師だと」
「ありがたい評価ではありますが……それは、魔術師としての評価ですよね?」
「そうでしょうかね?」
「そうとしか考えられないと思うんですけど……」
なんというか、エクティス様の言葉の端々には他意があるような気がした。
もしかして、彼も兄が身を固めていないという現状をまずいと思っているのだろうか。弟の方が先に結婚するという今の状況は、彼にとっても好ましくないものなのかもしれない。
しかしだからといって、私に色々と言われても正直困ってしまう。これに関してはウェルド様の気持ちなどもある訳だし、私の一存でどうにかできることではない。
「ええ、そうですね」
「……何か問題でも?」
「問題……まあ、問題といえるのかもしれませんね」
私はとりあえず、ウェルド様の婚約関係について聞いてみることにした。
私のような特殊な侯爵令嬢ならともかく、彼のような王子があの年齢で婚約していないというのは変だ。だから何か事情があるのではないかと思ったのである。
「ウェルド兄上には、かつて婚約者がいたのです。父上が選んだ方だったんですが……まあその方に少々が難があって……」
「難?」
「ええ、端的に言ってしまえば浮気していたんです」
「なるほど……それは大問題ですね」
エクティス様は、苦い顔をしていた。
どうやら、ウェルド様のかつての婚約者には大きな問題があったようだ。
それによって、その婚約は恐らく破談となったのだろう。それは当然だ。浮気なんてした相手を信用できる訳がない。
「王族と婚約したのに浮気するなんて、随分とすごい人ですね……」
「なんでも、愛する人がいたとかで……ウェルド兄上は、その点に関しては同情していたのです。親に勝手に決められるのは酷だと」
「まあ、そうですよね」
この国は比較的自由に恋愛を行える国である。魔法学園で貴族が相手を見つけることも多いので、そういう面を考慮するとその女性に同情できる点がない訳ではない。
しかしそれなら、最初からその旨を伝えれば良かったのではないかとも思ってしまう。それでウェルド様は迷惑をかけられた訳だし、もっとなんとかならなかったのだろうか。
もっとも、私は事情をそれ程知らないし、それは今重要なことではないので考えるのはやめておく。問題はウェルド様の方だ。
「それからウェルド様は?」
「婚約については、無頓着になりましたね……勧めた相手がそんな感じだったもので、父上もそれについては強く言えず、結局今のような状態ということです」
「なるほど……ありがとうございます。事情は大体わかりました」
ウェルド様の事情は、よく理解できた。
しかし、そんな彼の相手として私は適切なのだろうか。それは微妙な所である。
「ただ私は、ウェルリグル侯爵の末端の令嬢……それも結構冷たい女です。そんな私がウェルド様の相手として相応しいのでしょうか?」
「僕はそう思っています。アルメリア、君はどう思う?」
「私も同じ意見です。ラナトゥーリ様は、とても優しい人ですから」
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彼女はいつも通りの笑顔で、私の方を見てくる。その眩しい視線に、思わず目をそらしてしまいそうだ。
ルシウス達もそうだが、私は時々過ぎた評価をされることがある。アルメリアの視線からも、それを感じてしまう。
「ウェルド兄上も、ラナトゥーリ嬢には好感を抱いているようですし、これはお互いにとって悪い話ではないと思うんです」
「……え? ウェルド様は、私について何か言っていたのですか?」
「ああ、いえ、風の噂で聞きましたが、魔術師団にわざわざ挨拶しに行ったり、騎士団を案内していたとか……」
「ああ、いえ、それは単純に仕事だからだと思いますけど……」
「そうなんですか?」
「ええ、多分……」
エクティス様に言われて、私は最近のウェルド様の行動を思い出していた。
確かに最近私は彼に関わっている。ただそれらは仕事のはずだ。別に他意なんてないはずである。
「しかし、この間兄上と話した時にはラナトゥーリ嬢のことを高く評価していたような気がしますが……」
「それは、どのように?」
「優れた魔術師だと」
「ありがたい評価ではありますが……それは、魔術師としての評価ですよね?」
「そうでしょうかね?」
「そうとしか考えられないと思うんですけど……」
なんというか、エクティス様の言葉の端々には他意があるような気がした。
もしかして、彼も兄が身を固めていないという現状をまずいと思っているのだろうか。弟の方が先に結婚するという今の状況は、彼にとっても好ましくないものなのかもしれない。
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