身分違いの恋に燃えていると婚約破棄したではありませんか。没落したから助けて欲しいなんて言わないでください。

木山楽斗

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13.動揺の中でも

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 アルガール侯爵の葬儀は、粛々と進んでいった。
 葬儀自体には、問題はなかったように思える。だが、これがいい葬儀といえるかどうかは話が別だ。
 ランドラ様が平民の女性を連れて来たという話は、当然瞬く間に参列者に伝わった。そのせいか、葬儀はどこかおかしな雰囲気で進んでいったのである。

「……まあ、当然といえば当然のことではあるでしょうね」
「……ええ」

 葬儀が終わってから、私はバルギード様とそのような会話を交わした。
 この結果になるのは、目に見えていたことだ。侯爵家の葬儀に、次期当主が謎の平民の女性を連れてくる。多くの参列者が貴族や有力者であることを考えると、それは悪手でしかない。

「どうやら親族の方々とも揉めているようですね」
「それは当然だと思います」
「ふむ……まあ、彼にとっては父親の葬儀に婚約者を参列させたというだけのことなのかもしれませんが」
「確かに、そう考えると別におかしなことではないでしょうか……」

 葬儀に婚約者を連れて来る。バルギード様の言う通り、その一面だけを切り取れば、それは別におかしなことではないのかもしれない。
 問題は、その婚約がランドラ様の独断で決められたものということだろう。親族の方々にとっては、侮辱とさえ取られる可能性がある。葬儀に協力したというのにこの仕打ちは、それなり怒りを覚えてもおかしくはないはずだ。

「しかしながら、今回の葬儀でアルガール侯爵が素晴らしい方だったということが私にも理解できましたよ」
「え?」
「息子の愚行に、空気が少々重くなりましたが、それでも故人を悼む雰囲気の方が大きかったと私は感じました。もしも、侯爵が誰からも尊敬される人物でなかったなら、こうはならなかったでしょう」
「それは……そうかもしれませんね」

 バルギード様は、アルガール侯爵とそこまで深く関わっていなかった。彼の他にも、この葬儀にはそういった人達も参列しているだろう。
 おかしな雰囲気はありつつも、そういう彼のことを知らない人達も悲しみに飲み込まれていた。それ程までに、侯爵は死を嘆かれる人物であったということだ。

「確かに、アルガール侯爵は立派な方だったと思います。そんな彼の背中を見て育ったというのに、ランドラ様がどうしてああなってしまったのか疑問を覚えるくらいに……」
「結局の所、他人と家族は違うということなのかもしれませんね。人付き合いが上手くても、家族とは上手くいかない。距離感の違いで、人の得手不得手というのは変わるものなのではないでしょうか」
「難儀なものですね……」

 私は、ゆっくりと空を見上げた。
 アルガール侯爵は、空の上で今何を思っているのだろうか。
 彼には、何の憂いもなく安心して旅立って欲しかった。こんな結果になってしまったのが、本当に残念である。
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