醜い傷ありと蔑まれてきた私の顔に刻まれていたのは、選ばれし者の証である聖痕でした。今更、態度を改められても許せません。

木山楽斗

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 私は、お兄様とセリーヌ様と一緒に廊下を歩いていた。
 二人のおかげで、なんとかお父様達から逃げられた。まずは、そのことに感謝しなければならないだろう。

「お兄様、セリーヌ様、ありがとうございます、助けていただいて」
「いや、気にしなくていいさ」
「ええ、別にこのくらいのことはどうってことありませんわ」

 私のお礼に対して、二人はそう言ってくれた。
 お兄様もセリーヌ様も、とても優しい。いつも助けてくれるし、その存在は本当にありがたい。

「ただ、あなたももう少し頑張った方がいいと思いますわ」
「え? 頑張る?」
「あのようなことを言われて、何も言わないなんていけませんわ。言い返すくらいの度胸を持つべきですわ」
「あ、えっと……」

 セリーヌ様の言葉に、私は少し怯んでしまった。
 彼女の言っていることは、よくわかる。ああいう時に、強く言い返せる度胸があれば、本当はいいのだろう。
 だが、私にはそんなものはない。罵倒されると、縮こまって何も言えなくなってしまう。
 どうやったら、セリーヌ様のように強くなれるのだろうか。その問題は、何度も考えて、結局自分には無理だと諦めてしまうことだ。

「セリーヌ、エルーナにあまり無理を……」
「あなたが甘いのもいけませんわね。他の家族にもっと強く言えるようにならなければなりませんわよ。妹を守りたいと思っているなら、そうするべきでしょう?」
「それは……耳が痛いな」

 セリーヌ様は、強い人である。私よりも、お兄様よりも、ずっと度胸がある人だ。
 そんな人になりたい。それは、今までも思ってきたことだ。だが、今は今までとは少し違う。ケルド様の言葉を聞いて、私は以前よりも強く思っているのだ。
 今までは、ただ憧れるだけだった。だけど、今は実現させたいと思っている。だから、セリーヌ様に質問してみることにしよう。

「セリーヌ様……どうすれば、セリーヌ様のように強くなれるのでしょうか?」
「私のように? あら? 憧れてくれていますの?」
「はい……」
「嬉しいですわね……おっと、話がそれてしまいましたわね。強くなるためには、ですか? まあ、そこまで難しいことではありませんわ」

 セリーヌ様は、少し嬉しそうにしていた。私が憧れているという事実に、喜んでくれているようだ。
 憧れているだけで、彼女が喜んでくれるなら嬉しい。だが、話の本題はそこではないので、今は私も喜んでいる場合ではないだろう。もっと真剣に話を聞くべきだ。

「こんな奴に負けてたまるかと思えばいいのですわ」
「え? どういうことですか?」
「例えば、自分を罵倒してくる人なんて気に入らないでしょう。そんな人がいい気になっているなんて、耐えられないはずですわ。だから、思うのです。こんな奴のいいようにしたくはないと」
「えっと……そうすれば、言い返せるのでしょうか?」
「ええ、言い返せますわ」

 セリーヌ様の言葉を、私はあまり理解できなかった。
 言っていることが、わからない訳ではない。ただ、それだけで行動をできるとは思えないのだ。
 それは、セリーヌ様だからできること。そう思ってしまう。
 だが、それでは駄目だ。強くなるために、まずは彼女の言葉に従うべきだろう。
 こうして私は、新たに決意を固めるのだった。
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