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私は、ストライム侯爵家の屋敷で過ごしていた。
現在、私は特にやることがない。そのため、ぼんやりとした日々を送っている。
意外なことに、お父様もお姉様もそんな私に特に何も言ってこなかった。恐らく、お兄様やセリーヌ様の言葉が効いているのだろう。
「エルーナ様、失礼します」
「あ、はい。どうかしましたか?」
部屋で休んでいた私の耳に、戸を叩く音と声が聞こえてきた。
メイドさんが、訪ねて来たのだ。当然のことではあるが、何か用事があるということだろう。
「お客様がお見えになっています」
「お客様?」
「はい。第四王子のケルド様が、エルーナ様に会いたいと訪ねて来たのです」
「え? えっと……わかりました。すぐ行きます」
メイドさんの言葉に、私は驚いた。
まさか、ケルド様が訪ねて来るとは思っていなかった。正直、かなり動揺している。
だが、同時に期待もあった。ケルド様が私の元を訪ねてきたということは、彼の決意に対する何らかの成果が得られたということだと思ったからだ。
私は、急いで支度する。こうして、私はケルド様と話し合うことになったのだった。
◇◇◇
私は、第四王子のケルド様と対面していた。
彼の表情を見て、私は少しだけ不安になった。あまり、嬉しそうな顔をしていないのだ。いい知らせがあるという訳ではないのだろうか。
「えっと、何があったんですか?」
「あなたのような人々に対する差別をなくすように、僕は調べものをしていました。その中で、とある事実を知ったので、それをあなたに伝えに来たのです」
「とある事実?」
ケルド様の言葉に、私はさらに不安になった。
まさか、こういう痣がある人達がどのように差別されていたかなどがわかったのだろうか。それが、予想以上に凄惨で、彼はこんな顔をしている。そういうことなのかもしれない。
「かつて、このカルヴィニアス王国ができる前、人々は迫りくる闇と戦っていたそうです」
「え?」
「その迫りくる闇に、唯一対抗できる者がいました。聖なる力を持つ者です。人々は、その人物を聖者、または聖女と呼び、崇め讃えたようです」
「あ、はい……」
ケルド様は、急に昔話を始めた。
どうして急にそんな話をするのだろう。そう思ったが、ケルド様が無駄な話をするとは思えない。よくわからないが、何か今後のことに関連することなのだろう。
「その聖者には、決まってある共通点があったのです」
「共通点?」
「顔に大きな痣があったのです。その痣は、聖痕と呼ばれて、神の使者の証であると考えられたそうです」
「それって……」
ケルド様の言葉に、私は自らの顔に手を当てた。
聖痕と呼ばれる大きな痣。まさか、私の顔にあるこの痣も、その聖痕だとでもいうのだろうか。
現在、私は特にやることがない。そのため、ぼんやりとした日々を送っている。
意外なことに、お父様もお姉様もそんな私に特に何も言ってこなかった。恐らく、お兄様やセリーヌ様の言葉が効いているのだろう。
「エルーナ様、失礼します」
「あ、はい。どうかしましたか?」
部屋で休んでいた私の耳に、戸を叩く音と声が聞こえてきた。
メイドさんが、訪ねて来たのだ。当然のことではあるが、何か用事があるということだろう。
「お客様がお見えになっています」
「お客様?」
「はい。第四王子のケルド様が、エルーナ様に会いたいと訪ねて来たのです」
「え? えっと……わかりました。すぐ行きます」
メイドさんの言葉に、私は驚いた。
まさか、ケルド様が訪ねて来るとは思っていなかった。正直、かなり動揺している。
だが、同時に期待もあった。ケルド様が私の元を訪ねてきたということは、彼の決意に対する何らかの成果が得られたということだと思ったからだ。
私は、急いで支度する。こうして、私はケルド様と話し合うことになったのだった。
◇◇◇
私は、第四王子のケルド様と対面していた。
彼の表情を見て、私は少しだけ不安になった。あまり、嬉しそうな顔をしていないのだ。いい知らせがあるという訳ではないのだろうか。
「えっと、何があったんですか?」
「あなたのような人々に対する差別をなくすように、僕は調べものをしていました。その中で、とある事実を知ったので、それをあなたに伝えに来たのです」
「とある事実?」
ケルド様の言葉に、私はさらに不安になった。
まさか、こういう痣がある人達がどのように差別されていたかなどがわかったのだろうか。それが、予想以上に凄惨で、彼はこんな顔をしている。そういうことなのかもしれない。
「かつて、このカルヴィニアス王国ができる前、人々は迫りくる闇と戦っていたそうです」
「え?」
「その迫りくる闇に、唯一対抗できる者がいました。聖なる力を持つ者です。人々は、その人物を聖者、または聖女と呼び、崇め讃えたようです」
「あ、はい……」
ケルド様は、急に昔話を始めた。
どうして急にそんな話をするのだろう。そう思ったが、ケルド様が無駄な話をするとは思えない。よくわからないが、何か今後のことに関連することなのだろう。
「その聖者には、決まってある共通点があったのです」
「共通点?」
「顔に大きな痣があったのです。その痣は、聖痕と呼ばれて、神の使者の証であると考えられたそうです」
「それって……」
ケルド様の言葉に、私は自らの顔に手を当てた。
聖痕と呼ばれる大きな痣。まさか、私の顔にあるこの痣も、その聖痕だとでもいうのだろうか。
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