醜い傷ありと蔑まれてきた私の顔に刻まれていたのは、選ばれし者の証である聖痕でした。今更、態度を改められても許せません。

木山楽斗

文字の大きさ
11 / 19

11

しおりを挟む
 私は、ウェリリアお姉様と言い争っていた。
 彼女に対して言い返すのは、初めての体験である。思っていたより、気分は晴れやかだ。少なくとも、何も言い返さないよりはすっきりする。

「ウェリリア、もうやめなさい」
「え? お姉様?」
「え?」

 そこで、今まで何も言わなかったイルシャナお姉様が口を開いた。
 その発言が、ウェリリアお姉様と止める発言だったため、私も言われた彼女自身もかなり驚いていた。
 基本的に、イルシャナお姉様はウェリリアお姉様と同じ陣営である。そんな彼女なら、ウェリリアお姉様に話を合わせると思っていた。だから、彼女の言葉が意外だったのである。

「まさか、あなたが聖痕などと呼ばれるものを有する選ばれし者だったなんてね。本当に、あなたは恵まれているわ」
「恵まれている?」
「気づいていないのね……そういう所が、嫌いなのよ」

 イルシャナお姉様は、私に対して冷静にそう言ってきた。
 今までの彼女から考えると、これは珍しいことである。もっと不快な感情を押し出してくるのが、いつもの彼女なのだが、今日は違うらしい。
 しかし、私が恵まれているとはどういうことだろうか。確かに、聖痕が刻まれていることは恵まれているのかもしれないが、それまで私は恵まれてなどいなかったはずである。

「その顔の痣で、あなたは苦労したと思っているのよね? でも、本当にそうなの? あなたはお兄様やお母様に守られていたじゃない」
「それは……」
「お兄様もお母様も、あなたばかり……それなのに、あなたは自分を不幸だと思って、不幸だと思い込んで……そういう態度が、気に入らなかったのよ」

 イルシャナお姉様の言葉は、少しだけ心に響いてきた。
 確かに、私はお兄様やお母様から守られていた。敵が多い私を、二人が特別気遣ってくれていたことは間違いない。
 そのことで、お姉様達は嫉妬していた。その感情が、理解できない訳ではない。

「それでも、例え、そういう理由があっても、私に攻撃していい理由にはならないはずです」
「なっ……」
「勝手に嫉妬して、勝手に憎しんで、それを正当であるかのように言わないでください。あなた達がやったことは、どんな理由があっても最低のことです」

 しかし、私はそれでも言い返した。
 どんな理由があっても、私は自分への行いを許せない。彼女が言っているのは、勝手な理由だ。それで、やったことが正当化される訳ではない。

「……まあ、いいわ。どうせ、あなたには理解できないもの……行くわよ。ウェリリア」
「は、はい……」

 それだけ言って、二人は去っていった。
 結局、彼女達と私達は平行線なのだろう。そう簡単に、分かり合うことはできない。長年の行いが、私達の間に決定的な溝を作っているのだ。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

完結 王族の醜聞がメシウマ過ぎる件

音爽(ネソウ)
恋愛
王太子は言う。 『お前みたいなつまらない女など要らない、だが優秀さはかってやろう。第二妃として存分に働けよ』 『ごめんなさぁい、貴女は私の代わりに公儀をやってねぇ。だってそれしか取り柄がないんだしぃ』 公務のほとんどを丸投げにする宣言をして、正妃になるはずのアンドレイナ・サンドリーニを蹴落とし正妃の座に就いたベネッタ・ルニッチは高笑いした。王太子は彼女を第二妃として迎えると宣言したのである。 もちろん、そんな事は罷りならないと王は反対したのだが、その言葉を退けて彼女は同意をしてしまう。 屈辱的なことを敢えて受け入れたアンドレイナの真意とは…… *表紙絵自作

「お前を愛することはない」と言われたお飾りの妻ですが、何か?

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することはない!」「そんな事を言うために女性の寝室に押し入ったのですか? もう寝るつもりで化粧を落として髪をほどいて寝着に着替えてるのに! 最っ低!」 仕事大好き女が「お飾りの妻最高!」と恋愛感情無しで結婚したらこうなるよね、というお話。

妹に命じられて辺境伯へ嫁いだら王都で魔王が復活しました(完)

みかん畑
恋愛
家族から才能がないと思われ、蔑まれていた姉が辺境で溺愛されたりするお話です。 2/21完結

天使のように愛らしい妹に婚約者を奪われましたが…彼女の悪行を、神様は見ていました。

coco
恋愛
我儘だけど、皆に愛される天使の様に愛らしい妹。 そんな彼女に、ついに婚約者まで奪われてしまった私は、神に祈りを捧げた─。

【完結】「お前に聖女の資格はない!」→じゃあ隣国で王妃になりますね

ぽんぽこ@3/28新作発売!!
恋愛
【全7話完結保証!】 聖王国の誇り高き聖女リリエルは、突如として婚約者であるルヴェール王国のルシアン王子から「偽聖女」の烙印を押され追放されてしまう。傷つきながらも母国へ帰ろうとするが、運命のいたずらで隣国エストレア新王国の策士と名高いエリオット王子と出会う。 「僕が君を守る代わりに、その力で僕を助けてほしい」 甘く微笑む彼に導かれ、戸惑いながらも新しい人生を歩み始めたリリエル。けれど、彼女を追い詰めた隣国の陰謀が再び迫り――!? 追放された聖女と策略家の王子が織りなす、甘く切ない逆転ロマンス・ファンタジー。

妹に婚約者を奪われたので、田舎暮らしを始めます

tartan321
恋愛
最後の結末は?????? 本編は完結いたしました。お読み頂きましてありがとうございます。一度完結といたします。これからは、後日談を書いていきます。

魔の森に捨てられた伯爵令嬢は、幸福になって復讐を果たす

三谷朱花
恋愛
 ルーナ・メソフィスは、あの冷たく悲しい日のことを忘れはしない。  ルーナの信じてきた世界そのものが否定された日。  伯爵令嬢としての身分も、温かい我が家も奪われた。そして信じていた人たちも、それが幻想だったのだと知った。  そして、告げられた両親の死の真相。  家督を継ぐために父の異母弟である叔父が、両親の死に関わっていた。そして、メソフィス家の財産を独占するために、ルーナの存在を不要とした。    絶望しかなかった。  涙すら出なかった。人間は本当の絶望の前では涙がでないのだとルーナは初めて知った。  雪が積もる冷たい森の中で、この命が果ててしまった方がよほど幸福だとすら感じていた。  そもそも魔の森と呼ばれ恐れられている森だ。誰の助けも期待はできないし、ここに放置した人間たちは、見たこともない魔獣にルーナが食い殺されるのを期待していた。  ルーナは死を待つしか他になかった。  途切れそうになる意識の中で、ルーナは温かい温もりに包まれた夢を見ていた。  そして、ルーナがその温もりを感じた日。  ルーナ・メソフィス伯爵令嬢は亡くなったと公式に発表された。

心を病んでいるという嘘をつかれ追放された私、調香の才能で見返したら調香が社交界追放されました

er
恋愛
心を病んだと濡れ衣を着せられ、夫アンドレに離縁されたセリーヌ。愛人と結婚したかった夫の陰謀だったが、誰も信じてくれない。失意の中、亡き母から受け継いだ調香の才能に目覚めた彼女は、東の別邸で香水作りに没頭する。やがて「春風の工房」として王都で評判になり、冷酷な北方公爵マグナスの目に留まる。マグナスの支援で宮廷調香師に推薦された矢先、元夫が妨害工作を仕掛けてきたのだが?

処理中です...