醜い傷ありと蔑まれてきた私の顔に刻まれていたのは、選ばれし者の証である聖痕でした。今更、態度を改められても許せません。

木山楽斗

文字の大きさ
12 / 19

12

しおりを挟む
 私は、イルシャナお姉様とウェリリアお姉様が去った後、その場に立ち尽くしていた。
 二人が去ってから、安心したのか、すごく疲れが出てきた。強気の発言をすると、私は疲れてしまうようだ。

「ふふ、よくやりましたわね」
「え?」

 そんな私の元に、見知った二人が現れた。
 お兄様とセリーヌ様が、曲がり角からやって来たのだ。

「お兄様? セリーヌ様? もしかして……」
「ええ、一部始終見せてもらいましたわ」
「出て行こうかと思ったんだが、セリーヌに止められてね」
「当り前ですわ。あそこで出て行くと彼女の成長に繋がりませんもの」

 どうやら、二人は物陰からずっと成り行きを見ていたらしい。
 出てこなかったのは、セリーヌ様の言う通り、私を成長させるためだったのだろう。一人で立ち向かえるように、願ってくれていたのだ。

「見事でしたわ。あなたも、強くなれたということでしょうね」
「そうなんでしょうか?」
「ええ、間違いありませんわ」
 
 セリーヌ様の言葉に、私は喜んでいた。
 憧れの彼女から褒められるのは、とても嬉しいのだ。

「でも、俺は少し複雑な気持ちだな……二人が、あんなことを思っていたなんて」
「あら? そうですの?」
「なんだか、申し訳ないというか……責任の一端は、俺にもあるんだなって」

 そこで、お兄様が悲しそうな顔で呟いた。
 お姉様達の言葉は、お兄様に突き刺さったようだ。責任感が強い人なので、恐らく責任を感じているのだろう。

「あなたが何かを思う必要はありませんわ。あんなのは、彼女達の問題ですもの」
「え? いや、でも……」
「私はそうは思いませんが、彼女達はこの子のことを悲劇のヒロインぶっているとでも言いたげでしたわ。でも、それは彼女達にもそのまま跳ね返りますわ」

 そんなお兄様に、セリーヌ様が言葉を放った。
 彼女は、お姉様達のことで彼が悩むべきではないと、はっきりと思っているようだ。

「そうなのか?」
「彼女達は、兄や母に愛されなかったと酔っているといえますわ。そうやって、自分のしたことを正当化している。そうとも考えられるでしょう?」
「それは……そうかもしれないが」
「要するに、彼女達の精神は元々腐っていましたのよ。もっと、色々とやり方はあったはずですもの。この子に当たるという手段を取った時点で、彼女達は駄目ですのよ。それに対して、あなたに責任があるなど考える必要はありませんわ」

 セリーヌ様は、お姉様達に問題があったと思っているようだ。
 基本的に、彼女は強い。だからこそ、個々に責任を求めるのだろう。
 私は、お姉様達に対して、少し同情できる部分はあると思っている。それは、私が特別に守られていたという自覚があるからかもしれない。
 もちろん、許せないとは思っている。しかし、同情できない訳でもないというのが私の考えだ。

「それでも、俺は彼女達に対して責任を感じるよ」
「そうですか。あなたは、なんでも背負いたがりますわね?」
「性分なんでね」

 お兄様も、私と同じような考えであるようだ。いや、彼は私よりもずっと彼女達に同情しているかもしれない。
 結局、お姉様達に対する感情は、個々によって違うのだろう。これに関しては、ここで結論を出すしかないのかもしれない。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

殿下をくださいな、お姉さま~欲しがり過ぎた妹に、姉が最後に贈ったのは死の呪いだった~

和泉鷹央
恋愛
 忌み子と呼ばれ、幼い頃から実家のなかに閉じ込められたいた少女――コンラッド伯爵の長女オリビア。  彼女は生まれながらにして、ある呪いを受け継いだ魔女だった。  本当ならば死ぬまで屋敷から出ることを許されないオリビアだったが、欲深い国王はその呪いを利用して更に国を豊かにしようと考え、第四王子との婚約を命じる。    この頃からだ。  姉のオリビアに婚約者が出来た頃から、妹のサンドラの様子がおかしくなった。  あれが欲しい、これが欲しいとわがままを言い出したのだ。  それまではとても物わかりのよい子だったのに。  半年後――。  オリビアと婚約者、王太子ジョシュアの結婚式が間近に迫ったある日。  サンドラは呆れたことに、王太子が欲しいと言い出した。  オリビアの我慢はとうとう限界に達してしまい……  最後はハッピーエンドです。  別の投稿サイトでも掲載しています。

お母様が国王陛下に見染められて再婚することになったら、美麗だけど残念な義兄の王太子殿下に婚姻を迫られました!

奏音 美都
恋愛
 まだ夜の冷気が残る早朝、焼かれたパンを店に並べていると、いつもは慌ただしく動き回っている母さんが、私の後ろに立っていた。 「エリー、実は……国王陛下に見染められて、婚姻を交わすことになったんだけど、貴女も王宮に入ってくれるかしら?」  国王陛下に見染められて……って。国王陛下が母さんを好きになって、求婚したってこと!? え、で……私も王宮にって、王室の一員になれってこと!?  国王陛下に挨拶に伺うと、そこには美しい顔立ちの王太子殿下がいた。 「エリー、どうか僕と結婚してくれ! 君こそ、僕の妻に相応しい!」  え……私、貴方の妹になるんですけど?  どこから突っ込んでいいのか分かんない。

婚約破棄の夜の余韻~婚約者を奪った妹の高笑いを聞いて姉は旅に出る~

岡暁舟
恋愛
第一王子アンカロンは婚約者である公爵令嬢アンナの妹アリシアを陰で溺愛していた。そして、そのことに気が付いたアンナは二人の関係を糾弾した。 「ばれてしまっては仕方がないですわね?????」 開き直るアリシアの姿を見て、アンナはこれ以上、自分には何もできないことを悟った。そして……何か目的を見つけたアンナはそのまま旅に出るのだった……。

「華がない」と婚約破棄された私が、王家主催の舞踏会で人気です。

百谷シカ
恋愛
「君には『華』というものがない。そんな妻は必要ない」 いるんだかいないんだかわからない、存在感のない私。 ニネヴィー伯爵令嬢ローズマリー・ボイスは婚約を破棄された。 「無難な妻を選んだつもりが、こうも無能な娘を生むとは」 父も私を見放し、母は意気消沈。 唯一の望みは、年末に控えた王家主催の舞踏会。 第1王子フランシス殿下と第2王子ピーター殿下の花嫁選びが行われる。 高望みはしない。 でも多くの貴族が集う舞踏会にはチャンスがある……はず。 「これで結果を出せなければお前を修道院に入れて離婚する」 父は無慈悲で母は絶望。 そんな私の推薦人となったのは、ゼント伯爵ジョシュア・ロス卿だった。 「ローズマリー、君は可愛い。君は君であれば完璧なんだ」 メルー侯爵令息でもありピーター殿下の親友でもあるゼント伯爵。 彼は私に勇気をくれた。希望をくれた。 初めて私自身を見て、褒めてくれる人だった。 3ヶ月の準備期間を経て迎える王家主催の舞踏会。 華がないという理由で婚約破棄された私は、私のままだった。 でも最有力候補と噂されたレーテルカルノ伯爵令嬢と共に注目の的。 そして親友が推薦した花嫁候補にピーター殿下はとても好意的だった。 でも、私の心は…… =================== (他「エブリスタ」様に投稿)

目の前で始まった断罪イベントが理不尽すぎたので口出ししたら巻き込まれた結果、何故か王子から求婚されました

歌龍吟伶
恋愛
私、ティーリャ。王都学校の二年生。 卒業生を送る会が終わった瞬間に先輩が婚約破棄の断罪イベントを始めた。 理不尽すぎてイライラしたから口を挟んだら、お前も同罪だ!って謎のトバッチリ…マジないわー。 …と思ったら何故か王子様に気に入られちゃってプロポーズされたお話。 全二話で完結します、予約投稿済み

虐げられていた姉はひと月後には幸せになります~全てを奪ってきた妹やそんな妹を溺愛する両親や元婚約者には負けませんが何か?~

***あかしえ
恋愛
「どうしてお姉様はそんなひどいことを仰るの?!」 妹ベディは今日も、大きなまるい瞳に涙をためて私に喧嘩を売ってきます。 「そうだぞ、リュドミラ!君は、なぜそんな冷たいことをこんなかわいいベディに言えるんだ!」 元婚約者や家族がそうやって妹を甘やかしてきたからです。 両親は反省してくれたようですが、妹の更生には至っていません! あとひと月でこの地をはなれ結婚する私には時間がありません。 他人に迷惑をかける前に、この妹をなんとかしなくては! 「結婚!?どういうことだ!」って・・・元婚約者がうるさいのですがなにが「どういうこと」なのですか? あなたにはもう関係のない話ですが? 妹は公爵令嬢の婚約者にまで手を出している様子!ああもうっ本当に面倒ばかり!! ですが公爵令嬢様、あなたの所業もちょぉっと問題ありそうですね? 私、いろいろ調べさせていただいたんですよ? あと、人の婚約者に色目を使うのやめてもらっていいですか? ・・・××しますよ?

妹に幼馴染の彼をとられて父に家を追放された「この家の真の当主は私です!」

佐藤 美奈
恋愛
母の温もりを失った冬の日、アリシア・フォン・ルクセンブルクは、まだ幼い心に深い悲しみを刻み付けていた。公爵家の嫡女として何不自由なく育ってきた彼女の日常は、母の死を境に音を立てて崩れ始めた。 父は、まるで悲しみを振り払うかのように、すぐに新しい妻を迎え入れた。その女性とその娘ローラが、ルクセンブルク公爵邸に足を踏み入れた日から、アリシアの運命は暗転する。 再婚相手とその娘ローラが公爵邸に住むようになり、父は実の娘であるアリシアに対して冷淡になった。継母とその娘ローラは、アリシアに対して日常的にそっけない態度をとっていた。さらに、ローラの策略によって、アリシアは婚約者である幼馴染のオリバーに婚約破棄されてしまう。 そして最終的に、父からも怒られ家を追い出されてしまうという非常に辛い状況に置かれてしまった。

前妻の子であった私は義母義妹に虐げられていましたが、ある日城へ行ったことをきっかけに人生が変わりました。

四季
恋愛
前妻の子であった私は義母義妹に虐げられていましたが、ある日城へ行ったことをきっかけに人生が変わりました。

処理中です...