醜い傷ありと蔑まれてきた私の顔に刻まれていたのは、選ばれし者の証である聖痕でした。今更、態度を改められても許せません。

木山楽斗

文字の大きさ
15 / 19

15

しおりを挟む
 私は、セリーヌ様の言葉で目を覚ました。
 今まで、私は聖なる力が証明できなくてもいいと思っていた。だが、今は違う。私は、その力を証明して、地位を得る必要があるのだ。

「セリーヌ様、申し訳ありませんでした。私、何という考え方を……」
「わかればいいのですわ。あなたは、前に進みなさい。その力を証明して、この国を変えるのですわ」
「はい……」

 セリーヌ様の言葉に、私はゆっくりと頷いた。
 本当に、彼女はどこまでも私の憧れだ。彼女のような貴族になりたいと、何度思ったことだろうか。

「あなたに必要だったのは、絶対に成功させるという覚悟ですわ。でも、まだ足りませんわね。大義を抱いているあなたでも、治すのがその木の傷というのでは、完全に真剣にはなれないはずですわ」
「え?」

 そこで、セリーヌ様は木の傍に置いていたナイフを手に取った。
 その言葉から、彼女がどのような行動をとるかは予測できる。予測できたが、まさかそんなことはしないだろうという思考が、声を出すことを躊躇わせた。その一瞬の考えが、いけなかったのだ。

「ふっ!」
「なっ!」
「セリーヌ様!」

 セリーヌ様は、自らの肩にナイフを突き刺した。
 その服が、その肌が、その肉が貫かれて、彼女の肩から嫌なものが見えてくる。

「セリーヌ! 何をっ!」
「今から、このナイフを引き抜きますわ。当然、大量の血が流れてくるでしょう。最悪の場合、私は死にますわ」
「誰か! 医者を呼んでくれ! 誰か!」
「死ななくても、傷は残りますわね。もしかしたら、後遺症もあるかもしれません。でも、あなたが治してくれたら、話は別ですわ」
「私が……」

 セリーヌ様は、少し苦しそうにしながら、私に話しかけてきた。
 私に聖なる力が宿っているのかどうか、それは定かではないことだ。
 それなのに、彼女は私を信じている。しかも、それはその力があることだけではない。私がその力を使えるということも信じてくれているのだ。

「行きますわよ? 三……」

 そんな彼女に、私は報いなければならない。
 そう思った瞬間、体が自然と構えを取った。知識ではない。これは、本能だ。この力の使い方を、私の体は知っているのだ。

「二……」

 両手を前に出して、その手の平を傷口に向ける。
 私の心に、最早迷いはない。絶対に治す。その考えしか、今の私の中にはないのだ。

「一……!」

 セリーヌ様は、ゆっくりとそのナイフを引き抜いた。
 当然のことながら、その体から血が流れていく。だが、私はそれを許さない。その血は流させない。私の力で、その傷口は封じ込めるのだ。

「はああああああああっ!」
「これは……」

 叫びをあげながら、私はその力を行使した。
 セリーヌ様の傷口が塞がっていくのがわかる。これが、聖なる力であるということも同時に理解した。
 私は、掴んだのだ。私の体に宿っていた聖なる力を。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

完結 王族の醜聞がメシウマ過ぎる件

音爽(ネソウ)
恋愛
王太子は言う。 『お前みたいなつまらない女など要らない、だが優秀さはかってやろう。第二妃として存分に働けよ』 『ごめんなさぁい、貴女は私の代わりに公儀をやってねぇ。だってそれしか取り柄がないんだしぃ』 公務のほとんどを丸投げにする宣言をして、正妃になるはずのアンドレイナ・サンドリーニを蹴落とし正妃の座に就いたベネッタ・ルニッチは高笑いした。王太子は彼女を第二妃として迎えると宣言したのである。 もちろん、そんな事は罷りならないと王は反対したのだが、その言葉を退けて彼女は同意をしてしまう。 屈辱的なことを敢えて受け入れたアンドレイナの真意とは…… *表紙絵自作

「お前を愛することはない」と言われたお飾りの妻ですが、何か?

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することはない!」「そんな事を言うために女性の寝室に押し入ったのですか? もう寝るつもりで化粧を落として髪をほどいて寝着に着替えてるのに! 最っ低!」 仕事大好き女が「お飾りの妻最高!」と恋愛感情無しで結婚したらこうなるよね、というお話。

妹に命じられて辺境伯へ嫁いだら王都で魔王が復活しました(完)

みかん畑
恋愛
家族から才能がないと思われ、蔑まれていた姉が辺境で溺愛されたりするお話です。 2/21完結

天使のように愛らしい妹に婚約者を奪われましたが…彼女の悪行を、神様は見ていました。

coco
恋愛
我儘だけど、皆に愛される天使の様に愛らしい妹。 そんな彼女に、ついに婚約者まで奪われてしまった私は、神に祈りを捧げた─。

【完結】「お前に聖女の資格はない!」→じゃあ隣国で王妃になりますね

ぽんぽこ@3/28新作発売!!
恋愛
【全7話完結保証!】 聖王国の誇り高き聖女リリエルは、突如として婚約者であるルヴェール王国のルシアン王子から「偽聖女」の烙印を押され追放されてしまう。傷つきながらも母国へ帰ろうとするが、運命のいたずらで隣国エストレア新王国の策士と名高いエリオット王子と出会う。 「僕が君を守る代わりに、その力で僕を助けてほしい」 甘く微笑む彼に導かれ、戸惑いながらも新しい人生を歩み始めたリリエル。けれど、彼女を追い詰めた隣国の陰謀が再び迫り――!? 追放された聖女と策略家の王子が織りなす、甘く切ない逆転ロマンス・ファンタジー。

妹に婚約者を奪われたので、田舎暮らしを始めます

tartan321
恋愛
最後の結末は?????? 本編は完結いたしました。お読み頂きましてありがとうございます。一度完結といたします。これからは、後日談を書いていきます。

魔の森に捨てられた伯爵令嬢は、幸福になって復讐を果たす

三谷朱花
恋愛
 ルーナ・メソフィスは、あの冷たく悲しい日のことを忘れはしない。  ルーナの信じてきた世界そのものが否定された日。  伯爵令嬢としての身分も、温かい我が家も奪われた。そして信じていた人たちも、それが幻想だったのだと知った。  そして、告げられた両親の死の真相。  家督を継ぐために父の異母弟である叔父が、両親の死に関わっていた。そして、メソフィス家の財産を独占するために、ルーナの存在を不要とした。    絶望しかなかった。  涙すら出なかった。人間は本当の絶望の前では涙がでないのだとルーナは初めて知った。  雪が積もる冷たい森の中で、この命が果ててしまった方がよほど幸福だとすら感じていた。  そもそも魔の森と呼ばれ恐れられている森だ。誰の助けも期待はできないし、ここに放置した人間たちは、見たこともない魔獣にルーナが食い殺されるのを期待していた。  ルーナは死を待つしか他になかった。  途切れそうになる意識の中で、ルーナは温かい温もりに包まれた夢を見ていた。  そして、ルーナがその温もりを感じた日。  ルーナ・メソフィス伯爵令嬢は亡くなったと公式に発表された。

心を病んでいるという嘘をつかれ追放された私、調香の才能で見返したら調香が社交界追放されました

er
恋愛
心を病んだと濡れ衣を着せられ、夫アンドレに離縁されたセリーヌ。愛人と結婚したかった夫の陰謀だったが、誰も信じてくれない。失意の中、亡き母から受け継いだ調香の才能に目覚めた彼女は、東の別邸で香水作りに没頭する。やがて「春風の工房」として王都で評判になり、冷酷な北方公爵マグナスの目に留まる。マグナスの支援で宮廷調香師に推薦された矢先、元夫が妨害工作を仕掛けてきたのだが?

処理中です...