そんなに聖女になりたいなら、譲ってあげますよ。私は疲れたので、やめさせてもらいます。

木山楽斗

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 私は、お姉様とともに、お兄様の元に来ています。
 私の婚約に対する抗議をするためです。まずは、お姉様から伝えてもらって、次に私が解説する。この流れで、お兄様を説得するのです。

「という訳で、私は婚約に向いていないと思うんです」
「ふん……」

 私の説得に、お兄様は目を瞑りました。
 恐らく、私の理論に対する反論を考えているのでしょう。
 お兄様のことですから、私の言うことを素直に受け入れるはずはありません。色々と御託を並べて、反論してくるはずです。

「なるほど……お前の理論はとても納得ができるものだ。反論の余地がないな……」
「はい……え?」

 私の思いとは裏腹に、お兄様は納得してしまいました。
 反論の余地がない。そう言われると、逆に不安になってしまいます。
 何か、裏があるのではないか。長年の経験から、私は警戒することにしました。

「お兄様、反論の余地がないなんて、お兄様らしくありませんよ」
「いや、お前の理論は完璧だ。お前のようなどうしようもない奴は、他家との結束のために使うことはできない。このラーファン家の評価を下げるだけだ」
「なっ……!」

 お兄様の言葉に、私は怒り心頭です。
 いくらなんでも、こんな言葉はひどすぎるでしょう。

「お兄様、それは言い過ぎじゃありませんかね? 私、そんなどうしようもない人間ではありませんよ?」
「……先程、自分で言っていただろう」
「私が言うのはいいんです。でも、人に言われるとむかつきます」
「……お前は、変わらないな」

 私が自分で言うのは、別に問題ありません。
 でも、人に言われるととてもむかつきます。私のことを、あまり侮らないでもらいたいです。

「だが、実際問題、お前を婚約させることで利益が得られるとは思えない。余計なことにしかならない気がするのだ」
「え? お兄様、結構真剣に言っているんですか?」
「ああ、本気で言っている」
「ひ、ひどい……」

 お兄様は、真剣な顔をしていました。
 冗談ではなく、心からそう思っているようです。
 冷静に考えて、結婚して利益にならないと思われているのはまずい気がします。でも、婚約はしたくありませんから、この認識のままの方が都合はいいんですかね?

「とにかく、お前の婚約については、もう何も言うつもりはない。自由に生きてもらって構わないぞ」
「え? マジですか? これから、万年引きこもり生活でもいいんですか?」
「引きこもり生活を許すつもりはない。そんなことをしたら、このラーファン家から追い出してやる。何か、やることは見つけろ」
「ええ……面倒くさいですね」

 とりあえず、私は自由になることができました。
 でも、何かやることは見つけなければならないようです。
 それは、とても面倒くさいですね。できれば、万年引きこもっていたいです。
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