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10.安全のために
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「……なるほど、それが商人としての始まりだった訳ですね?」
「ええ、そうなんです」
オルマナの言葉に、私はゆっくりと頷いた。
私が商人になるまでのことを語ったのだが、少し疲れた。思えば、そこに至るまでは本当に色々とあったものである。
「いや、もうこの時点ですごい人生ではありませんか。激動の人生と言っても過言ではない」
「確かに、少々特殊であるということは自覚しています。そもそも、貴族崩れの商人なんてそう多くないでしょうからね」
「それはそうですね。しかし、話に聞いただけだとエルシエット伯爵家はかなり悪辣であるようですが……」
赤裸々に話してしまったため、オルマナは随分とエルシエット伯爵家に悪い感情を持ってしまったようだ。
それ自体は別に構わないのだが、記事になる場合全て素直に書かれるとまずい。それは注意しておいた方がいいだろう。
「まあその辺りは私怨もありますから、オブラートに包んで記事にしてもらえると助かります。というか、そちらの安全のためにもあまりひどいことは書かない方がいいと思いますよ。別に私が悪いことをしたとかにしてもらっても構いません」
「え? いえ、それは悪いですよ。アルシエラさんのことを悪く書くなんて……」
「上手くやればいいじゃありませんか? ほら、不良が更生してみたいな筋書きは作りやすそうでしょう?」
「そ、そうでしょうか……?」
少々怪しい会社ではあるようだが、それでもそこに所属する記者たちを路頭に迷わせたくはない。エルシエット伯爵家のことを悪く書かなければ、流石のお父様も何もしないだろう。
そう思った私は、自分が悪者になることによって最悪の事態を回避することにした。私に対して悪い噂が立つかもしれないが、それは気にしない。今までだって色々と言われてきたし、それが一つ二つ増えた所でどうということはないだろう。
「それで、どこまで話しましたかね? ああ、私がラナキンスさんに拾われた所だったでしょうか?」
「あ、ええ、その通りです。アルシエラさんが、これから商人としての大きな一歩を踏み出すって所まで話していただきました」
「そんなに大袈裟な話ではないのですけれどね」
「いえ、そんなことはありませんよ。アルシエラさんは、現に成功していらっしゃる訳ですし……」
「……残念ながら、私はそんなに偉大な商人という訳ではありませんよ。私は単に、人に恵まれたというだけですから」
オルマナの言葉に、私は思わず苦笑いを浮かべてしまった。
彼女は、恐らく勘違いをしているのだ。私がこの腕一本で、商人として成り上ってきたと。
だが実際の所、そういう訳ではない。はっきりと言って、私には商才なんてなかったのである。
「ええ、そうなんです」
オルマナの言葉に、私はゆっくりと頷いた。
私が商人になるまでのことを語ったのだが、少し疲れた。思えば、そこに至るまでは本当に色々とあったものである。
「いや、もうこの時点ですごい人生ではありませんか。激動の人生と言っても過言ではない」
「確かに、少々特殊であるということは自覚しています。そもそも、貴族崩れの商人なんてそう多くないでしょうからね」
「それはそうですね。しかし、話に聞いただけだとエルシエット伯爵家はかなり悪辣であるようですが……」
赤裸々に話してしまったため、オルマナは随分とエルシエット伯爵家に悪い感情を持ってしまったようだ。
それ自体は別に構わないのだが、記事になる場合全て素直に書かれるとまずい。それは注意しておいた方がいいだろう。
「まあその辺りは私怨もありますから、オブラートに包んで記事にしてもらえると助かります。というか、そちらの安全のためにもあまりひどいことは書かない方がいいと思いますよ。別に私が悪いことをしたとかにしてもらっても構いません」
「え? いえ、それは悪いですよ。アルシエラさんのことを悪く書くなんて……」
「上手くやればいいじゃありませんか? ほら、不良が更生してみたいな筋書きは作りやすそうでしょう?」
「そ、そうでしょうか……?」
少々怪しい会社ではあるようだが、それでもそこに所属する記者たちを路頭に迷わせたくはない。エルシエット伯爵家のことを悪く書かなければ、流石のお父様も何もしないだろう。
そう思った私は、自分が悪者になることによって最悪の事態を回避することにした。私に対して悪い噂が立つかもしれないが、それは気にしない。今までだって色々と言われてきたし、それが一つ二つ増えた所でどうということはないだろう。
「それで、どこまで話しましたかね? ああ、私がラナキンスさんに拾われた所だったでしょうか?」
「あ、ええ、その通りです。アルシエラさんが、これから商人としての大きな一歩を踏み出すって所まで話していただきました」
「そんなに大袈裟な話ではないのですけれどね」
「いえ、そんなことはありませんよ。アルシエラさんは、現に成功していらっしゃる訳ですし……」
「……残念ながら、私はそんなに偉大な商人という訳ではありませんよ。私は単に、人に恵まれたというだけですから」
オルマナの言葉に、私は思わず苦笑いを浮かべてしまった。
彼女は、恐らく勘違いをしているのだ。私がこの腕一本で、商人として成り上ってきたと。
だが実際の所、そういう訳ではない。はっきりと言って、私には商才なんてなかったのである。
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