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26.奇妙なすれ違い
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「ランバット伯爵夫人、私の説明に何かご不満な所でもありましたか?」
「……ええ、どうやらあなたはアルシャナから何も聞かされていないようですね?」
私の質問に、夫人はゆっくりと頷いた。
その反応に、私は首を傾げることになる。夫人が言っていることが、よくわからなかったからだ。
「私は、アルシャナに連絡を入れています。手紙も出しましたし、彼女と和解するつもりもありました。しかし返信は来ませんでした。アルシャナは私の手紙を無視したのです」
「……なんですって?」
伯爵夫人は、少し怒った様子だった。
だがその話の内容は、信じがたいものである。母が手紙を無視したなんて、そんなはずはない。
「私とアルシャナは、仲が良い姉妹という訳ではありませんでした。お互いにいがみ合っていたということは自覚しています。それは自体は、どちらが悪いという訳でもないでしょう。しかしながら、私は大人になって矛を収めようとしました。それを蹴ったのは、アルシャナの方です」
「……いいえ、そのような訳はありません。母は、あなたからの和解を蹴るような人ではありません。あり得ないのです」
「しかし、実際に私の手紙に返信はありませんでした。言っておきますが、一通や二通という訳ではありませんよ。私は何度も手紙を出したのです」
ランバット伯爵夫人は、少し声を荒げていた。
それは、母に裏切られたことに怒っているといった様子だ。
だが、私は知っていた。もしも夫人からそういう手紙が届いていたとしたら、母は和解に応じたはずなのだ。なぜなら、彼女も心のどこかではそれを望んでいたはずだから。
「……母は以前私に話してくれました。エルシエット伯爵家に来てすぐの頃、何度かあなたに手紙を出したと」
「……なんですって?」
「しかし、その手紙に返信はなかったのだと言っていました。その時点で和解はないものなのだと母は理解したのでしょう。しかし、夫人の証言も合わせるとそれはおかしな話です」
「そ、それは……」
私の説明で、夫人の怒りは一気に冷めていた。
母も夫人もお互いを望んでいたというのに、それが果たされていない。なんというか、変な状況である。
そこで私は、一つの仮説を立てることになった。それは非常に残虐ではあるが、しかしながらあり得ると思えてしまうことだ。
私の体は、ゆっくりと冷えていく。そして思い出す。あの悪魔ともいえる男の顔を。
あの人は、母のことを忌み嫌っていた。そんな彼ならきっと、どんな所業だって躊躇わないだろう。母を苦しめられるならと、嬉々として実行したはずだ。
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