そちらから縁を切ったのですから、今更頼らないでください。

木山楽斗

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25.知られていない事情

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 ランバット伯爵夫人は、私達を喫茶店に連れて来ていた。
 話をする場所としては、確かにここはいい場所かもしれない。周りに人はおらず、いるのは店長らしき初老の男性だけだ。
 しかし、店の状況としてはあまり良くない気もする。こんなにお客さんがいなくて、ここは本当に大丈夫なのだろうか。
 ともあれ、これで話をする状況は整ったといえる。故に早速、話を始めるとしよう。

「……そちらは確か、ラナキンス商会のギルバートさんでしたか? どうして彼がここに? あなたの知り合いということなのでしょうけれど、一体どういう繋がりで?」
「その辺りの事情は少々複雑なものになりますね。まず前提としてお伝えしておきますが、私はエルシエット伯爵家を追放されました」
「……なんですって?」

 私の説明に、ランバット伯爵夫人はひどく驚いたような顔をしていた。
 もしかしたら、既に知られているかもしれないと思っていたが、私の追放という情報は案外伝わっていないらしい。
 その辺りは、お父様が体裁を気にして明かしていないのだろうか。何れはばれることであるはずだが。それでも隠せるだけは隠し通しておくつもりなのかもしれない。

「縁あって今は、ラナキンス商会にお世話になっています。その繋がりで、こうしてギルバートさんに付き添ってもらっているのです」
「……それは驚くべき事実ですね。まさか、そのようなことになっているとは思ってもいませんでした」
「母が亡くなってから、エルシエット伯爵家に私の居場所はありませんでしたからね。まあ、色々とあってそうなってしまったのです」
「……」

 ランバット伯爵夫人は、そこで少しだけ眉をひそめた。
 よく考えてみれば、彼女は私や母があの家でどのように扱われていたかを知らないのかもしれない。まずは、その辺りのことを聞いてみた方がいいだろうか。

「私も母も、父……つまり現在のエルシエット伯爵からは冷遇されていました。ランバット伯爵夫人は、そのことはご存知でしたか?」
「……いいえ、まったく知りませんでした。エルシエット伯爵家のことは、何も伝わってきませんでしたから」
「そうでしたか……まあ、そうですよね。お互いに連絡を取っていなかった訳ですからね?」
「……?」

 ランバット伯爵夫人は、怪訝そうな顔をしていた。
 その表情に、私は違和感を覚える。私は今事実を述べただけであるはずなのだが、彼女の反応は少し変だ。
 なんというか、私達の間には何か認識の齟齬があるのかもしれない。夫人の反応に、私はそんなことを思った。
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