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28.家族の温もり
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「……アルシエラさん」
「……はい、なんですか?」
しばらく黙っていたランバット伯爵夫人は、私に呼びかけてきた。
彼女の目には、先程までのような悲しみは宿っていない。真剣な目で、私のことを見つめてきている。
「あなたに謝罪をします。無礼な態度を取ってしまい、申し訳ありませんでした」
「いえ、気にしないでください」
「……同時に、あなたと出会えたことに感謝します。私の元に来てくれて、ありがとうございました。おかげで、長年の憂いが一つ解消されました」
ランバット伯爵夫人は、私に向かってそっと頭を下げた。
それに私は少し、困惑してしまう。お礼も謝罪も、私が受け取るべきものであるとは思えなかったからだ。
「私はただ、母のことが知りたいと思っただけです。私は母のことを、それ程よく知っている訳ではありませんでしたから」
「……あなたがここに来てくれなければ、私はアルシャナのことを勘違いしたままだったと思います。それがわかったということは、私にとって何よりも嬉しいことなのです」
夫人はそこで、ゆっくりと頭を上げて私の目を見てきた。
その視線に、私は固まる。何故かわからないが、そこから目が離せない。
「アルシエラさんは、本当にアルシャナに似ていますね?」
「そ、そうですか?」
「ええ、あなたを見ていると昔のあの子を思い出します。そんなあなたに、不躾ながら一つお願いしてもいいでしょうか?」
「……なんですか?」
夫人を見ていると、なんだか母のことを思い出した。その顔には、母と似た部分があるのだ。
それは彼女の方も、同じだったようである。そういえば、最初に私を見た時に夫人は固まっていた。あれもきっと、私の中に母を感じ取ったからだったのだろう。
「私はあなたの伯母になりたいとそう思っています。あなたは私に、それを許してくれますか? あなたの母に手を差し伸べなかった私を……」
「……断る理由はありません。過去には色々とあったのかもしれませんが、結局の所私達は皆エルシエット伯爵に踊らされた被害者ですから」
私はゆっくりと席から立ち上がり、夫人の元に近寄った。
すると彼女も立ち上がり、私の方を向く。そんな彼女に、私はゆっくりと身を預けた。
「伯母様……」
「アルシエラ……今まで、よく頑張ってきましたね。本当に、本当に……あなたは、なんと強い子なのでしょうか」
「ありがとうございます。ありがとう、ございます……」
私は、伯母様の胸の中で涙を流していた。
その温もりを感じた瞬間、私の中でこれまでの日々が溢れ出してきた。
そんな私を、伯母様はゆっくりと受け止めてくれる。なんというか、随分と久し振りに家族の温もりを感じられたような気がした。
「……はい、なんですか?」
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「いえ、気にしないでください」
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それに私は少し、困惑してしまう。お礼も謝罪も、私が受け取るべきものであるとは思えなかったからだ。
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