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16.恵まれし婚約
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「ラナート様、一体どういうことですか? 婚約なんて……」
「僕はあなたを妻に迎えたいと思っているということです。次期リヴェリオ公爵夫人、それはあなたにとっても悪い話ではないのではありませんか?」
「それは、そうですけれど……」
ラナート様の表情は、真剣であった。別に疑っていた訳ではないが、婚約の申し出は冗談などではないらしい。
しかし、子爵家の令嬢である私に公爵家の彼が婚約を申し込むなんて、なんともおかしな話だ。同じ貴族とはいえ、地位には大きな差があるというのに。
「フィリア嬢、僕はあなたにずっと憧れを抱いていました。既に何度かお伝えしたとは思いますが、あなたは尊敬できる人です。だから僕は、あなたを妻に迎え入れたい」
「……ラナート様の気持ちは、嬉しく思います。ですが私は、どれだけ評価していただけていても、子爵家の令嬢に過ぎません。公爵令息のラナート様とは、釣り合っていないのではありませんか?」
ラナート様の気持ちは、素直に嬉しいものだった。
個人的にはもちろん、バレイユ子爵家としても彼との婚約は望ましいものである。ただそれを成立させるには、色々と障害が多いような気がした。
「ああ、言っておきますが、リヴェリオ公爵家及び王家からの許可は既に得ています」
「え?」
「伯父上への謁見やムートン伯爵家に関する騒動に協力も、ここへの布石のようなものでした」
「そ、そうだったんですか……」
婚約の申し出は、別に突然のものではなかったらしい。前々から計画されていたこと、それに私はまた驚くことになった。
ただ別に、納得できないことという訳でもない。私が社交界で評判だからといって、国王様の謁見なんて、いくらなんでも仰々し過ぎるとも思ったものだし。
「リヴェリオ公爵家として、僕の提案は問題ありません。どうか僕の手を取っていただけませんか?」
「……私は」
ラナート様は私の前で跪き、手を差し出してきた。
私はその手に、ゆっくりと手を伸ばす。お父様などに相談する必要はあるが、それでも今は自分の気持ちに従うことにした。その答えは明白である。
「ラナート様……どうかよろしくお願いします」
「フィリア嬢、ありがとうございます」
私はラナート様の手を取った。
リヴェリオ公爵家との婚約は、バレイユ子爵家にとって大きな利益となる。それは私にとって非常に魅力的なことだった。
それにラナート様は、好感が持てる人だ。紳士的であり、私のことを評価してくれている。そんな彼となら良い関係が築いていけると、そう思ったのだ。
マルギス様によって振り回された私だったが、結果的には良き縁に恵まれたといえる。そんなことを思いながら、私は笑顔を浮かべるのだった。
END
「僕はあなたを妻に迎えたいと思っているということです。次期リヴェリオ公爵夫人、それはあなたにとっても悪い話ではないのではありませんか?」
「それは、そうですけれど……」
ラナート様の表情は、真剣であった。別に疑っていた訳ではないが、婚約の申し出は冗談などではないらしい。
しかし、子爵家の令嬢である私に公爵家の彼が婚約を申し込むなんて、なんともおかしな話だ。同じ貴族とはいえ、地位には大きな差があるというのに。
「フィリア嬢、僕はあなたにずっと憧れを抱いていました。既に何度かお伝えしたとは思いますが、あなたは尊敬できる人です。だから僕は、あなたを妻に迎え入れたい」
「……ラナート様の気持ちは、嬉しく思います。ですが私は、どれだけ評価していただけていても、子爵家の令嬢に過ぎません。公爵令息のラナート様とは、釣り合っていないのではありませんか?」
ラナート様の気持ちは、素直に嬉しいものだった。
個人的にはもちろん、バレイユ子爵家としても彼との婚約は望ましいものである。ただそれを成立させるには、色々と障害が多いような気がした。
「ああ、言っておきますが、リヴェリオ公爵家及び王家からの許可は既に得ています」
「え?」
「伯父上への謁見やムートン伯爵家に関する騒動に協力も、ここへの布石のようなものでした」
「そ、そうだったんですか……」
婚約の申し出は、別に突然のものではなかったらしい。前々から計画されていたこと、それに私はまた驚くことになった。
ただ別に、納得できないことという訳でもない。私が社交界で評判だからといって、国王様の謁見なんて、いくらなんでも仰々し過ぎるとも思ったものだし。
「リヴェリオ公爵家として、僕の提案は問題ありません。どうか僕の手を取っていただけませんか?」
「……私は」
ラナート様は私の前で跪き、手を差し出してきた。
私はその手に、ゆっくりと手を伸ばす。お父様などに相談する必要はあるが、それでも今は自分の気持ちに従うことにした。その答えは明白である。
「ラナート様……どうかよろしくお願いします」
「フィリア嬢、ありがとうございます」
私はラナート様の手を取った。
リヴェリオ公爵家との婚約は、バレイユ子爵家にとって大きな利益となる。それは私にとって非常に魅力的なことだった。
それにラナート様は、好感が持てる人だ。紳士的であり、私のことを評価してくれている。そんな彼となら良い関係が築いていけると、そう思ったのだ。
マルギス様によって振り回された私だったが、結果的には良き縁に恵まれたといえる。そんなことを思いながら、私は笑顔を浮かべるのだった。
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