寵愛していた侍女と駆け落ちした王太子殿下が今更戻ってきた所で、受け入れられるとお思いですか?

木山楽斗

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3.第二王子との対面

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 ラウヴァン殿下との対話を終えた私は、王城の廊下を歩いていた。
 そういった時に気になるのは、周囲からの視線である。ヤウダン公爵家の令嬢である私を見る目は、良いものであるとは言い難い。露骨に侮蔑の目を向けるような者はいないものの、やはり当家はラスタード王国に未だ馴染めていないようだ。

「ユーリア嬢」
「あなたは……リオレス殿下」

 そんな王城の廊下で、私は第二王子であるリオレス殿下と出会った。
 当然のことながら、彼とも顔見知りではある。ただラウヴァン殿下以上に交流がない人だ。
 とはいえ、廊下で顔を合わせればもちろん挨拶をしなければならない。お互いにそういう立場なのである。

「お久し振りですね。遠路遥々、王城にようこそおいでくださいました」
「お久し振りです」
「時間的に、もう兄上とは話を終えた頃でしょうか? 挨拶が遅れてしまって、申し訳ありませんね。少々、王城を離れていたもので……」
「いえ、お気になさらないでください」

 リオレス殿下は、王家の中では活動的に動き回っている方だ。
 第一王子であるラウヴァン殿下が王城に鎮座して、第二王子である彼が王国を見回る。それは王家としての役割分担といった所だろうか。

「リオレス殿下は、いつも精力的に活動されていますね。国を回り市井の生活を知る。統治者としての役目をしっかりと果たすリオレス殿下のことを、私は尊敬しています」
「そう言っていただけるのはありがたい限りです。しかし、僕が活動できているのは父上や兄上といった信頼できる人達が王城で構えてくれているからこそ……僕は自身の役割を果たしているというだけに過ぎません」

 とりあえず私は、ほぼ本心ではあるものの、お世辞のようなことを言ってみた。
 それに対してラウヴァン殿下は、謙虚な回答を返してくる。それが本心なのかはわからない。だが、どちらにせよ自身の役目をきっちりと果たしている彼は尊敬に値する人だと思う。

「……そちらの方は見かけない方ですね?」
「え? ああ、彼女はソネリアです。前任の侍女シェリリアは家に戻って婿を迎えますから、妹である彼女が役目を引き継いだのです。彼女達セルダン子爵家は代々当家に仕える風習があるのですけれど……」
「なるほど、そうでしたか……」

 リオレス殿下も、ラウヴァン殿下のようにソネリアについて質問してきた。
 彼も彼で、何やら妙な反応をしている。ソネリアに対して、王子達は何か思う所でもあるのだろうか。
 ただリオレス殿下は、それからソネリアに話しかけることもなかった。結局私は、二人の反応の意味もよくわからずヤウダン公爵家の屋敷に戻るのだった。
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