寵愛していた侍女と駆け落ちした王太子殿下が今更戻ってきた所で、受け入れられるとお思いですか?

木山楽斗

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4.決意に満ちた表情

 ラウヴァン殿下との対話を終えて帰ってから一週間後、私は父に呼び出されていた。
 その場にはお母様とお兄様もいる。皆の顔は、明るいものではない。何か問題が発生したということは、すぐにわかった。

「お父様、何かあったのですか?」
「悪い知らせだ。シェリリアの婚約は破談となった」
「破談……?」
「……相手はラスタード王国の貴族の子息だった。国王と相談した上で決まった婚約であったが、上手くいかなかったようだ」

 お父様の言葉に、私は固まっていた。
 そこに関しても、過去の因果によって破談になるなんて、納得できるものではない。トップ同士は手を結ぼうと努力しているというのに、どうしてそうなるのだろうか。

「セルダン子爵家は、ヤウダン公爵家に近い立ち位置にある家だ。そちらにラスタード王国側から婿を迎え入れることには重要な意味があったが、残念でならない」
「そうですね……シェリリアは、大丈夫なのでしょうか?」
「それについては問題ないだろう。彼女は強い女性だ」

 私の心配に、お父様は首を横に振った。
 シェリリアのことは、私もよく知っている。確かに彼女は、このくらいでへこたれはしないはずだ。精神面に関しては、心配はいらないのかもしれない。

 ただ侍女に関しては、どうなるのだろうか。それは気になる所だ。
 私は隣に仕えているソネリアの方を見る。普通に考えれば、このまま彼女に続けてもらうことになると思うのだが、セルダン子爵家の側の判断によってはそれも変わるかもしれない。

「セルダン子爵家側は、婿を迎える立場をソネリアに変えるつもりでしょうか? 一度婚約が破談になったシェリリアでは印象が悪いと、そう判断する可能性はあると思いますが……」
「その点に関しては、少し事情がある。それはこの件には関係なく出ていた話だが、ラウヴァン殿下がソネリアを王城に招きたいそうだ」
「ソネリアを?」

 お父様の言葉に、私はかなり驚くことになった。
 ラウヴァン殿下の意図が、よくわからない。ソネリアを王城に招くとは、どういうことだろうか。

「ヤウダン公爵家側の誰かを王城に招くことによって、こちらに対する風潮を和らげたいようだ」
「それは……あまりにもソネリアの負担が大きいのではありませんか? その身一つで、味方もほとんどいない王城に行くなんて」

 お父様からラウヴァン殿下の意図を説明されて、ある程度理解することはできた。
 しかしそれはなんとも、無理がある話のような気がした。ソネリアへの負担が大きいし、上手くいくとは思えない。シェリリアの件からもわかるように、そう簡単に王国側の貴族達の心を変えられるわけではないはずだ。

「……行きます」
「……え?」
「私は行きます、ユーリア様。ヤウダン公爵家のために、私に務めさせてください」

 心配する私をよそに、ソネリアはそのように決意表明してきた。
 私がお父様の方を見ると、首を横に振ってくる。どうやら彼女は事前に話を聞かされており、既に意思を固めているようだ。お父様もあまり乗り気という訳ではないが、王太子立っての提案で本人も乗り気であることから、無下にはできないということなのだろう。
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