悪役令嬢として断罪され追放された私、辺境で拾ってくれた騎士団長に才能を見出され溺愛と寵愛の中で幸せに暮らしています―今さら戻ってこいもう遅い

悪役令嬢として断罪され、婚約破棄とともに王都を追放された私――レティシア。
かつては誰もが恐れる高慢な令嬢と呼ばれた私だけれど、本当はただ不器用で、少し強がっていただけだった。
家も地位も失い、雪の降る夜にひとり倒れた私を拾ってくれたのは、辺境を守る騎士団長・ギルバート。
無骨で寡黙な彼は、何も問わず、私に手を差し伸べてくれた。

冷たい雪の中で見つけた、その手のぬくもり。
それが、私の第二の人生の始まりだった。

辺境の小さな村で、子どもたちのために針を動かし、畑を耕し、時には笑いながら失敗する日々。
もう貴族ではなく、ただの一人の女として過ごす時間の中で――私は初めて“生きる”ということを知った。

やがて、村を守る彼と共に歩むうちに、心はゆっくりとほどけていく。
不器用で、言葉よりも行動で人を想う騎士団長。
そのまなざしに宿る静かな優しさに、いつしか惹かれている自分に気づいた。

しかし、そんな穏やかな日々の中、王都からの使者が現れる。
「レティシア・ヴァレンタイン、王命により帰還せよ」
――今さら何を。もう私は、あの世界には戻れない。

断罪された“悪役令嬢”としてではなく、
この村で誰かを想い、誰かに想われながら生きる“ひとりの人間”としての幸福を選びたい。

氷のような人生の果てで出会ったのは、炎のようにあたたかい愛。
彼の隣で、花咲く春を迎えながら、私は静かに微笑む――。

「もう遅いわ。私の帰る場所は、あなたのいるこの村だから」