僕が死んだあと、あなたは悲しんでくれる?

いちみやりょう

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僕は悩んだ。
人に愛されて、みんなに惜しまれて死ぬなんて、そう簡単には行かない。
僕の命は残り1年だけれど、その1年をきっかり外で過ごせるはずはないだろう。
きっと、いずれベットから動けなくなる。
だから僕は急がなければいけなかった。
そうは言っても人に好かれるってどうすればいいんだろう。
僕は今まで、人から嫌われないように努力して、結果的にうまくいかなかったことを思い出していた。僕は人として出来損ないなので、今までどれだけ頑張ったって人とうまく話せなかったし、人を不快にして生きてきた。

それはきっと全部間違っていたんだ。
行動すること、話す内容、全部間違っていたから嫌われていたんだ。
ならば、僕がするべきことは決まっている。
今までの逆を選択すれば良いんだ。

「ただいま」

今までは存在をバレないように静かに部屋まで帰ってた。
いつ母親が癇癪を起こすか分からないから。
でも、今日はいつもと逆で、僕は存在をアピールした。
居間では母親が神経質そうな顔で編み物をしていた。

「ただいま」

もう一度声をかけると、キッとこちらを睨んでくる。

「静かにしなさい」
「ただいまって言っただけだよ」
「うるさいって言ってんのっ!!」
「あっはは」

母が叫んだとき、何故だか無性に面白くなって笑った。

いつもなら、母に叫ばれればビクビクとして謝って、逃げるように自室に籠もっていたはずだ。
母は、気味の悪いものを見る目で僕を見てきた。

「母さん。ただいま」

もう一度言ってみれば、母は、絶句していた。

「あははっ。夜ご飯何? 母さん」
「……ご飯なんて、あるわけないでしょう。あなたの分をいつ私が作ったって言うの?」
「まぁ、作ってもらったことはないよね。じゃあさ、せめてお金頂戴」

母に手を差し出して、要求すると母はまるで化け物でも見るような顔で僕を見て、万札を投げつけるように渡してきた。

「ありがとう。助かるよ」
「気持ちが悪い。早くどこか行きなさい」

好かれてるとは言えないだろうけど、なんだかとても清々しい気持ちだ。

それから家を出て街に行ってラーメンを食べた。
今更体に気を使う必要なんて全くない。
なんだか気分が高揚して仕方なかった。

夜遅くに家に帰ると父は怒っていた。
怒った父の後ろで母がこちらを勝ち誇った目で見ているのが、やけに不快に感じた。

「お前、母さんに金をせびったようだな」
「せびった? まぁそうだね。あなた方に言わせればそうとも言うのかもね」
「なんだその口の聞き方は!!」
「別に普通だけど」
「だいたい、誰が養っていると思っている! お前の学費も、お前がひ弱なせいで馬鹿高い病院代も! 一体誰が払ってると思ってるんだ!!」

父が唾を飛ばしながら叫ぶのが不快だ。

「僕だけど」

今まで、嫌われるかもしれないと思って言っていなかった事実を告げた。

「はぁ!?」
「もしかして、俺が払ってやってると思っていたの? 僕は自分で払ってる。あなた方は僕に一銭も払ってなんかない。さっき、母さんに金を要求したのは、僕の部屋のものを母さんが勝手に売ったからだよ。僕が稼いで、僕が買った僕のものを」
「な、何言ってんだ! お前がそんなに稼げるわけないだろ!?」
「そう思うなら、そう思っててもいいけど、口座でも確認したほうがいいんじゃない? 父さんが払っていたつもりなら、母さんが何かに使っているんだろうから」

父はバッと後ろの母を振り向いた。
母は、顔面蒼白で、僕を信じられないものでも見るように見ていた。
先ほどの表情とは大違いだった。
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