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僕が部屋に戻っても起きている間はずっと父と母の口論の声が聞こえていた。

これが好かれる行動なのかは分からなけれど、間違いなく今までの自分とは違う行動であることは確かだった。
サイレンの音で目が覚めて、1階に降りると部屋の中はめちゃくちゃだった。
警察や救急隊員が入り込んできて怪我だらけの父と母を連れて行った。

僕は警察から事情を聞かれたけど、寝ていたから分からないと正直に話した。

翌朝学校に行くと、近所に住んでいる生徒が噂を流したのか、すでに僕の家で事件があったことは周知されていた。

「いじめなんかするからバチが当たったんじゃないのか?」

昨日僕に暴力を振るったうちの一人がそう声をかけてきた。

「僕は虐めなんてしていないけど」
「ああ。俺がその虐めの現場をカメラで押さえておけばよかったな~」

まるで現場を見たことがあるように言った目の前の男は、和樹とグルなのだろうと今になって気がついた。

「ああ。君は、隠し撮りが得意だもんね」
「なに……?」
「いくら隠し撮りが得意だからって、トイレに仕掛けるのはどうかと思うよ?」
「っ、そんなことっ、するわけねぇだろ!?」
「僕の勘違いかな。じゃあスマホ見せてよ」
「なっ、お前なんかに見せねぇよ!」
「そう」

こいつが大声で話すおかげで、話の内容は周りに筒抜けだ。
昨日と同じ状況で、「最低」、「キモすぎ」と周りからの援護が入った。
昨日と違うのはその援護が僕側だと言うことだ。
やっぱり今までと逆の行動をとるのは正解だったんだ。

「お、お前! 名誉毀損で訴えるぞ!!」
「いいよ。じゃあ、僕は盗撮行為で訴えるよ」
「俺はやってねぇ!!」
「じゃあ、スマホを今すぐ見せてよ」

周りからは「見せろ!」「この状況で見せられないとかガチじゃん」とか色々叫ばれて、しまいには昨日の僕のようにリンチに合っていた。

僕はリンチされている彼の横で、チキン南蛮定食を食べた。
昨日からやけに清々しい気分が続いている。
昨日の夜、母と話した時から、僕はスムーズに話ができるようになっていた。
僕の中で何かが崩れ去って、新しい何かが立ち上がったみたいな気分だった。

大衆とは単純なものだったらしい。
あれほど僕が欲していたものは、簡単に手に入った。
僕に話しかけてくる人が数人現れ始めた。

今まで青砥だけだった世界は広がった。
昼間は学校で楽しく過ごし放課後は病院に通う日々が半年は過ぎた。
青砥と和樹は相変わらず仲睦まじく生活している様子を見せつけてきた。
特に和樹は、僕が青砥の元彼だと言うことが相当気になるらしく、僕を貶めようと躍起になっているようだった。
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