僕が死んだあと、あなたは悲しんでくれる?

いちみやりょう

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体が火照る。
僕の体には、両親の居ない1人きりの家の中で、今までにない程のヒートが訪れていた。
抑制剤は常に飲んでいて、来るとしても軽いものしかこない体質の僕が、今は尋常じゃないほどの体の火照りを感じていた。

暑い。
ただただ暑い。
服を脱ぎ、自分の意思とは関係なく潤っていくそこを慰めようと手を伸ばす。
死にかけのくせに、ヒートはまだくると言うのか。
もう、子供を作る必要のない体なのに、作ったところで産むことなどできない体なのに、僕の体はアルファを受け入れようと勝手に準備をしてしまっている。

「ふ、んぁ……ぁ」

オスを、アルファを、自身の後孔に誘い込みたい。
アルファの熱で、埋めてもらいたい。

体は火照っていくのに、心はやけに冷静で、そして冷静であるがゆえにオメガのヒートに酔えず、狂えず、体との熱の差が開くだけで、精神が狂いそうだった。

自身を慰める手は止まらない。
気持ちいい。気持ちいいけれど、足りない。全然足りない。熱が足りない。


……いっそ、死んだほうがましかもしれない。

そう考えてから、自分が今何を考えたのかに気がつきゾッとした。

「ぁ、青砥っ……あおとぉ」

縋る先は、もう僕の近くには居ない青砥しかいなかった。
縋ったところで助けてはくれないけれど、僕は、目尻に涙を滲ませて、愛しい人の……愛しかった人の名を呼ぶしかなかった。

「ぅぅ……青砥……あぁ、と」
「愛しい子」

低く甘い、声が聞こえた。

「っ!!?」

びくりと体が跳ねた。
ここは僕しかいないはずだった。
両親は未だに病院のはずだ。
僕はその時、部屋の中に充満する匂いに気がついた。
頭がクラクラとするほどの、強いアルファの香り。
森の中にいるかのような、深い深い森林の匂い。

「だれ!?」
「私は、フェルレント・トート。死神だ」
「死神……?」

自分の頭が回っていないのだろうか。それとも僕はすでに気絶していて、ここは夢の中なのだろうか。

「死神……だったら、僕を……迎えに来てくれたの?」
「そうだ……と言いたいが、君の寿命はまだもう少しありそうだ。けれど君は確実に、こちらの世界に近づいている。故にやっと、君と会話ができた」
「んぁっ……ぁ」

フェルレントと名乗った者の手だろうか、目の前には何も見えないのに、僕の体を誰かが触ったのが分かり、快感が走った。

「愛おしい子。辛いのかい?」
「ぅぁっ」

見えない何かは、僕の頭を撫で、その手は頬を触り、また頭に戻って撫でくりまわされた。それは決して性的な触り方ではないのに、今の僕の体は貪欲に快感を拾ってしまう。

「んんっ、ぁはぁ」


「私はずっと君を見ていたよ」
「ずっと……?」
「ああ。君が生まれた時からずっと」
「はぁ…ん、ぁ」
「ずっと、ずっと私は君が好きなんだよ」
「な、に? ぁっ、んん、ひっ」
「私が君のヒートの相手を務めたい」
「えっ、ぁ」
「いいかい?」

その声は初めて聞いたはずなのに、どこか懐かしい気持ちになった。
優しくて暖かくて、僕を愛おしいと本気で思っているのが、その声と匂いで伝わってくる。

「う、んぁ」
「嬉しい。ありがとう千景」

体の熱に耐えきれず承諾のような音を発してしまうと、フェルレントの心底嬉しそうな柔らかい声がした。
それから頭を触っていた手は徐々に胸の方に降りていき、サワサワと僕の全身を隅々まで調べるように、堪能するように触られた。

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