僕が死んだあと、あなたは悲しんでくれる?

いちみやりょう

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俺は、弱いものを助けるヒーローに憧れていた。
千景のそばにいることは、俺のそんな自尊心を満たしてくれていたのかもしれないと、今はそう思う。

学校で千景に、“別れた相手は友人よりも遠い存在”だから話しかけないでほしいと頼まれてからも、俺は千景に話しかけようとしていた。

けれど、ある時クラスメイトや他学年、それに教師までもが同じ本を読んでいるのに気がついた。
聞けばそれは千景が書いている小説らしいことが分かった。
千景が小説を書いていたなんて、俺は全く知らなかった。
ずっと顔出ししていなかったが、最近サイン会を開いたことでメディアが取り上げているようで、学校全体の人が本を読んでいるらしい。
作者名で調べて見てみると、それらは、俺と付き合う以前から出版されていて、それなりに名も売れているようだった。

俺は千景が書いたものを、最初に出版されたものから読んでみることにした。
それは意外にも明るい話が多かった。
主人公は活発で愛されていて、キラキラ光る宝石のような人物で描かれていたり、熱い熱血漢で描かれていたり、友人に囲まれて幸せそうな主人公だったり、それなのにどの話もどこか寂しい。どのキャラクターも胸の中のどこかのピースが足りないみたいなもどかしさを抱えている。それが人々の共感を呼ぶのだろう。そして千景の書く小説は、どこか哀愁が漂っていた。
俺は千景の小説を読むうちに、憑物が落ちたように千景から手を引いた。
千景のことは変わらず好きだ。
むしろ好きは増して行く一方だ。
俺は心の中で、千景は自分より弱く、守らなければならない相手だと、どこか見下した気持ちで見ていた。
けれど、千景は1人で力強く生きていた。
俺なんて必要なかった。
千景を必要としていたのは俺だった。

千景の瞳はもう俺を映すことはないだろう。
自分に自信がないように見えて、あいつは1人、がむしゃらに前を向いて生きてきたんだろう。

千景が倒れたと聞いたのはそれから半年過ぎた頃だった。
俺は必死で千景の無事を祈りながら病院まで向かった。

けれど、集中治療室から出てきた千景はすでに息を引き取っていた。

「満足そうな顔だな……。お前、まだ18歳だろ。これから先、楽しいことたくさんあったろ」

千景の顔は死ぬことが嬉しいというかのように、笑っていた。穏やかな顔で笑っていた。

千景の両親は来ていなかった。
千景の言っていた、恋人のアルファもいなかった。

千景は本当に最後まで1人で逝ってしまった。

そうさせたのは、間違いなく俺だった。

それから俺は知った。
1年前のあの日、俺が千景に別れを告げたあの日に、千景は余命宣告を受けていた。

いつか千景が言っていたことを思い出した。

『僕にとってはその1年は大事な大事な1年だったんだ。本当なら終わって欲しくない1年になるはずだったんだ』

自分の中にふつふつと絶望が湧き上がった。
ああ。その1年が早く終わって欲しいと思わせたのは、俺なのか。
千景を絶望の淵に追いやって、千景が辛い思いをしてる間、俺はのうのうと和樹と一緒に楽しんでた。そればかりか、千景より和樹の方がかわいそうだから我慢しろとまで思っていた。

「千景……ごめん、ごめん……ぅ…ぅ」

泣いたってどうしようもない。
けれど、後から後から涙が溢れ出た。
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