僕が死んだあと、あなたは悲しんでくれる?

いちみやりょう

文字の大きさ
19 / 43

17

しおりを挟む
僕は残りの時間で最後の1冊を書くことにした。
なんだかどうしても最後にもう1冊書きたかった。

フェルレントに会えない半年は、長くて長くて、寂しくて辛かったけど、そういう時間は全て小説に費やした。

そうしている間は、不思議と青砥に絡まれることもなかった。
もしかしたらもう僕に対する興味を無くしたのかもしれないけど、静かに時は過ぎていった。

日を追うごとに元気になっているかのような僕の体だったけれど、それに反比例するように僕の近くにいつもあるフェルレントの森林の匂いが分かるようになっていった。

あれから半年、僕は病院の集中治療室にいた。
助からないのは1年前から分かっている。
目の前には、手術を受けている僕。
幽体になった僕の目の前には、美しい人が立っていた。
綺麗な銀色の髪を後ろでゆるく、ひとまとめにして、真っ赤に燃える夕日のような赤い目を僕に向かって優しげに細めている。その人の全部が全部、この世のものとは思えないほど美しかった。

「おまたせ、フェルレント」
「千景、ああ、私はこの時をどれほど待ちわびたことか」

フェルレントは安心したように笑い僕を抱き寄せた。
いつもよりずっと濃いフェルレントの深い森林の匂いを吸い込む。

「フェルレント、僕が病気で辛くないようにしてくれてたでしょう」
「ダメだったかい?」
「ううん、とっても助かった。ありがとう」

お礼を言うと、フェルレントは低く優しく笑った。
僕も久々に心から笑った。

フェルレントは優しく僕に口付けた。

「ふふ……死の口づけ?」
「なんだい? それは」
「何かで読んだことがあるんだ。死神は人が死ぬ時に口づけするんだって。それで魂を連れて行くって」
「それは面白いね。人はそんなことを考えているのか」
「違うんだ?」
「死神の仕事は道案内だ。このキスはただしたかっただけ」
「これからはいつだって出来るね」

嬉しくて仕方がない。
僕は死んだって言うのに、これからが楽しみで仕方ない。
こんな気持ちは初めてだ。何もかもフェルレントのおかげだ。

「フェルレントがどこにいるか分かって、自由に触れて、僕今本当に幸せ」

幸せすぎて涙が出た。
フェルレントの顔が僕に近づき、気がついた時にはその涙はペロリと舐めとられていた。

「フェ、フェルレント!」
「千景は、涙まで甘い。千景……私も、ずっと千景の近くにいたけれど、千景が足りなくて足りなくて狂うかと思ったよ。私も今幸せだ」

フェルレントの優しい声が心地いい。

ピー

僕の死を告げる音がなって手術をしてくれていた先生たちの手が止まった。
時計を確認して、僕の死を記録している。

僕の傍に、フェルレントがまるで王子様のように跪いて僕の手を取った。
「千景、これから先ずっと私と共にいてくれるかい?」

フェルレントは、許しを請うみたいに僕に真剣な目を向けた。
1年前から僕の答えなんて決まってる。

「もちろん!」
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

届かない「ただいま」

AzureHaru
BL
いつも通りの変わらない日常のはずだった。 「行ってきます。」と言って出て行った貴方。1日が終わる頃に「ただいま。」と「おかえり。」を笑顔で交わすはずだった。でも、その言葉はもう貴方には届かない。 これは「優しさが奪った日常」の物語。

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 【エールいただきました。ありがとうございます】 【たくさんの“いいね”ありがとうございます】 【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。

【bl】砕かれた誇り

perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。 「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」 「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」 「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」 彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。 「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」 「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」 --- いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。 私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、 一部に翻訳ソフトを使用しています。 もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、 本当にありがたく思います。

もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか

まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。 そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。 テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。 そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。 大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。 テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。

運命じゃない人

万里
BL
旭は、7年間連れ添った相手から突然別れを告げられる。「運命の番に出会ったんだ」と語る彼の言葉は、旭の心を深く傷つけた。積み重ねた日々も未来の約束も、その一言で崩れ去り、番を解消される。残された部屋には彼の痕跡はなく、孤独と喪失感だけが残った。 理解しようと努めるも、涙は止まらず、食事も眠りもままならない。やがて「番に捨てられたΩは死ぬ」という言葉が頭を支配し、旭は絶望の中で自らの手首を切る。意識が遠のき、次に目覚めたのは病院のベッドの上だった。

当たり前の幸せ

ヒイロ
BL
結婚4年目で別れを決意する。長い間愛があると思っていた結婚だったが嫌われてるとは気付かずいたから。すれ違いからのハッピーエンド。オメガバース。よくある話。 初投稿なので色々矛盾などご容赦を。 ゆっくり更新します。 すみません名前変えました。

婚約破棄?しませんよ、そんなもの

おしゃべりマドレーヌ
BL
王太子の卒業パーティーで、王太子・フェリクスと婚約をしていた、侯爵家のアンリは突然「婚約を破棄する」と言い渡される。どうやら真実の愛を見つけたらしいが、それにアンリは「しませんよ、そんなもの」と返す。 アンリと婚約破棄をしないほうが良い理由は山ほどある。 けれどアンリは段々と、そんなメリット・デメリットを考えるよりも、フェリクスが幸せになるほうが良いと考えるようになり…… 「………………それなら、こうしましょう。私が、第一王妃になって仕事をこなします。彼女には、第二王妃になって頂いて、貴方は彼女と暮らすのです」 それでフェリクスが幸せになるなら、それが良い。 <嚙み痕で愛を語るシリーズというシリーズで書いていきます/これはスピンオフのような話です>

処理中です...