僕が死んだあと、あなたは悲しんでくれる?

いちみやりょう

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「千景!! おはよう」

学校へ行くと、青砥がまるでここ最近の出来事が何もなかったかのように、付き合ってた頃のような顔で寄ってきた。

「……おはよう」
「声、枯れてるけど、どうした? またリンチでもされたの? 相手は誰?」

心配そうに眉を寄せる青砥が恐ろしく感じた。
だって、僕たちはもうこんな会話をする仲じゃないのに。
そもそも声が枯れているのは、昨日生きている間では最後かもしれないフェルレントとの逢瀬で、しつこいくらいに愛されたが故なので、リンチされたのではないけれど、そんなことを馬鹿正直に言いたくもない。

「別に、青砥には関係ない」
「関係なくないだろ!? 俺は心配してんのに」
「心配しなくていいよ。リンチされたわけじゃないから」
「じゃあ、なんでそんな声カスカスなんだよ」
「だから、青砥には関係ないだろ。というかもう話しかけてこないでくれないかな。もう僕たちは恋人じゃないんだよ。元恋人って、僕からしたら友人よりも遠い存在だよ」

そう言うと、青砥は絶句してその場に立ち止まった。青砥が俺に伸ばそうとした手も、途中で戸惑うように止まった。その隙に僕は急いで教室に向かって歩き出した。

「なぁ、教えてよ。教えてくれたらしつこくしないから」

後ろから追いかけるようにしてきた青砥は、尚もしつこく食い下がった。
僕はもううんざりで青砥を半目で見やる。

「プライベートなことだよ……昨夜はヒートだったから、恋人と盛り上がった。それだけ」

青砥は信じられないと言うように目を見開いた。

「な……。ヒート……だって、俺と付き合ってる時はまだ軽いのしか来ないって」
「うん。別れた後すぐきたよ。軽いのしかこない体質だと思ってたけど、そんなことなかった。18歳になったんだ。遅いくらいだと思うけど、そう思えば青砥とは別れた後だったし、僕たちはとことん相性が良くなかったのかもね」
「千景」

青砥が傷ついた顔をした。
青砥にはひどいことを言われたし、振られた時も落ち込んだけど、フェルレントに出会えた今は青砥のことを良い意味でどうでもいいと思えるようになった。

「僕、青砥にはいろいろ助けられて、あの頃のことは本当に感謝してるんだ。青砥と僕は運命じゃなかったけど、青砥がいい人を見つけられることを祈ってるよ。じゃあね」

今度こそ青砥に別れを告げて教室に向かった。

僕の体はもう半年も持たないというのに、日を追うごとにむしろ元気に健康になっていっているような気がしている。十中八九フェルレントが何かしてくれているのは確かだけど自分が本当に死ぬのか、フェルレントに出会ってしまった今はむしろ不安だ。

そして和樹といえば自ら青砥から離れた後は教室で孤立していて、けれどそれに気がつかずに学校内の数少ないアルファに愛想を振りまいていた。
僕もそうだけどあと半年の余命を宣告されているにしては、和樹もすこぶる元気そうに見えたので、もしかしたら和樹も死神に愛されているのかもしれないなと思った。
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