平民を好きになった婚約者は、私を捨てて破滅するようです

天宮有

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第2話

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 婚約破棄を言い渡され、私は屋敷に戻っていた。
 部屋で両親と話をして、ラドアお兄様がお父様に謝罪する。

「父上、セリスを守ることができませんでした……申し訳ありません」

「謝らなくてよい。あんな奴の婚約者にならなくて済んだと考えよう」

 お父様は相手が公爵家だとしても、私の方が大事だと言ってくれる。
 私の扱いが酷いと抗議していたけど、ジェイクやヴィーオ公爵家は聞く耳を持たなかった。

 お父様の発言を聞き、お母様も頷く。

「そうですね……聖女となる平民ローナの魔法が秀でているという話は聞いたことがありません。魔力はセリスより下に決まっています」

 お母様は魔法に詳しいからか、ローナが私より優れているわけがないと確信している。

「当然だろう。ヴィーオ公爵家はセリスの魔法の凄さを知り、強引に婚約してきたが……婚約破棄したとなれば、それを理由に関わらなくて済む!」

 お父様はジェイクと私が婚約破棄できたことを、むしろ喜んでいる様子だった。

 その発言を聞いて安堵するけど、私は不安なことがある。

「明日からの学園が不安です……聖女を虐げたと、事実でなくとも噂になりそうです」

 あの場は貴族達が多かったから、婚約破棄の話は学園に広まりそうだ。
 理由が聖女になるローナを平民だから虐げたと言われれば、私は避けられるに違いない。

 私がそんなことをしないと考える人も、相手が公爵家だから何も言えないはず。
 明日以降が不安になってしまうと、お父様とお母様が話す。

「セリスが誰かを虐げるなどありえんことだが、ヴィーオ公爵家を敵に回したくない者は多いだろう」

「学園を休んでもよさそうだけど……そうすると、噂通りだと思われてしまうかもしれません」

 お母様の話を聞いて、ラドアお兄様が私に話す。

「セリスの為に動くつもりだが、学年が違うからな」

 お兄様は1つ上の学年だから、守り切ることができないと不安になっていた。
 
 家族を不安にさせたくないから、私は戸惑わないと決意して話す。

「ただの噂ですし、私が気にしなければ大丈夫のはずです」

 聖女の力を継承する式典は来週行われるようで、ジェイクはそこで聖女ローナを婚約者にしたと公表したいに違いない。

 私の方がローラより魔法も魔力も秀でていたけど、平民の方が扱いやすいと考えたのだろうか。
 問題が起こるとすればローラが聖女になってからで、彼女が聖女の力を使いこなせるとは思えない。

 そうなるとジェイクは後悔しそうだけど……私はジェイクがどうなっても、助ける気はなかった。
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