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第3話

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 翌日の学園――昼休みになると、私に対する反応がいつもと全然違った。

 明らかに私を避けている様子で、昨日の出来事がもう知られているようだ。

 食堂でお兄様と会う約束をしていたけど、食堂にお兄様の姿はなかった。
 もしかしたら昨日の出来事を聞かれて、私が関係ないと話しているのかもしれない。

 先に昼食をとろうとした時――私の目の前に、1人の女生徒が現れる。

「魔法の成績は優秀ですけど、悪しき心を持つセリス様は聖女になれなかったようですね」

 彼女は同学年の女生徒で、明らかに私を見下している様子だ。
 相手が伯爵家の令嬢だから無視することはできず、私は尋ねる。
 
「それは、どういう意味ですか?」

「ローナ様を虐げていたと聞きました……そのような方は、この学園に相応しくないのではありませんか?」

 私と同学年の生徒は、魔法の成績がトップの私と比べられる人が多いらしい。
 
 そのせいで敵視されているけど……目の前の人は、私を学園から追い出したいようだ。

「次期聖女ローナ様は嘘がつけないから真実です……彼女が聖女になれば、貴方は終わりですよ!」

 叫び声が食堂に響いた時――1人の男子生徒が、私達の前に現れる。
 銀髪の長い髪に端麗な顔立ちをしている長身の美少年で、侯爵令息のアイン様だった。

「――いや、まだその平民ローナは聖女になっていないのだから、嘘はつけるだろう」

 アイン様は聖女について詳しいようで、ローナは嘘がつけると言ってくれる。
 伯爵家の令嬢は驚きながら、アインに対して叫ぶ。

「なっ!? アイン様はヴィーオ公爵家の発言を否定するのですか!?」

「俺は事実を言っているだけだ……真実は、後にわかるだろう」

「うっ……失礼いたします!」

 アイン様の凍てつくような視線に当てられて、女生徒は逃げ去っていく。
 
 どうやらアイン様は他の人とは違い、ローナが聖女に相応しくないと思っていそう。
 とにかく私は、アイン様に頭を下げてお礼を言う。

「アイン様……ありがとうございます」

「俺は聖女の正しい知識を教えただけだ‥…それに、なぜ力のあるセリスを聖女にしないのか、俺には理解できないよ」

「……えっ?」

「ジェイクは容姿に惚れた平民ローナを聖女に選び、婚約者にしたかったのだろう……憐れな奴だ」

 どうやらアイン様は、ジェイクの発言が嘘だと確信しているようだ。
 私はこの状況でも味方になってくれる人もいることを知って、安堵していた。
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