白い結婚は終わりました。――崩れない家を築くまで

しおしお

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第二十七話 約束の再確認

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第二十七話 約束の再確認

 再建の流れが安定してから、侯爵家の屋敷にはようやく「日常」と呼べる時間が戻ってきました。

 派手さはない。
 余裕もない。

 けれど、無理をしていない。

 そのことが、何よりも静かな強さを持っていました。

 午前中、私は書簡の整理を終え、応接室で義母と向き合っていました。

「最近は、落ち着いたわね」

「ええ」

「……あなたが何もしなかったからかしら」

 皮肉のようでいて、どこか本音を含んだ声。

 私は穏やかに答えます。

「動かなかったのではなく、約束を守っただけです」

 義母は深く息を吐きました。

「あなたのその約束が、どれほど重いものだったか……今は分かる気がするわ」

 私は何も言わない。

 理解は、押しつけるものではない。

 午後、執務室では帳簿の最終確認が行われていました。

「未払い分はすべて処理済みだ」

 アレクシスの声は落ち着いている。

「短期契約の損失も確定した」

「二度と同じことはしない」

 義弟の声も、以前より低く、確かだった。

 私は廊下で足を止める。

 止めなかった選択。
 助けなかった選択。

 その結果が、今ここにある。

 夕刻、庭園でアレクシスと並んで歩く。

「君に聞きたい」

「何でしょう」

「契約を続けるのか」

 風が枝を揺らす。

 干渉しない契約。
 白い結婚。

 私は少しだけ考えた。

「破る理由がございません」

「私は……今なら違う形も選べる」

 彼の声は静かだが、確かな意志を含んでいる。

「干渉しない契約は、私が選んだ」

「ええ」

「だが、私は君を遠ざけた」

 私は首を振る。

「遠ざかったのではなく、距離を決めただけです」

「その距離が、私を変えた」

 沈黙。

 彼はゆっくりと言う。

「契約を、見直したい」

 初めての申し出。

 私は視線を上げる。

「なぜ」

「私は、君に支えられたい」

 助けてほしい、ではない。

 支えられたい。

 その違いに、私は気づく。

「干渉しない形ではなく、共に決める形にしたい」

 夜風が静かに吹く。

 約束は守られた。
 家は崩れなかった。

 けれど、問いは残っていた。

 私はゆっくりと答える。

「見直すことは可能です」

 彼の目がわずかに揺れる。

「ただし、軽く扱ってはなりません」

「承知している」

「守る覚悟が必要です」

「ある」

 短い言葉。

 けれど、その重みは以前とは違う。

 屋敷の灯りが穏やかに揺れる。

 契約は、守られたからこそ意味を持った。

 そして今、守られた約束は、次の形へと進もうとしている。

 私は隣に立つ。

 干渉しないだけの立場ではなく。

 それでもまだ、踏み出さない。

 約束の再確認。

 侯爵家は今、新しい形を選ぶ分岐に立っている。

 そして私は、その選択を共にするかどうかを、静かに考えているのです。
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