愛する夫にもう一つの家庭があったことを知ったのは、結婚して10年目のことでした

ましゅぺちーの

文字の大きさ
50 / 113

50 突然の訪問者

しおりを挟む
あの後、レイラに侍女たちへのお礼の品を預けた私はリーシェお義姉様の元へと戻った。
そして今ちょうど伯爵邸に帰ってきたところである。


「叔母さん、お帰りなさい!」
「ただいま、エドモンド」


伯爵邸のエントランスではエドモンドが丁寧にお出迎えをしてくれた。


「お茶会は楽しかったですか?」
「ええ、とっても楽しかったわよ」
「羨ましいです!僕も一緒に行きたかった!」


(そういえば、エドモンドは第一王子殿下と歳が近かったっけ……)


七歳のエドモンドと、今年で六歳になったレイラの第一子。
何だか最近幼い子供とたくさん関わっているような気がする。
元々子供好きなので嬉しいことだが。


(子供はみんな可愛いわね……)


そんなことを考えていると、エドモンドが不満そうに口を尖らせた。


「叔母さん、僕はもう子供じゃないですよ!」
「……あら」


どうやらエドモンドに思っていることを当てられたようだ。
幼いながらに読心術でも持っているのだろうか。


(これは将来が期待出来そうね……)


まだまだ子供ではあるが、優秀なログワーツ伯爵になる未来が自然と浮かんでくる。
ケインお兄様の優秀さとリーシェお義姉様の優しさを併せ持った良い子になってくれればなと思う。


「あー!また子供だと思った!」
「ふふふ、ごめんごめん」


エドモンドは拗ねたかのようにぷいっとそっぽを向いた。


「――こらエドモンド、あまりエミリアさんを困らせてはいけませんよ」
「お母様!」


少し遅れて屋敷へ入って来たのはリーシェお義姉様だった。
お義姉様は自分に駆け寄るエドモンドを受け止めた。


「エミリアさん、エドモンドがすみません」
「いえいえ、とても可愛らしい子で」


彼女はエドモンドを使用人に預けた後、私に近付いてきて尋ねた。


「それで、贈り物は無事に渡せましたか?」
「あ、はい!レイラならきっと渡しておいてくれると思います!」
「王妃陛下は本当に頼りになりますね」


私たちはクスクスと笑い合った。
そのとき、突然お義姉様が神妙な面持ちになった。


「ところでエミリアさん、王妃陛下の元へ戻っている最中に何かありましたか?」
「え、何かといいますと……?」
「いえ、馬車の中で考え込んでいる様子でしたので何かあったのかなと」
「あ、いや、私は……」


お義姉様は鋭い人だ。
そんな些細な変化に気付くだなんて。


(ルークのこと……言ってしまっていいんだろうか……)


悩みに悩んだ末、私はお義姉様に彼のことを打ち明けた。


「――ということが以前ありまして、そのときの方と偶然お会いしたのです」
「まぁ、領地でそんなことが……」


彼女はじっくりと私の話に耳を傾けた。


「不思議ですよね。もう二度と会うことは無いと思っていたのに。それに何故王宮にいたのか……疑問だらけです」
「ローブを着て顔を隠していたのなら、もしかすると王家の諜報員かもしれませんわね」
「あーたしかに!」


それなら王宮にいたのも納得がいく。


(なぁんだ!そういうことだったのね!)


ようやく合点がいった。


「それにしてもすごいですね。他人のためにそんな風に行動できるだなんて」
「……ありがとうございます」
「ふふ、エミリアさんは本当に素敵なお方です」


私が照れ臭そうに礼を言うと、お義姉様はニッコリと微笑んだ。


(素敵な人だなんて……)


「……そろそろ部屋に戻りますね」
「はい、ゆっくりお休みください」


何だか急に恥ずかしくなった私は、逃げるようにしてお義姉様の前から立ち去った。



***


それから私は夜までの間を自室で過ごした。
色々とやるべきことがあったからだ。
気付けばもう夜の十二時で、エドモンドはもちろんお兄様たちも寝ている時間である。


「ふぅ……疲れた」


読んでいた本を閉じ、私は軽く伸びをした。


(何だか最近疲れてばっかりな気がする……)


公爵邸にいた頃は運動などほとんどしていなかったからか。
昔に比べるとだいぶ体力が落ちているようだ。
しかし、そんな体とは対照的に心は元気である。


(全然辛くないわ。むしろ幸せすぎるくらい)


離婚してからの日々を思い浮かべて笑みを深くしていたそのとき、突然どこかから音がした。


「……?」


異変を感じ取った私はゆっくりと首を回して部屋の中に目を向けた。
最初は勘違いかと思ったが、再び同じ音が鳴った。


(何……?誰かいるの……?)


侵入者だろうかと身構えていたとき、窓に人影が見えた。


「誰!?」


窓を開けて確認してみると――


「え………………ルーク!?」


何とルークが、窓の傍に生えていた木の枝に座ってこちらをじっと見ていたのだ。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

【完結】私を捨てた皆様、どうぞその選択を後悔なさってください 〜婚約破棄された令嬢の、遅すぎる謝罪はお断りです〜

くろねこ
恋愛
王太子の婚約者として尽くしてきた公爵令嬢エリシアは、ある日突然、身に覚えのない罪で断罪され婚約破棄を言い渡される。 味方だと思っていた家族も友人も、誰一人として彼女を庇わなかった。 ――けれど、彼らは知らなかった。 彼女こそが国を支えていた“本当の功労者”だったことを。 すべてを失ったはずの令嬢が選んだのは、 復讐ではなく「関わらない」という選択。 だがその選択こそが、彼らにとって最も残酷な“ざまぁ”の始まりだった。

貴方といると、お茶が不味い

わらびもち
恋愛
貴方の婚約者は私。 なのに貴方は私との逢瀬に別の女性を同伴する。 王太子殿下の婚約者である令嬢を―――。

さようなら、お別れしましょう

椿蛍
恋愛
「紹介しよう。新しい妻だ」――夫が『新しい妻』を連れてきた。  妻に新しいも古いもありますか?  愛人を通り越して、突然、夫が連れてきたのは『妻』!?  私に興味のない夫は、邪魔な私を遠ざけた。  ――つまり、別居。 夫と父に命を握られた【契約】で縛られた政略結婚。  ――あなたにお礼を言いますわ。 【契約】を無効にする方法を探し出し、夫と父から自由になってみせる! ※他サイトにも掲載しております。 ※表紙はお借りしたものです。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

旦那様には愛人がいますが気にしません。

りつ
恋愛
 イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。 ※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。

八年間の恋を捨てて結婚します

abang
恋愛
八年間愛した婚約者との婚約解消の書類を紛れ込ませた。 無関心な彼はサインしたことにも気づかなかった。 そして、アルベルトはずっと婚約者だった筈のルージュの婚約パーティーの記事で気付く。 彼女がアルベルトの元を去ったことをーー。 八年もの間ずっと自分だけを盲目的に愛していたはずのルージュ。 なのに彼女はもうすぐ別の男と婚約する。 正式な結婚の日取りまで記された記事にアルベルトは憤る。 「今度はそうやって気を引くつもりか!?」

処理中です...