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やがて
【十】旦那様とすれ違い
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星様と何時もの様に、僕のお部屋でお勉強をしていました。
書店で購入しました医学書等を頼りに、出来るだけの知識を取り入れて行きます。
星様も『おいらも簡単なの覚えよ。親父殿が怪我したら、すぐに手当てしてあげよ』と、大変やる気を見せています。
何故、出血するのか。とか、心臓の役割だとか、そう云う事とか気になり出したりして、それを調べたりするのも、とても面白いです。脈とか、実際に星様のお手をお借りしたり、僕の手をお貸ししたりして測ってみたりしています。包帯を巻く練習もしています。
人の身体とは、本当に不思議です。自分の身体の事ですのに、知らない事だらけです。
学べば学ぶ程、知らない事が増えて行きます。そして、それを調べて知って行くのが本当に面白いです。
人体の事だけでなく、学ぶ事の、この楽しさをもっと知りたいし、知って欲しいと思います。
菅原先生が仰ってましたが、これからはもっと多くの方が学べる様になるのですね。
それは、何て素晴らしい事なのでしょう。
あの日蝕を切っ掛けに、色々と変わって来ています。
これが、歴史が動くと云う事なのでしょうか?
そんな中に居るなんて、そんな瞬間に立ち会う事が出来るだなんて。
本当に、僕は何て幸せ者なのでしょう。
あの日に、旦那様に出逢えて本当に良かったです。
こんな風に将来の事を考えているだなんて、あの頃からは考えられません。
あの頃は、ただ起きて、ただ動いていただけでした。
何処へ行っても、僕は厄介者でしかなくて。
温かい言葉を掛けてくれる人も、僕を本気で心配してくれる人も居ませんでした。
ただ、追い出されない様に。
ただ、それだけの為に、お役に立とうとしていた気がします。
そんな僕でしたのに。
今は…――――――――。
「…ちょっ、本当に待って、紫君っ!! 一旦落ち着こうっ!?」
「ん? さがらのにーちゃん?」
相楽様の慌てた様な声と共に、どかどかと廊下を乱暴に踏み締めて進む足音が聞こえます。
この様な事は初めてです。何かあったのでしょうか?
「どうされたのでしょうか? まさか、旦那様がお見舞いの帰りに新たに木刀を購入されて来たのでしょうか?」
そう言いながら、僕が立ち上がり掛けたその時、ぱん、と大きな音を立てて障子が勢い良く開きました。
星様が、その音の大きさにびくりと身体を跳ねさせました。
「旦那様? 相楽様? どうされたのですか?」
こんな乱暴に障子を開けるだなんて事は、これまでに一度もありませんでした。
特に、今はお勉強中ですから、こちらへは近付かない様にと、お願いしていましたのに。
あ。もうそろそろ星様のお帰りの時間ですから、終わったと思っての事でしょうか?
ですが、何があったのでしょうか?
じっと僕を見詰めます旦那様の目は、とても冷たく感じます。
その旦那様の斜め後ろでは、相楽様が片手でお顔を押さえているのが見えます。
旦那様の手にも、相楽様の手にも、木刀はありません。
一体、どうされたのでしょう?
勉強用に広げた小さめの卓袱台に両手を乗せて、腰を浮かべたままの僕を一瞥して旦那様がお部屋の中へと入って来ます。
「…雪緒…」
「はっ、はひっ!?」
その声は、何時もよりもとても低く、とても冷たい物でした。
背筋をぴんと伸ばして、僕は直立不動の姿勢を取りましたが、その背中に微かな震えが走ります。声も、裏返ってしまった様な気がします。
星様がそんな僕を見上げて、丸くした目を瞬かせてから、旦那様の方へとお顔を動かします。
一体、何があったのでしょうか? お出掛け前は、何時もと変わりがありませんでしたのに? 何故、こんなにお怒りなのでしょうか? 僕は気付かない間に、何かをしでかしてしまったのでしょうか? 菅原先生は甘い物がお好きとお伝え致しましたが、急に菅原先生の嗜好が変わってしまわれて、お見舞いの品をありがた迷惑と取られてしまったのでしょうか? それとも、お昼の食べ合わせが良くなくて、お腹に異常をきたしてしまい、道中で苦労されたのでしょうか? それとも…――――――――。
「お前、医師になって…現場に出て俺の治療をしたいそうだな?」
「あ。そちらでしたか…って、何故、それを!?」
そのお話しは…あ…菅原先生…?
お見舞いに行った日に、親と…旦那様と良く話す様にと、言われました。
日数も経ちましたから、僕が旦那様とお話ししたと思われたのでしょうか?
…ですが…僕は…まだ、お話し出来ていません。
何処か恥ずかしかったのもありますが…僕が妖に襲われた事から、その事に出来るだけ触れない様にして来た旦那様の事です…恐らくは反対されるのではないかと思ったのです。
「あ、あの、自分でも無謀だとは解っては居ま…」
そうです。
自分でも、無謀な挑戦だと解って居ます。
ですが、刀を持つ勇気の無い僕に出来る事は。
こんな僕でも出来る事は、これだと思ったのです。
医師になる事が出来れば。
相楽様の様に、的確に素早く治療が出来る様になれば。
胸を張って旦那様のお隣に並べる様な、そんな存在になれると、そう思ったのです。
僕は、旦那様に守られるだけの存在では無いと。
僕だって、旦那様をお守りする事が出来るのだと。
僕だって、旦那様から頼りにされる存在になれるのだと。
そうしたら、きっと旦那様も喜んで下さると。
「やめておけ」
「…え…?」
そう思いましたのに。
旦那様の声も、その細い目も、とても冷たくて。
頭から冷水を浴びせられるとは、こう云う事なのでしょうか?
すっと、目の前が暗くなった気がします。
きゅっと、お腹の前で手を重ねますが、その指先がとても冷たく感じました。
「俺の為だと、それだけなら迷惑以外の何物でも無い」
…迷惑…?
「紫君っ!!」
「あ? え? おじさん!? ゆきお、おじさんの為に、がんばってるんだぞ!?」
相楽様の旦那様を咎める声と、星様の慌てる声が聞こえます。
聞こえますが、何故でしょう? 何処か遠くから聞こえる様な気がします。
…ご迷惑だなんて…そんな…明確に拒絶されるなんて…。
「…何故…ですか…? 僕なりに…旦那様をお守りしたくて…日蝕の時の様に…足手纏いになりたくなくて…」
唇を噛み締めて、僕は俯いてしまいます。
何故か、視界が滲んでいます。
重ねてある下の手を拳にして、その上にある手でぎゅっと握り締める様にします。
そんな僕を、星様がはらはらと心配そうに見上げて来るのが、視界の隅に映ります。
「…守る? お前が、俺を? 生憎とお前に守られなければならない程、俺は弱くは無いつもりだ。お前は、大人しく守られていれば良いんだ。それが、子供の務めだ」
その言葉に、僕の何かが切れてしまった気がします。
「…っ…!! 子供、子供って…僕は子供ではありませんっ!!」
「それが子供だと言うんだっ!!」
顔を上げて、真っ直ぐと旦那様を睨む様にして叫ぶ僕に、旦那様も負けじと声を張り上げます。
「あわ、ゆきお…!」
「ゆ、紫君、落ち着いて…!」
星様が立ち上がり、僕の傍へと寄って来ます。相楽様も、旦那様の背後から腕を回して、その身体を押さえています。
「僕だって、旦那様のお役に立ちたいのです! 旦那様のお隣に並んでも、旦那様が恥ずかしい思いをされない様に…っ…!!」
そうです。
誰が見ても。
誰から見ても。
僕が、そこに居るのが当然だと思われたいのです。
「要らん世話だ! 子供が余計な事を考えるな! お前は自分の事だけを考えていれば良いんだ! 何も考えずに、俺に守られていろっ!!」
ただ、ただ、守られるだけの弱い存在で居たく無いのに。
何故、それを押し付けようとするのですか?
何故、僕の言葉を聞いて下さらないのですか?
僕が、子供だからですか?
「嫌です!! 子供だから、ただ、守られなければならないなんて…っ…!! 僕は…っ…!! それなら僕は、旦那様の子供にだなんてなりたく無かったっ!!」
「な…っ…!!」
目を見開きます旦那様に、僕は尚も言います。
「ただ、旦那様のお傍に居られるのなら! ずっとお傍に居られるのなら、子供でも良いと思いました! ですが、それがこんな風に仇となるのなら、そんな繋がり等要りませんっ!!」
「…ゆ…」
きっぱりと言い切った僕の言葉に、旦那様のお顔が苦し気に歪められますが、僕の言葉は止まりません。
「僕を守って傷付いた旦那様を癒したいと、そのお手当てをしたいと思うのが、そんなにいけない事なのですか!? 僕では、奥様の代わりになれないのは解っています! ですが、僕は…僕は…っ…!!」
ただ、ただ、僕は旦那様のお傍に居たいだけですのに。
本当に、それだけで良い筈でしたのに…。
…何故、奥様を引き合いに出してしまったのでしょう?
無意識に出てしまった言葉に、僕は息を飲みます。
旦那様も、同じ様でした。
「…は…? え…? おい…? 何故、そこで鞠子が出て来る…?」
…奥様の様に、そこに居るだけで旦那様を癒せる存在…その様な存在になりたいと…。
…医師になりたい等と…それは…きっと、ただの建前で…傍に居る理由が…欲し…くて…。
…僕は…僕は…本当は…。
…ほん…とうは…――――――――。
「旦那様はお馬鹿ちんさんですっ!! 行きましょう、星様っ!!」
「おわっ!?」
戸惑います旦那様に、僕は身体を折る様にして叫び、驚く星様の手を引いてお部屋から飛び出しました。
…本当のお馬鹿ちんは…僕の方です…――――――――。
書店で購入しました医学書等を頼りに、出来るだけの知識を取り入れて行きます。
星様も『おいらも簡単なの覚えよ。親父殿が怪我したら、すぐに手当てしてあげよ』と、大変やる気を見せています。
何故、出血するのか。とか、心臓の役割だとか、そう云う事とか気になり出したりして、それを調べたりするのも、とても面白いです。脈とか、実際に星様のお手をお借りしたり、僕の手をお貸ししたりして測ってみたりしています。包帯を巻く練習もしています。
人の身体とは、本当に不思議です。自分の身体の事ですのに、知らない事だらけです。
学べば学ぶ程、知らない事が増えて行きます。そして、それを調べて知って行くのが本当に面白いです。
人体の事だけでなく、学ぶ事の、この楽しさをもっと知りたいし、知って欲しいと思います。
菅原先生が仰ってましたが、これからはもっと多くの方が学べる様になるのですね。
それは、何て素晴らしい事なのでしょう。
あの日蝕を切っ掛けに、色々と変わって来ています。
これが、歴史が動くと云う事なのでしょうか?
そんな中に居るなんて、そんな瞬間に立ち会う事が出来るだなんて。
本当に、僕は何て幸せ者なのでしょう。
あの日に、旦那様に出逢えて本当に良かったです。
こんな風に将来の事を考えているだなんて、あの頃からは考えられません。
あの頃は、ただ起きて、ただ動いていただけでした。
何処へ行っても、僕は厄介者でしかなくて。
温かい言葉を掛けてくれる人も、僕を本気で心配してくれる人も居ませんでした。
ただ、追い出されない様に。
ただ、それだけの為に、お役に立とうとしていた気がします。
そんな僕でしたのに。
今は…――――――――。
「…ちょっ、本当に待って、紫君っ!! 一旦落ち着こうっ!?」
「ん? さがらのにーちゃん?」
相楽様の慌てた様な声と共に、どかどかと廊下を乱暴に踏み締めて進む足音が聞こえます。
この様な事は初めてです。何かあったのでしょうか?
「どうされたのでしょうか? まさか、旦那様がお見舞いの帰りに新たに木刀を購入されて来たのでしょうか?」
そう言いながら、僕が立ち上がり掛けたその時、ぱん、と大きな音を立てて障子が勢い良く開きました。
星様が、その音の大きさにびくりと身体を跳ねさせました。
「旦那様? 相楽様? どうされたのですか?」
こんな乱暴に障子を開けるだなんて事は、これまでに一度もありませんでした。
特に、今はお勉強中ですから、こちらへは近付かない様にと、お願いしていましたのに。
あ。もうそろそろ星様のお帰りの時間ですから、終わったと思っての事でしょうか?
ですが、何があったのでしょうか?
じっと僕を見詰めます旦那様の目は、とても冷たく感じます。
その旦那様の斜め後ろでは、相楽様が片手でお顔を押さえているのが見えます。
旦那様の手にも、相楽様の手にも、木刀はありません。
一体、どうされたのでしょう?
勉強用に広げた小さめの卓袱台に両手を乗せて、腰を浮かべたままの僕を一瞥して旦那様がお部屋の中へと入って来ます。
「…雪緒…」
「はっ、はひっ!?」
その声は、何時もよりもとても低く、とても冷たい物でした。
背筋をぴんと伸ばして、僕は直立不動の姿勢を取りましたが、その背中に微かな震えが走ります。声も、裏返ってしまった様な気がします。
星様がそんな僕を見上げて、丸くした目を瞬かせてから、旦那様の方へとお顔を動かします。
一体、何があったのでしょうか? お出掛け前は、何時もと変わりがありませんでしたのに? 何故、こんなにお怒りなのでしょうか? 僕は気付かない間に、何かをしでかしてしまったのでしょうか? 菅原先生は甘い物がお好きとお伝え致しましたが、急に菅原先生の嗜好が変わってしまわれて、お見舞いの品をありがた迷惑と取られてしまったのでしょうか? それとも、お昼の食べ合わせが良くなくて、お腹に異常をきたしてしまい、道中で苦労されたのでしょうか? それとも…――――――――。
「お前、医師になって…現場に出て俺の治療をしたいそうだな?」
「あ。そちらでしたか…って、何故、それを!?」
そのお話しは…あ…菅原先生…?
お見舞いに行った日に、親と…旦那様と良く話す様にと、言われました。
日数も経ちましたから、僕が旦那様とお話ししたと思われたのでしょうか?
…ですが…僕は…まだ、お話し出来ていません。
何処か恥ずかしかったのもありますが…僕が妖に襲われた事から、その事に出来るだけ触れない様にして来た旦那様の事です…恐らくは反対されるのではないかと思ったのです。
「あ、あの、自分でも無謀だとは解っては居ま…」
そうです。
自分でも、無謀な挑戦だと解って居ます。
ですが、刀を持つ勇気の無い僕に出来る事は。
こんな僕でも出来る事は、これだと思ったのです。
医師になる事が出来れば。
相楽様の様に、的確に素早く治療が出来る様になれば。
胸を張って旦那様のお隣に並べる様な、そんな存在になれると、そう思ったのです。
僕は、旦那様に守られるだけの存在では無いと。
僕だって、旦那様をお守りする事が出来るのだと。
僕だって、旦那様から頼りにされる存在になれるのだと。
そうしたら、きっと旦那様も喜んで下さると。
「やめておけ」
「…え…?」
そう思いましたのに。
旦那様の声も、その細い目も、とても冷たくて。
頭から冷水を浴びせられるとは、こう云う事なのでしょうか?
すっと、目の前が暗くなった気がします。
きゅっと、お腹の前で手を重ねますが、その指先がとても冷たく感じました。
「俺の為だと、それだけなら迷惑以外の何物でも無い」
…迷惑…?
「紫君っ!!」
「あ? え? おじさん!? ゆきお、おじさんの為に、がんばってるんだぞ!?」
相楽様の旦那様を咎める声と、星様の慌てる声が聞こえます。
聞こえますが、何故でしょう? 何処か遠くから聞こえる様な気がします。
…ご迷惑だなんて…そんな…明確に拒絶されるなんて…。
「…何故…ですか…? 僕なりに…旦那様をお守りしたくて…日蝕の時の様に…足手纏いになりたくなくて…」
唇を噛み締めて、僕は俯いてしまいます。
何故か、視界が滲んでいます。
重ねてある下の手を拳にして、その上にある手でぎゅっと握り締める様にします。
そんな僕を、星様がはらはらと心配そうに見上げて来るのが、視界の隅に映ります。
「…守る? お前が、俺を? 生憎とお前に守られなければならない程、俺は弱くは無いつもりだ。お前は、大人しく守られていれば良いんだ。それが、子供の務めだ」
その言葉に、僕の何かが切れてしまった気がします。
「…っ…!! 子供、子供って…僕は子供ではありませんっ!!」
「それが子供だと言うんだっ!!」
顔を上げて、真っ直ぐと旦那様を睨む様にして叫ぶ僕に、旦那様も負けじと声を張り上げます。
「あわ、ゆきお…!」
「ゆ、紫君、落ち着いて…!」
星様が立ち上がり、僕の傍へと寄って来ます。相楽様も、旦那様の背後から腕を回して、その身体を押さえています。
「僕だって、旦那様のお役に立ちたいのです! 旦那様のお隣に並んでも、旦那様が恥ずかしい思いをされない様に…っ…!!」
そうです。
誰が見ても。
誰から見ても。
僕が、そこに居るのが当然だと思われたいのです。
「要らん世話だ! 子供が余計な事を考えるな! お前は自分の事だけを考えていれば良いんだ! 何も考えずに、俺に守られていろっ!!」
ただ、ただ、守られるだけの弱い存在で居たく無いのに。
何故、それを押し付けようとするのですか?
何故、僕の言葉を聞いて下さらないのですか?
僕が、子供だからですか?
「嫌です!! 子供だから、ただ、守られなければならないなんて…っ…!! 僕は…っ…!! それなら僕は、旦那様の子供にだなんてなりたく無かったっ!!」
「な…っ…!!」
目を見開きます旦那様に、僕は尚も言います。
「ただ、旦那様のお傍に居られるのなら! ずっとお傍に居られるのなら、子供でも良いと思いました! ですが、それがこんな風に仇となるのなら、そんな繋がり等要りませんっ!!」
「…ゆ…」
きっぱりと言い切った僕の言葉に、旦那様のお顔が苦し気に歪められますが、僕の言葉は止まりません。
「僕を守って傷付いた旦那様を癒したいと、そのお手当てをしたいと思うのが、そんなにいけない事なのですか!? 僕では、奥様の代わりになれないのは解っています! ですが、僕は…僕は…っ…!!」
ただ、ただ、僕は旦那様のお傍に居たいだけですのに。
本当に、それだけで良い筈でしたのに…。
…何故、奥様を引き合いに出してしまったのでしょう?
無意識に出てしまった言葉に、僕は息を飲みます。
旦那様も、同じ様でした。
「…は…? え…? おい…? 何故、そこで鞠子が出て来る…?」
…奥様の様に、そこに居るだけで旦那様を癒せる存在…その様な存在になりたいと…。
…医師になりたい等と…それは…きっと、ただの建前で…傍に居る理由が…欲し…くて…。
…僕は…僕は…本当は…。
…ほん…とうは…――――――――。
「旦那様はお馬鹿ちんさんですっ!! 行きましょう、星様っ!!」
「おわっ!?」
戸惑います旦那様に、僕は身体を折る様にして叫び、驚く星様の手を引いてお部屋から飛び出しました。
…本当のお馬鹿ちんは…僕の方です…――――――――。
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