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第十節「狂騒鳥曲 死と願い 少女が為の青空」
~我等が主に成って頂きとう~
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壮絶な会合を経て、フェノーダラ王が去った。
勇に国防の全てを託して。
確かに、一見すればただの丸投げとも言えるかもしれない。
でもこれが王として出来る最大の譲歩なのだろう。
国境と信頼という駒を天秤で測り、その浮き沈みの度合いから導き出された最良の結論なのだ。
それに何より、その結論に勇もジョゾウ達も満足している。
元より自分達で何とかしようとしていた所もあったから。
事実上の「自由に戦え」宣言さえ貰えた今なら、戦う事に何の憂いも無いだろう。
ただし、勇自身としては少し事情が複雑になりそうだけども。
「勇殿、先程は大変失礼しもうした。 危うく見苦しき死に様を見せる所であったな」
「いや。 でも思い留まってくれて助かったよ。 やっぱりこうやって話せる人が死ぬなんて見たくないからさ」
「そう思えるのが勇殿の強さであろう。 我等が信頼を寄せるにも値しような。 然らば願いとう御座る。 勇殿に我等が王となって頂く事を」
ジョゾウ達の生贄となる運命は回避されたが、主君を立てるという流儀に変わりはない。
だからこそ彼等は今またしても跪く。
今度は勇の前で、再び規則正しく並びながら。
「勇殿の想い、熱くこの胸に響いた故。 貴殿こそ我等が主として相応しいと判断した次第に候。 なれば―――」
しかしてその瞳には希望が灯っている。
全員が顔を上げ、そんな瞳を勇へと向けている。
決意と覚悟と、そしてこの上無い信頼の輝きを放って。
「我が名はジョゾウ!」
「ボウジ!」
「ッドウベ!」
「ロンボォウ!」
「ムゥベェェイ!」
「ライゴォ!」
「ミゴッ!」
その末に放たれた名乗りは誇り高くさえ感じさせ。
一つ一つの名が勇の胸を打つ。
高揚で鼓動を高鳴らせる程に強く強く。
なおその心に強い昂りを呼び込む中で。
「「「我等カラクラが精鋭七人衆!! 貴殿を主として我等が命を賭し、その翼、その脚、剣と成ろうぞ!!」」」
この時、勇の背筋にゾクゾクとした悦びが走る。
それだけの迫力が、一体感が、今の口上には存分にあったのだ。
「凄い……まるで時代劇みたいだ」
こう形容するが、きっと勇にはこうしか言えなかったのだろう。
今まで見たテレビ番組でも、ここまでの迫力を見せた合わせ声は無かったから。
まさに一心同体とも言える、何一つ狂い無き叫びだったのだから。
こう成せる事こそが忠誠の強さの証。
故にジョゾウは間違い無く、勇を真の主として認めたのである。
里の主にも負けない程の信頼を以て。
「さて小難しい事が苦手であろう勇殿達の前ではここくらいでよかろうな」
―――と、いった所でジョゾウ達に再びの緩さが戻る。
すると次々にパタパタと立ち上がり、険しかった顔にも穏やかさが。
皆が出会った時同様の丸い目を浮かべ、わいのわいのと談笑する姿々がここに。
「まぁこれはいわゆる通過儀礼の様なものであるからして、深くお気になされぬよう」
「アッハイ」
こうなると一体どっちが本来の姿なのやら。
とはいえ、勇やちゃなは今の緩い姿の方が好きな様で。
硬い雰囲気から解放されると、思わず揃って「ふぅ」と一息。
こちらもなかなかに息ピッタリだ。
「して勇殿。 早速ではありまするが、ロゴウがいつ襲撃してくるとも限らぬ故、備えをしたく」
「備えって言うと、作戦会議とか?」
「左様、他物資なども。 彼奴等は恐らくは時期を見計らって襲い来るであろう。 しかしその時期はかの者を知る拙僧らならば読めましょうな。 なれば、その時が来る前に出来うる限りの防備を整えなければなりませぬ」
「故に今一度、なにとぞ力添えを頂きたく」
そんな緩い雰囲気を残したまま、早速の本題へ。
後ろで仲間達が弾む中、ジョゾウとボウジが再び声を唸らせる。
ただ、勇としてはこの様な戦いの始まり方は初めてだ。
今までは大抵何の策も立てないまま急いで戦いに赴く事ばかりだったから。
なので、どうやらどうすればいいかわからない様子。
「作戦会議かぁ~……とすると何から話せばいいんだろう」
「相手を地上に降ろす方法の話し合いとかでしょうか? 皆でお茶しませんかーって」
「それで済んだらどれだけいい事か」
「ですよね」
何せ戦いのスイッチが入らないと二人は大抵こんな感じで。
浮かんでくるのは大概、平和的解決方法だったり非現実的手段だったり。
隣でジョゾウ達が眉間を寄せてしまう程、実に楽観的なのだ。
けれどこのままでは埒が明かない。
きっと他の皆がそう思った事だろう。
だからこそ、思ってもみなかった人物が動く事となる。
「話の途中で申し訳ありません。 それでしたら我々にも力になれるのではないかと思います」
「あ、そうか。 自衛隊さんなら……」
そう、自衛隊員である。
彼等はまさにその道のエキスパートだ。
特に防衛ならば今までの訓練も生きるし、所有装備も充実しているはず。
それに、魔者に対して攻撃面こそ無力でも防御面なら問題は無い。
防御には命力を必要としないからこそ。
「なら、協力をお願いしたいです。 俺達だけだと何が出来るかもわからないから」
「了解しました。 では私が自衛隊側で話を通しておきますので、藤咲さんは福留氏へ連絡をお願い致します」
「ありがとうございます! よし、これならいけるかもしれない!」
ならばもう頼るしか無いだろう。
勇達にはその恩恵を受ける権利があるのだから。
後は面倒な村野防衛大臣を何とかする必要があるが、そこは福留に任せればいい。
「ついでに皆さん用の仮住居テントも手配します。 今日中には何とかしますので」
「おお、かたじけのう御座る。 なれば信頼の―――」
「申し訳ない、すぐに動くので。 では」
そしてこの自衛隊員さんもなかなかの切り返し具合だ。
ストイックなまでの行動力は羽毛を手渡すタイミングさえ与えはしない。
一方のジョゾウはと言えば、目を潤わせたとても寂しそうな顔をしていた訳だが。
かくして勇達がようやく襲撃への備えを始める事となる。
空から襲い来るであろう敵への対策を。
構築せしは、フェノーダラ王国絶対防衛作戦。
今までに無い形の戦いは、ここからもう既に始まっているのだ。
果たして、今回の戦いはどの様な形へと発展していくのだろうか。
勇に国防の全てを託して。
確かに、一見すればただの丸投げとも言えるかもしれない。
でもこれが王として出来る最大の譲歩なのだろう。
国境と信頼という駒を天秤で測り、その浮き沈みの度合いから導き出された最良の結論なのだ。
それに何より、その結論に勇もジョゾウ達も満足している。
元より自分達で何とかしようとしていた所もあったから。
事実上の「自由に戦え」宣言さえ貰えた今なら、戦う事に何の憂いも無いだろう。
ただし、勇自身としては少し事情が複雑になりそうだけども。
「勇殿、先程は大変失礼しもうした。 危うく見苦しき死に様を見せる所であったな」
「いや。 でも思い留まってくれて助かったよ。 やっぱりこうやって話せる人が死ぬなんて見たくないからさ」
「そう思えるのが勇殿の強さであろう。 我等が信頼を寄せるにも値しような。 然らば願いとう御座る。 勇殿に我等が王となって頂く事を」
ジョゾウ達の生贄となる運命は回避されたが、主君を立てるという流儀に変わりはない。
だからこそ彼等は今またしても跪く。
今度は勇の前で、再び規則正しく並びながら。
「勇殿の想い、熱くこの胸に響いた故。 貴殿こそ我等が主として相応しいと判断した次第に候。 なれば―――」
しかしてその瞳には希望が灯っている。
全員が顔を上げ、そんな瞳を勇へと向けている。
決意と覚悟と、そしてこの上無い信頼の輝きを放って。
「我が名はジョゾウ!」
「ボウジ!」
「ッドウベ!」
「ロンボォウ!」
「ムゥベェェイ!」
「ライゴォ!」
「ミゴッ!」
その末に放たれた名乗りは誇り高くさえ感じさせ。
一つ一つの名が勇の胸を打つ。
高揚で鼓動を高鳴らせる程に強く強く。
なおその心に強い昂りを呼び込む中で。
「「「我等カラクラが精鋭七人衆!! 貴殿を主として我等が命を賭し、その翼、その脚、剣と成ろうぞ!!」」」
この時、勇の背筋にゾクゾクとした悦びが走る。
それだけの迫力が、一体感が、今の口上には存分にあったのだ。
「凄い……まるで時代劇みたいだ」
こう形容するが、きっと勇にはこうしか言えなかったのだろう。
今まで見たテレビ番組でも、ここまでの迫力を見せた合わせ声は無かったから。
まさに一心同体とも言える、何一つ狂い無き叫びだったのだから。
こう成せる事こそが忠誠の強さの証。
故にジョゾウは間違い無く、勇を真の主として認めたのである。
里の主にも負けない程の信頼を以て。
「さて小難しい事が苦手であろう勇殿達の前ではここくらいでよかろうな」
―――と、いった所でジョゾウ達に再びの緩さが戻る。
すると次々にパタパタと立ち上がり、険しかった顔にも穏やかさが。
皆が出会った時同様の丸い目を浮かべ、わいのわいのと談笑する姿々がここに。
「まぁこれはいわゆる通過儀礼の様なものであるからして、深くお気になされぬよう」
「アッハイ」
こうなると一体どっちが本来の姿なのやら。
とはいえ、勇やちゃなは今の緩い姿の方が好きな様で。
硬い雰囲気から解放されると、思わず揃って「ふぅ」と一息。
こちらもなかなかに息ピッタリだ。
「して勇殿。 早速ではありまするが、ロゴウがいつ襲撃してくるとも限らぬ故、備えをしたく」
「備えって言うと、作戦会議とか?」
「左様、他物資なども。 彼奴等は恐らくは時期を見計らって襲い来るであろう。 しかしその時期はかの者を知る拙僧らならば読めましょうな。 なれば、その時が来る前に出来うる限りの防備を整えなければなりませぬ」
「故に今一度、なにとぞ力添えを頂きたく」
そんな緩い雰囲気を残したまま、早速の本題へ。
後ろで仲間達が弾む中、ジョゾウとボウジが再び声を唸らせる。
ただ、勇としてはこの様な戦いの始まり方は初めてだ。
今までは大抵何の策も立てないまま急いで戦いに赴く事ばかりだったから。
なので、どうやらどうすればいいかわからない様子。
「作戦会議かぁ~……とすると何から話せばいいんだろう」
「相手を地上に降ろす方法の話し合いとかでしょうか? 皆でお茶しませんかーって」
「それで済んだらどれだけいい事か」
「ですよね」
何せ戦いのスイッチが入らないと二人は大抵こんな感じで。
浮かんでくるのは大概、平和的解決方法だったり非現実的手段だったり。
隣でジョゾウ達が眉間を寄せてしまう程、実に楽観的なのだ。
けれどこのままでは埒が明かない。
きっと他の皆がそう思った事だろう。
だからこそ、思ってもみなかった人物が動く事となる。
「話の途中で申し訳ありません。 それでしたら我々にも力になれるのではないかと思います」
「あ、そうか。 自衛隊さんなら……」
そう、自衛隊員である。
彼等はまさにその道のエキスパートだ。
特に防衛ならば今までの訓練も生きるし、所有装備も充実しているはず。
それに、魔者に対して攻撃面こそ無力でも防御面なら問題は無い。
防御には命力を必要としないからこそ。
「なら、協力をお願いしたいです。 俺達だけだと何が出来るかもわからないから」
「了解しました。 では私が自衛隊側で話を通しておきますので、藤咲さんは福留氏へ連絡をお願い致します」
「ありがとうございます! よし、これならいけるかもしれない!」
ならばもう頼るしか無いだろう。
勇達にはその恩恵を受ける権利があるのだから。
後は面倒な村野防衛大臣を何とかする必要があるが、そこは福留に任せればいい。
「ついでに皆さん用の仮住居テントも手配します。 今日中には何とかしますので」
「おお、かたじけのう御座る。 なれば信頼の―――」
「申し訳ない、すぐに動くので。 では」
そしてこの自衛隊員さんもなかなかの切り返し具合だ。
ストイックなまでの行動力は羽毛を手渡すタイミングさえ与えはしない。
一方のジョゾウはと言えば、目を潤わせたとても寂しそうな顔をしていた訳だが。
かくして勇達がようやく襲撃への備えを始める事となる。
空から襲い来るであろう敵への対策を。
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今までに無い形の戦いは、ここからもう既に始まっているのだ。
果たして、今回の戦いはどの様な形へと発展していくのだろうか。
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