290 / 1,197
第十節「狂騒鳥曲 死と願い 少女が為の青空」
~訪れしはかの因縁の者よ~
しおりを挟む
さすがの自衛隊は行動が何もかも早かった。
連絡してからものの十数分で搬送トラックが到着して。
中から現れた隊員がテキパキと動き、あっという間に数個の黒テントが完成だ。
恐らくジョゾウ達の寝泊り用だけではなく、中継基地としても使うつもりなのだろう。
中も広々としており、割り当てられたジョゾウ達の喜び跳ねる姿がそこに。
「【寝木】は無かろうか?」
「ば、『バッテラ』? しめ鯖の事ですか……?」
ほんの少し要求に難もあった様だが。
準備ついでにと、勇も近場にあるホームセンターへ走っては簡単な物資をチョイス。
おまけにいつものコンビニで、昼食と〝皆が大好きなアレ〟を購入して戻る。
そして始まったのは、作戦会議開始前のちょっとした休憩タイムで。
ジョゾウらが二ℓボトル【コケッコーラ】を揃って担ぎ飲みする姿は実に壮観だった。
もちろん、その消費の勢いも言わずもがな。
という訳で。
勇が一緒に買ってきたのはただのコンビニの惣菜と弁当。
それでもジョゾウ達はウッキウキと食べて見せていたもので。
お昼時ともあって、あっという間にぺろりと平らげたという。
お陰で皆とても満足そう。
やはり食文化自慢な日本の弁当は凄かった。
「馳走になりもうした。 美味なる食事の数々、ご厚意痛み入りまする」
「ん、なんかデジャブ感じるなー」
そんな反応を前に、勇が思わず頭を悩ませる。
どこか見た事が有る様な無い様な、と。
でもすぐさま数日前のアージとの一件を思い出し、「あ、これだ」と思わず手を叩いていて。
そう、あの一件から実はまだ半月しか経っていない。
比較的最近の事ともあって、勇にとってはタイムリーな話なのだ。
しかしそうも考えれば凄い事だろう。
この短期間でこんなに沢山の理解者と出会えた事になるのだから。
ここまで徳が続くと後でどんな返しが待っているやら、逆に何か怖くなりそう。
もっとも、今の勇とちゃなは何も考えていない様だが。
ジョゾウ達との憩いの歓談で夢中なもので。
楽観ここに極まれりである。
するとそんな時―――
「話の最中申し訳ないが、邪魔をさせて頂く」
歓談に湧く勇達の背後、テントの入口から大きな人影が一人現れる。
現れたのは迷彩服を纏った大柄の男で。
肩幅がとても広く、ぱっと見ではまるでゴリラか。
広く角張った顎と剃られて丸い頭が影となり、まさにその姿を彷彿とさせるかのよう。
しかしそんな荒々しい姿にも拘らず、どこか落ち着きもあって恐れを与えない。
だからか、勇達もその姿が現れた時は「あ、どうも」と軽く会釈を返してしまうくらいだ。
「まさかまた君達と会う事になるとは思わなかったな」
「え? すいません、どこかでお会いしましたっけ?」
「いや、きっと君達には面識は無いだろうから知らなくて当然だ」
ただどうやらこの男、勇達の事を知っているらしい。
それもただ噂を耳にしたなどではなく、実際に会っていると言わんばかりの雰囲気で。
いや、確かに実際に会っている。
勇達がただ気付いていないだけなのだ。
この男が間違い無く勇達と大きく絡んでいたという事に。
「自分は陸上自衛隊三等陸佐、杉浦であります! 本作戦における指揮官として任命されました! 魔剣使い藤咲勇殿に助力を注ぐよう仰せつかっております!」
そんな男・杉浦が見事な敬礼を見せつける。
階級に恥じない、鋭く自信に満ち溢れた動きを以て。
その間も無く両手を腰裏に回しては、背筋を伸ばして姿勢を正し。
なおその厳つい身体を崩す事無く勇達をそっと見下ろしていて。
「――――君達が初めてフェノーダラ王国へ訪れたあの時、私もあの場に居たのだ。 現場指揮官としてね」
「あっ!! もしかしてあの時の!」
しかしこうして杉浦自身から真相を聴かされ、ようやく勇達も気付く事となる。
そう、この杉浦こそがフェノーダラ初訪問の日に勇達を止めようとした指揮官当人。
あろう事か発砲許可まで出した張本人だったのだ。
「あの時は実に申し訳ない事をした。 事情を知らなかったとはいえ、発砲を許可してしまった事は今でも後悔している」
「あぁ~……まぁいいですよ、大事は無かったんですし」
とはいえ、あの時から戦いが本格化して忙しくなり過ぎたもので。
お陰で勇は今の今まですっかり忘れていたらしい。
戦う勢いの余り、曖昧な記憶は棚からすっぽりと抜け落ちてしまっていたのだろう。
そもそも、あの時は剣聖の見せた命力盾の方がずっと衝撃的だった訳だけれども。
「いずれにせよ、これから協力してもらう訳ですから。 なので、よろしくお願いします」
「ああ、どうかよろしく頼む」
そんな事もあって勇は全く気にしていない模様。
どうやら杉浦の気負い過ぎだった様だ。
もっとも、杉浦としては忘れるつもりも無い様だが。
「では早速作戦を立てたい。 敵がいつ襲い来るかもわからないならば早めに事を進めなければならん」
「そうであるな。 では腹ごしらえも済んだ所で備えを始めましょうぞ」
そんな戒めが今は意気込みにも変わるだろう。
元々の気質もあり、その顔は真剣そのもので。
おまけに三佐ともなれば、経験と知識も卓越している地位だからこそ頼もしいと言えよう。
そんな杉浦が一歩引いて勇達を誘う中、皆が揃ってテントの外へ。
そうして行く皆の足取りは、これから巻き起こるであろう戦いへと向けた意気込みで溢れていた。
連絡してからものの十数分で搬送トラックが到着して。
中から現れた隊員がテキパキと動き、あっという間に数個の黒テントが完成だ。
恐らくジョゾウ達の寝泊り用だけではなく、中継基地としても使うつもりなのだろう。
中も広々としており、割り当てられたジョゾウ達の喜び跳ねる姿がそこに。
「【寝木】は無かろうか?」
「ば、『バッテラ』? しめ鯖の事ですか……?」
ほんの少し要求に難もあった様だが。
準備ついでにと、勇も近場にあるホームセンターへ走っては簡単な物資をチョイス。
おまけにいつものコンビニで、昼食と〝皆が大好きなアレ〟を購入して戻る。
そして始まったのは、作戦会議開始前のちょっとした休憩タイムで。
ジョゾウらが二ℓボトル【コケッコーラ】を揃って担ぎ飲みする姿は実に壮観だった。
もちろん、その消費の勢いも言わずもがな。
という訳で。
勇が一緒に買ってきたのはただのコンビニの惣菜と弁当。
それでもジョゾウ達はウッキウキと食べて見せていたもので。
お昼時ともあって、あっという間にぺろりと平らげたという。
お陰で皆とても満足そう。
やはり食文化自慢な日本の弁当は凄かった。
「馳走になりもうした。 美味なる食事の数々、ご厚意痛み入りまする」
「ん、なんかデジャブ感じるなー」
そんな反応を前に、勇が思わず頭を悩ませる。
どこか見た事が有る様な無い様な、と。
でもすぐさま数日前のアージとの一件を思い出し、「あ、これだ」と思わず手を叩いていて。
そう、あの一件から実はまだ半月しか経っていない。
比較的最近の事ともあって、勇にとってはタイムリーな話なのだ。
しかしそうも考えれば凄い事だろう。
この短期間でこんなに沢山の理解者と出会えた事になるのだから。
ここまで徳が続くと後でどんな返しが待っているやら、逆に何か怖くなりそう。
もっとも、今の勇とちゃなは何も考えていない様だが。
ジョゾウ達との憩いの歓談で夢中なもので。
楽観ここに極まれりである。
するとそんな時―――
「話の最中申し訳ないが、邪魔をさせて頂く」
歓談に湧く勇達の背後、テントの入口から大きな人影が一人現れる。
現れたのは迷彩服を纏った大柄の男で。
肩幅がとても広く、ぱっと見ではまるでゴリラか。
広く角張った顎と剃られて丸い頭が影となり、まさにその姿を彷彿とさせるかのよう。
しかしそんな荒々しい姿にも拘らず、どこか落ち着きもあって恐れを与えない。
だからか、勇達もその姿が現れた時は「あ、どうも」と軽く会釈を返してしまうくらいだ。
「まさかまた君達と会う事になるとは思わなかったな」
「え? すいません、どこかでお会いしましたっけ?」
「いや、きっと君達には面識は無いだろうから知らなくて当然だ」
ただどうやらこの男、勇達の事を知っているらしい。
それもただ噂を耳にしたなどではなく、実際に会っていると言わんばかりの雰囲気で。
いや、確かに実際に会っている。
勇達がただ気付いていないだけなのだ。
この男が間違い無く勇達と大きく絡んでいたという事に。
「自分は陸上自衛隊三等陸佐、杉浦であります! 本作戦における指揮官として任命されました! 魔剣使い藤咲勇殿に助力を注ぐよう仰せつかっております!」
そんな男・杉浦が見事な敬礼を見せつける。
階級に恥じない、鋭く自信に満ち溢れた動きを以て。
その間も無く両手を腰裏に回しては、背筋を伸ばして姿勢を正し。
なおその厳つい身体を崩す事無く勇達をそっと見下ろしていて。
「――――君達が初めてフェノーダラ王国へ訪れたあの時、私もあの場に居たのだ。 現場指揮官としてね」
「あっ!! もしかしてあの時の!」
しかしこうして杉浦自身から真相を聴かされ、ようやく勇達も気付く事となる。
そう、この杉浦こそがフェノーダラ初訪問の日に勇達を止めようとした指揮官当人。
あろう事か発砲許可まで出した張本人だったのだ。
「あの時は実に申し訳ない事をした。 事情を知らなかったとはいえ、発砲を許可してしまった事は今でも後悔している」
「あぁ~……まぁいいですよ、大事は無かったんですし」
とはいえ、あの時から戦いが本格化して忙しくなり過ぎたもので。
お陰で勇は今の今まですっかり忘れていたらしい。
戦う勢いの余り、曖昧な記憶は棚からすっぽりと抜け落ちてしまっていたのだろう。
そもそも、あの時は剣聖の見せた命力盾の方がずっと衝撃的だった訳だけれども。
「いずれにせよ、これから協力してもらう訳ですから。 なので、よろしくお願いします」
「ああ、どうかよろしく頼む」
そんな事もあって勇は全く気にしていない模様。
どうやら杉浦の気負い過ぎだった様だ。
もっとも、杉浦としては忘れるつもりも無い様だが。
「では早速作戦を立てたい。 敵がいつ襲い来るかもわからないならば早めに事を進めなければならん」
「そうであるな。 では腹ごしらえも済んだ所で備えを始めましょうぞ」
そんな戒めが今は意気込みにも変わるだろう。
元々の気質もあり、その顔は真剣そのもので。
おまけに三佐ともなれば、経験と知識も卓越している地位だからこそ頼もしいと言えよう。
そんな杉浦が一歩引いて勇達を誘う中、皆が揃ってテントの外へ。
そうして行く皆の足取りは、これから巻き起こるであろう戦いへと向けた意気込みで溢れていた。
0
あなたにおすすめの小説
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【1/20本編堂々完結!】自力で帰還した錬金術師の爛れた日常
ちょす氏
ファンタジー
「この先は分からないな」
帰れると言っても、時間まで同じかどうかわからない。
さて。
「とりあえず──妹と家族は救わないと」
あと金持ちになって、ニート三昧だな。
こっちは地球と環境が違いすぎるし。
やりたい事が多いな。
「さ、お別れの時間だ」
これは、異世界で全てを手に入れた男の爛れた日常の物語である。
※物語に出てくる組織、人物など全てフィクションです。
※主人公の癖が若干終わっているのは師匠のせいです。
ゆっくり投稿です。
少し冷めた村人少年の冒険記 2
mizuno sei
ファンタジー
地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。
不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。
旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
S級冒険者の子どもが進む道
干支猫
ファンタジー
【12/26完結】
とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。
父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。
そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。
その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。
魔王とはいったい?
※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる