時き継幻想フララジカ

日奈 うさぎ

文字の大きさ
555 / 1,197
第二十節「心よ強く在れ 事実を乗り越え 麗龍招参」

~麗しき龍人~

しおりを挟む
 異形と成り果てたギオの強烈な雄叫び……。
 重音、そして命力を乗せた低音の叫び声を張り上げ、ビリビリという感覚が周囲へと伝わっていく。

「アリガトウ……君ノオカゲデ久々ニコノ姿に成ル事ガ出来タ……!!」
「うぅ!?」

 歪な鱗に包まれ赤黒く染まりきった表皮……そして顔の形すらも既に変容していた。

「感謝シ礼ヲシタイ所ダケド……昂ル自分ガ抑エラレソウニナイ……!! 戦エ……共ニ血涙ガ歓ビニ変ワリ果テルマデ戦イ続ケヨウジャナイカ……!!」
「うおぉ!?」

 その時、ギオが大地を蹴り付けたと同時に跳ね上がる。
 勇へと一直線に飛び込み、高速の拳を突き出した。



パゥオォォォーーーーーンッ!!



 突如肉と肉の激しくぶつかる衝撃音が鳴り響いた。
 ギオの殴りつけられた拳からは煙が立ち上り、その衝撃を物語る。



 だが、その拳は真正面に重ね合わされた勇の両手によって受け止められていた。



カララーンッ!!



 時間差でエスカルオールの落下音が鳴り響く。

「ナッ……!? コノ一撃ヲ受ケ止メラレルノカッ!?」

 驚きの表情を見せるギオ。
 だがその視界が勇自身を映し出した時、その目が大きく見開かれた。



 一撃を受け止めた勇の肘から後ろ首元へ光の筋が軌跡を描き、共鳴音を鳴り響かせていたのだ。
 魔装ジャケットが光り輝き、その力をふんだんに奮う。



キィィーーーーンッ!!



「アアッ……!! 君ハッ!! 面白イ人ダッ!!」

 そして途端に始まるギオの拳による突きのラッシュ。
 だが勇がそれを手で器用に受け流し捌き躱す。



 強くなったはずのギオの攻撃を受け止める勇の変化に気付いた剣聖が「ニヤァ」と笑みを浮かべその様子を見つめる。

「ほぉ……なかなかイイモン着てるじゃねぇか……!!」

 さすがの剣聖……魔装ジャケットの特性に気付いたのだろう。
 興味深そうにその様子をまじまじと観察していた。

「そりゃあそうッス!! ボクの造った自慢のアイテムッスよ!!」

 突然そう声を上げたのはカプロ……いつの間にか騒動を嗅ぎ付けて馳せ参じていたようだ。

「翠星剣とおんなじ理論で組み立てた上で、当人の命力を使わずに魔装自身の力で装着者の力を高める事が出来るスグレモノッス!!」
「んなの聞いてねぇんだけど!?」
「当たり前ッス、言ってないッスからね……こういう秘密の能力はいざって時に発揮した方がカッコイイもんッス」

 『こんな緊急時に何言ってるんだ……』という心の声が聞こえてきそうな雰囲気の場の中、トテトテと走り込んでくる茶奈の姿。
 その懐には翠星剣が抱え込まれていた。

「持ってきました!!」
「よっしゃ……タイミング良く渡すんだっ!!」
「えっと……今は無理そうな……」
「そ、そうだな……」



 今なおお互いが殴り合う様子を見せ、間に付け入る隙など微塵も感じない。



 そんな中、アージが突然「ハッ」とした表情を見せる。

「思い出した……もしや彼奴は噂に聞く『麗しの暴君』ではないか……?」

 その二つ名を口にした時、剣聖が空かさず言葉を返した。

「ほぉ、あいつの事を知ってるたぁ随分博識じゃねぇか」
「うぬ……だが所詮は噂とばかりで信じてはいなかった。 実際に存在したとはな……」
「まぁなんだぁ、アイツぁ『暴君』なんてぇ柄じゃねぇからなぁ~……強いて挙げるなら―――」

 まるで面白い物を語るかの様に笑みを浮かべ……二人の戦いを見据えながら剣聖の口が開く。

「―――『そっち側』のニュアンスで、麗しき龍人……麗龍・ギオ……」
「麗龍……!?」



 龍人……まさにその猛々しい姿は荒ぶる神・龍そのもの。
 まさに龍とも取れるその姿と異名を前に、茶奈達は焦りを隠せなかった。

「そ、そんなやばそうな奴ならよ……俺達全員で掛かった方がいいんじゃねぇか……?」

 誰もが閉口する中、心輝がぼそりと呟く。
 だがその言葉を聞き取った剣聖が顔も動かさずその言葉を遮る。

「馬鹿が……お前等全員アイツに勝てなかっただろうがよぉ~……」
「あ……」



 剣聖が言うのは詰まる所、本気の勇との実戦形式で行った訓練の事。
 あの時、勇に勝つ事が出来た者は誰一人として居なかった。
 勇自身は連戦だったのにも拘らずである。

 それはつまり、勇と他の者達との間にある戦闘能力の開きを示す事に他ならない。



「お前等が加勢に入った所でアイツの邪魔にしかなんねぇよぉ~……それよかアイツの戦う様をよぉく見ておけ。 もしアイツがこの先力尽きた時、お前等の中の誰かが今のアイツと同等かそれ以上の力を持たなきゃなんねぇんだ」

 そんな言葉が発せられると……心輝の拳が不意に「ググッ」と力強く握られ真剣な面持ちを作る。

「でもなんで急にそんな……」

 意味深な言葉を連ねたのが気に成ったのか……瀬玲が問うが剣聖の表情は変わらず淡々と語る。

「急でも何でもねぇ。 戦いってのは何が起こるかわからねぇ……だからよ、今アイツがお前等に見せる自身の姿、在り方、戦い方……それを覚えるのが『アイツの背中を守る』なんてぇ軽々しくほざいたお前等の責任だ」

 辛辣な言葉を前に、茶奈達『こちら側』の人間だけでなく『あちら側』の者達もが閉口する。

 だが決して落胆した訳ではない。

 誰しもがその言葉を受け、勇の戦う様を真剣に見届ける。
 彼の見せる戦い……そこに在るモノ全てが今の茶奈達にとっては参考となる在り方なのだと認識したからこそである。


しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【1/20本編堂々完結!】自力で帰還した錬金術師の爛れた日常

ちょす氏
ファンタジー
「この先は分からないな」 帰れると言っても、時間まで同じかどうかわからない。 さて。 「とりあえず──妹と家族は救わないと」 あと金持ちになって、ニート三昧だな。 こっちは地球と環境が違いすぎるし。 やりたい事が多いな。 「さ、お別れの時間だ」 これは、異世界で全てを手に入れた男の爛れた日常の物語である。 ※物語に出てくる組織、人物など全てフィクションです。 ※主人公の癖が若干終わっているのは師匠のせいです。 ゆっくり投稿です。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?

あとりえむ
ファンタジー
【5話ごとのサクッと読める構成です!】全60話 完結しました。読者の皆様ありがとうございます! 世界を救ったのは、聖剣ではなく「洗剤」でした。 「君のやり方は古いんだよ」 不当な理由でS級クランを追放された、ベテラン清掃員・灰坂ソウジ(38歳)。 職を失った彼だったが、実は彼にはとんでもない秘密があった。 呪いのゴーグルのせいで、あらゆる怪物が「汚れ」にしか見えないのだ。 ・神話級ドラゴン  ⇒ 換気扇の頑固な油汚れ(洗剤で瞬殺) ・深淵の邪神  ⇒ トイレの配管詰まり(スッポンで解決) ・次元の裂け目  ⇒ 天井の雨漏りシミ(洗濯機で丸洗い) 「あー、ここ汚れてるな。チャチャッと落としておくか」 本人はただ業務として掃除をしているだけなのに、その姿は世界中で配信され、人類最強の英雄として崇められていく! 可愛い元ダンジョン・コアや、潔癖症の聖女も入社し、会社は今日も大忙し。 一方、彼を追放した元クランは、汚れ(モンスター)に埋もれて破滅寸前で……? 「地球が汚れてる? じゃあ、一回丸洗いしますか」 最強の清掃員が、モップ片手に世界をピカピカにする、痛快・勘違い無双ファンタジー! 【免責事項】 この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。

うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞 ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。 そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

処理中です...