時き継幻想フララジカ

日奈 うさぎ

文字の大きさ
564 / 1,197
第二十一節「器に乗せた想い 甦る巨島 その空に命を貫きて」

~待ちかねて、新生魔剣~

しおりを挟む
 その日、魔特隊本部では何事も無い光景が映っていた。
 グラウンドでは相変わらず暑い中をアージとマヴォ、アンディ、ナターシャが走り込みを行い、彼等を気遣う様にニャラが麦茶の入った大きな水筒を抱えて持っていく姿が見られた。

 剣聖もまたいつもの様に訓練施設の1階大広間に陣取り、己を高める為に静かに佇む。

 その隣にあるトレーニングルームではレンネィがスマートに機器を使って体を動かし、それに倣いズーダー達も同様に使い慣れない機器を使用していた。



 勇達はと言えば……



「ようやく完成かぁッ!!」

 工房に響き渡る大声……心輝が堪らず発したものである。
 そこにはカプロ達だけでなく勇、茶奈、心輝、瀬玲、あずーが揃っていた。
 
「っるさい!! いきなり叫ばないでよ!!」

 瀬玲に小突かれ怒られる心輝であったが……意にも介せずカプロの掴み上げた「それ」を目を輝かせてひたすらに眺め続ける。

 カプロの手に乗るのは……全く新しい形を有したグワイヴ。

 そして彼の後ろには同様に……以前と比べて形が大きく変化した3本の魔剣が姿を晒していた。

「時間かかって申し訳ねッス。 ようやく完成したんで受け取って欲しいッス」

 カプロから手渡されるグワイヴ……心輝がそれを受け取り、まじまじとその洗練されたデザインを眺める。



 元々フィンガーガード部が野球のグローブの様な形を有していたグワイヴであったが、その形は大きく変わり指一本一本を通す手袋の様な形へと変化していた。
 指の甲から指先に至るまでを軽い金属で覆い、爪の様な鋭利な先端を有する……より攻撃的なデザインへと生まれ変わった。

 カッデレータは弓柄から上下に伸びる弓身がそれぞれ二股に分かれ、様相そのものが変化していた。 
 古代文字の紋様を拡張させる為に施された追加突起部は魔剣自体の力を増幅させる物。
 弓柄の下には翠星剣と同じ換装式の命力珠ホルダーが搭載され、戦闘中に命力珠を換装する事で使用者の命力の消費量を極限まで減らす仕様へと生まれ変わった。

 エスカルオールは全体的な形状が細身へと変わっており、洗練されたエリアルエジェクタがその形状を幾何学的な形状へと変化していた。
 現代の揚力技術の粋を結集して仕上げられたその飾り羽が使用者の使用感と機動力を格段に向上させる、人間工学にも乗っ取ったもっとも扱いやすい武器として生まれ変わった。



「いい仕事してるねぇ~カプロ君!!」
「うぴぴ、言う程でもあるッスよぉ!!」

 謙遜する事も無く自分の才能をひけらかすカプロに、勇達も笑いを飛ばし首を縦に振る。
 彼の才能は誰もが納得しているからこそ、カプロ自身もこうやって胸を張って彼等にこの様な事が言えるのだろう。

「勇さんの魔装と魔甲も出来てるッスよ」
「お、サンキュ」

 カプロの声に反応して研究員が勇の装備を一式持ってくると、彼に礼をして受け取る。
以前よりも少し手を加えたのだろうか……勇が手に持った時、以前よりも若干重さを感じた。

「カプロ、またなんか仕込んだのか? 少し重く感じたけど」

 だがカプロはその言葉に対して首を傾げ、「んん?」と鼻で声を鳴らした。

「むしろ素材を少しいじって軽くしたッスけど……」
「え? あ、そうかぁ……勘違いだったみたいだ、ごめんごめん」

 他の4人が勇の事を不思議に見つめる中……勇は慌てて装備を脇に抱える。
 「ハハハ」と笑い誤魔化すと、勇は一足早く工房から足を踏み出した。



―――危ない……危うくバレる所だった―――



 勇が感じたのは本当の事である……実際に彼にとっては魔装が重く感じたのだ。

 この1ヶ月半……勇の命力は確実に低下していた。
 しかも剣聖が当初予見していた半年から1年という減少期間の中でも最悪の……半年ペースであった。
 魔剣使いが使う事を想定し、魔装にはある程度の重金属が使われている。
 だが命力が減少した勇にはその重量は若干負担となっている様だった。



 今の勇にとって僅かにズシリと感じる装備を片手に廊下を歩いていると……突然コール音が鳴り響く。
 その音は工房からも鳴り響き、共鳴するかの様に廊下に何重にも響き渡った。

「な、なんだ!?」

 勇は慌てて空いた片手で仕舞ってあったタブレットを取り出すと、魔装を抱えた手を器用に使いタブレットを開く。
 画面には「画像通話要求:福留晴樹 <共有通話モード>」の文字が映っており、素早く許可のボタンをタッチすると……間もなくして暗転していた画面から福留の顔が映し出された。

「皆さん、聞こえますか?」
「はい、聞こえますよ、福留さん」

 遅れて画面からは勇や他の者達の声がタイムラグを置いて響いてくると、福留がそれを理解し首を縦に振る。
 だがその顔はどこか険しい顔を浮かばせており、ただならぬ状況である事が勇には理解出来ていた。

 画面のサイドにそれぞれの顔を模した可愛らしいアイコンが並び、参加者が概ね居る事を確認した福留がゆっくりと口を開いた。

「これから緊急会議を行います。 直ちに戦闘員の皆さんは会議室に集合願います。 なお、勇くん、茶奈君、心輝君、亜月君、瀬玲君、ジョゾウさんは各々即時出発が出来る様、心の準備を整えてください」

 福留はそう伝えると一方的に通信を閉じ、間も無く各々が持つタブレットが通信終了の文字を映し出した。
 途端、金属の鳴り響く音が聞こえ本部正面ゲートの扉が開いていく……どうやら福留本人が到着した様だ。

 その手際の良さから「流石、福留さんだ」と心に思いつつも勇は直ぐに振り返り、同様に走り出した仲間達と共に2階の会議室へと向かったのだった。


しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

【完結】魔法大戦 〜失われた古代魔法で無双する!〜

加瀬 一葉
ファンタジー
 王立魔法学校。高等部に編入してきた冴えない生徒ラフィト。エリートが集うこの学校で、辺境出身のラフィトは落ちこぼれの劣等生なのだが……。  実は彼は、失われたはずの古代魔法を操る一族の末裔。魔族の脅威が増す時代に、ラフィトは人類を救うことができるのか?  過去と現在が交錯する、魔法ファンタジー。

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

処理中です...