時き継幻想フララジカ

日奈 うさぎ

文字の大きさ
563 / 1,197
第二十一節「器に乗せた想い 甦る巨島 その空に命を貫きて」

~遥か空にて、届かぬ声~

しおりを挟む
 空に大きく広がる大空……眼下に広がる白い雲と青い海……一機の大型旅客機が青と白の中を裂く様に突き進んでいた。

 白と赤で彩られた機体が空気の壁を越えて轟音を鳴り響かせるその中で……青く澄んだ空を見つめる機長と副機長の姿があった。

「全くの異常無し……ここまで澄んだ晴天だと心も落ち着きますね」
「そうだな、だが気だけは抜くなよ? 間違っても寝ぼけて居眠りしようなら……こんな視界が晴れてれば、パパラッチに見つかって撮られてしまうかもしれんからなぁ?」
「彼等の執念は空までですか……アハハ! 了解しております、機長殿」

 操縦桿から手を離し、空を見つめる二人の操縦士……機体は自動操縦に切り替わっており、何の抵抗すら無いそのフライトに物足りなさを感じるくらいの退屈さを見せる。
 乗客達も奇麗な空や雲に最初は目を輝かせる者も居たが……気付けば各々が自分達の世界に入り浸り退屈を紛らわす。
 スチュワーデス達も変わり代わり各々の仕事をこなし、乗客達の要求に応えて機内を歩き回っていた。



 今日も何の問題も無い、安全なフライトだ……誰しもがそう思っていた。



ドォンッ!!



 突然、機体が大きく揺れ、機内の人間達の体が大きく揺さぶられた。
 余りの大きい衝撃に周囲から動揺の声が響き渡り、歩いていたスチュワーデス達もバランスを崩し座席へと倒れこむ。

 機長達もやぶさかでは無かった。

「なんだ、何が起きた!?」
「わかりません!? なんだこれ!? つい今まで晴天だったのに!!」

 そう叫ぶ二人……彼等の眼前に映ったのは、凄まじく吹き荒れる嵐。

 雷や暴風が吹き荒れ、機体が絶え間なく激しく機内を揺らしていた。
 叫び声が響き渡り、酸素吸入器がバタバタと飛び落ち乗客達の頭上でグラグラと振れる。

 完全なるパニックを引き起こしている客室を他所に、機長達は必死に状況を打開するべく自分達の技術をフル動員して対応するが……状況はなお悪化する一方だ。

「メーデー!! メーデー!! こちらNZ91便!! 謎の大型暴風に巻き込まれている!! 誰か応答してくれ!!」
「うおおおおお!!」

 機長が手動操縦に切り替え操縦桿で機体を制御する中、その傍らで副機長が必死にオープンチャンネルを使い救難信号と通信を送る。

 だが一向に返信は返ってこず、二人の焦りが募りに募る。

「衛星通信を使え!! 緊急発信だ!!」
了解ラジャー!!」

 必死に機体制御を行いながら通信を続ける二人。



 だがその途端、彼等の目の前に……異様な光景が浮かんでいた……。



「なんだ……あれは……」



 遥か上空……灰色の嵐が吹き荒れる中、彼等が見た物は……黒く大きな影であった。





 それが二日前、ニュージーランド近海上空にて起きた出来事である。
 それ以降、二日に渡りNZ91便へ対する通信がしきりに行われたが……返事が返ってくる事は無かったという。

 だが最後に衛星を通して送られてきた通信が、ニュージーランド政府を動かす事となる。



 『なんで空に……島が……』――それがNZ91便から送られてきた最後の言葉であった。



しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【1/20本編堂々完結!】自力で帰還した錬金術師の爛れた日常

ちょす氏
ファンタジー
「この先は分からないな」 帰れると言っても、時間まで同じかどうかわからない。 さて。 「とりあえず──妹と家族は救わないと」 あと金持ちになって、ニート三昧だな。 こっちは地球と環境が違いすぎるし。 やりたい事が多いな。 「さ、お別れの時間だ」 これは、異世界で全てを手に入れた男の爛れた日常の物語である。 ※物語に出てくる組織、人物など全てフィクションです。 ※主人公の癖が若干終わっているのは師匠のせいです。 ゆっくり投稿です。

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...