29 / 76
第三章:資本の光は辺境から
第八節:中間決算
しおりを挟む
夜更けの執務室。
机に置かれた分厚い羊皮紙の束には、そっけない題名が記されていた。
《国家価値評価モデル(試案)》
「わ、わたしにこんな高度な会計処理できませんって言ったんですけどぉ……。うぅ、転送網の評価だけは……が、がんばりました……」
ミロが魔導端末を抱きしめたまま、おどおどと報告する。
その隣で、ヴァルドが恭しく頭を下げた。
「加賀谷様のご指示通り、国家を“株式会社”に見立てて六つの観点で整理いたしました」
加賀谷は書類をぱらりとめくり、満足げに頷く。
「ありがとな。――でも今日は、数字そのものより“空気”で語ろう」
椅子に深くもたれ、天井を見上げたまま言葉を続ける。
「国家を株式会社とするなら、いまのミティア公国は“上場予備軍”じゃない。もう市場で測られ始めている」
リィナが眉を上げる。
「たった三年で、そこまで?」
「ああ。もちろんドルとは単純比較できないが、国際的な資産評価と収益予測をベースにした推定値として――」
加賀谷は羊皮紙を指先で弾き、読み上げた。
──────────【推定国家バリュエーション】──────────
◆ 国家評価総額(現在):約八五〇〇億ドル相当
◆ 改革前(3年前):約五〇億ドル
→ 価値上昇は一七〇倍超
◇ 主な構成要素
・国有資産(魔鉱山/転送炉/港湾/研究棟など)……約五三〇〇億ドル
・年間キャッシュフロー(税収/転送網/港湾利益等)……約八〇億ドル
・成長プレミアム(人口流入/知財/教育投資)……約二〇〇〇億ドル
──────────────────────────────────
「……これが事実なら、“かつて買い叩かれた国”は、いまや投資される側ってことだ」
窓外へ目を向けながら、加賀谷は続ける。
「三年前、俺はこの国を帝国に売ろうとした。たった五十億ドルでな」
リィナが小さく笑う。
「それが今では八千億。誰にも買えないけれど、誰もが関わりたがる」
「そう。もう“商品”じゃない――市場そのものだ」
ヴァルドが深く頭を垂れる。
「加賀谷様のご采配の賜物でございます。“値札”を付けられていた国が、ついに“価格を決める側”へ……」
ミロは端末を抱きしめたまま、目を丸くした。
「八、八千億……ゼロが多すぎて、頭がクラクラしますぅ……」
加賀谷は笑い、椅子を押し戻す。
「信じられなくてもいい。動かし続ければ、信じざるを得なくなる」
羊皮紙の次ページには、こう記されていた。
《次章:帝国向け視察団受け入れ準備》
「──第三章はここまでだ」
窓を開けると、夜風が書類をそっとめくった。
自由都市の灯はまだ眠らない。
夜もまた、この国の成長時間だった。
◆あとがき◆
毎日 夜21時に5話ずつ更新予定です!
更新の励みになりますので、
いいね&お気に入り登録していただけると本当にうれしいです!
今後も読みやすく、テンポよく、そして楽しい。
そんな物語を目指して更新していきますので、引き続きよろしくお願いいたします!
机に置かれた分厚い羊皮紙の束には、そっけない題名が記されていた。
《国家価値評価モデル(試案)》
「わ、わたしにこんな高度な会計処理できませんって言ったんですけどぉ……。うぅ、転送網の評価だけは……が、がんばりました……」
ミロが魔導端末を抱きしめたまま、おどおどと報告する。
その隣で、ヴァルドが恭しく頭を下げた。
「加賀谷様のご指示通り、国家を“株式会社”に見立てて六つの観点で整理いたしました」
加賀谷は書類をぱらりとめくり、満足げに頷く。
「ありがとな。――でも今日は、数字そのものより“空気”で語ろう」
椅子に深くもたれ、天井を見上げたまま言葉を続ける。
「国家を株式会社とするなら、いまのミティア公国は“上場予備軍”じゃない。もう市場で測られ始めている」
リィナが眉を上げる。
「たった三年で、そこまで?」
「ああ。もちろんドルとは単純比較できないが、国際的な資産評価と収益予測をベースにした推定値として――」
加賀谷は羊皮紙を指先で弾き、読み上げた。
──────────【推定国家バリュエーション】──────────
◆ 国家評価総額(現在):約八五〇〇億ドル相当
◆ 改革前(3年前):約五〇億ドル
→ 価値上昇は一七〇倍超
◇ 主な構成要素
・国有資産(魔鉱山/転送炉/港湾/研究棟など)……約五三〇〇億ドル
・年間キャッシュフロー(税収/転送網/港湾利益等)……約八〇億ドル
・成長プレミアム(人口流入/知財/教育投資)……約二〇〇〇億ドル
──────────────────────────────────
「……これが事実なら、“かつて買い叩かれた国”は、いまや投資される側ってことだ」
窓外へ目を向けながら、加賀谷は続ける。
「三年前、俺はこの国を帝国に売ろうとした。たった五十億ドルでな」
リィナが小さく笑う。
「それが今では八千億。誰にも買えないけれど、誰もが関わりたがる」
「そう。もう“商品”じゃない――市場そのものだ」
ヴァルドが深く頭を垂れる。
「加賀谷様のご采配の賜物でございます。“値札”を付けられていた国が、ついに“価格を決める側”へ……」
ミロは端末を抱きしめたまま、目を丸くした。
「八、八千億……ゼロが多すぎて、頭がクラクラしますぅ……」
加賀谷は笑い、椅子を押し戻す。
「信じられなくてもいい。動かし続ければ、信じざるを得なくなる」
羊皮紙の次ページには、こう記されていた。
《次章:帝国向け視察団受け入れ準備》
「──第三章はここまでだ」
窓を開けると、夜風が書類をそっとめくった。
自由都市の灯はまだ眠らない。
夜もまた、この国の成長時間だった。
◆あとがき◆
毎日 夜21時に5話ずつ更新予定です!
更新の励みになりますので、
いいね&お気に入り登録していただけると本当にうれしいです!
今後も読みやすく、テンポよく、そして楽しい。
そんな物語を目指して更新していきますので、引き続きよろしくお願いいたします!
24
あなたにおすすめの小説
「お前は無能だ」と追放した勇者パーティ、俺が抜けた3秒後に全滅したらしい
夏見ナイ
ファンタジー
【荷物持ち】のアッシュは、勇者パーティで「無能」と罵られ、ダンジョン攻略の直前に追放されてしまう。だが彼がいなくなった3秒後、勇者パーティは罠と奇襲で一瞬にして全滅した。
彼らは知らなかったのだ。アッシュのスキル【運命肩代わり】が、パーティに降りかかる全ての不運や即死攻撃を、彼の些細なドジに変換して無効化していたことを。
そんなこととは露知らず、念願の自由を手にしたアッシュは辺境の村で穏やかなスローライフを開始。心優しいエルフやドワーフの仲間にも恵まれ、幸せな日々を送る。
しかし、勇者を失った王国に魔族と内通する宰相の陰謀が迫る。大切な居場所を守るため、無能と蔑まれた男は、その規格外の“幸運”で理不尽な運命に立ち向かう!
貴族に無茶苦茶なことを言われたのでやけくそな行動をしたら、戦争賠償として引き抜かれました。
詰んだ
ファンタジー
エルクス王国の魔法剣士で重鎮のキースは、うんざりしていた。
王国とは名ばかりで、元老院の貴族が好き勝手なこと言っている。
そしてついに国力、戦力、人材全てにおいて圧倒的な戦力を持つヴォルクス皇国に、戦争を仕掛けるという暴挙に出た。
勝てるわけのない戦争に、「何とか勝て!」と言われたが、何もできるはずもなく、あっという間に劣勢になった。
日を追うごとに悪くなる戦況に、キースへのあたりがひどくなった。
むしゃくしゃしたキースは、一つの案を思いついた。
その案を実行したことによって、あんなことになるなんて、誰も想像しなかった。
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
散々利用されてから勇者パーティーを追い出された…が、元勇者パーティーは僕の本当の能力を知らない。
アノマロカリス
ファンタジー
僕こと…ディスト・ランゼウスは、経験値を倍増させてパーティーの成長を急成長させるスキルを持っていた。
それにあやかった剣士ディランは、僕と共にパーティーを集めて成長して行き…数々の魔王軍の配下を討伐して行き、なんと勇者の称号を得る事になった。
するとディランは、勇者の称号を得てからというもの…態度が横柄になり、更にはパーティーメンバー達も調子付いて行った。
それからと言うもの、調子付いた勇者ディランとパーティーメンバー達は、レベルの上がらないサポート役の僕を邪険にし始めていき…
遂には、役立たずは不要と言って僕を追い出したのだった。
……とまぁ、ここまでは良くある話。
僕が抜けた勇者ディランとパーティーメンバー達は、その後も活躍し続けていき…
遂には、大魔王ドゥルガディスが収める魔大陸を攻略すると言う話になっていた。
「おやおや…もう魔大陸に上陸すると言う話になったのか、ならば…そろそろ僕の本来のスキルを発動するとしますか!」
それから数日後に、ディランとパーティーメンバー達が魔大陸に侵攻し始めたという話を聞いた。
なので、それと同時に…僕の本来のスキルを発動すると…?
2月11日にHOTランキング男性向けで1位になりました。
皆様お陰です、有り難う御座います。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる