63 / 76
第六章:共栄連合構想──繁栄は交差する
第十五節:貿易王が切り拓く突破口
しおりを挟む
──フィルノにて
「……すみません、今回は見送らせてください」
問屋の男が、硬い表情でそう言った。
続いて、織物商も、金貸しのレイフォードも──どこか言い訳がましく、だが確固たる拒絶の意志を示してきた。
ジル・アルヴァは、それでも笑みを保とうと努めた。けれど、店を出て路地裏に抜ける頃には、その足取りは重くなっていた。
「うーん、失敗……ですよね、これ」
「まあ、そうだな」
加賀谷の声には、とくに責める響きはなかった。それでもジルは、自分の胸に生じた悔しさをごまかせなかった。
「準備したのに。全部、理にかなってたと思ったのに……」
「理屈だけで人は動かない。ってやつだな」
肩を落としたジルに、加賀谷は小さく笑って続けた。
「俺もな……最近はずっと、“理”で押してた気がするよ」
「え?」
「数字、構想、システム、改革。どれも正しい。でもな、誰かの気持ちや思い出を飛ばしてきた気もする。押し切って、奪って、走ってきた。その先に、本当に信頼が積めるかどうか……考えることはあるよ」
静かな夕暮れの風が、ふたりの間を抜けていった。
そしてその夜。
ふたりはフィルノの酒場で、反省会と称して木のコップを傾けていた。
「……やっぱり現地の人、難しいですねぇ」
「この辺りは特に“よそ者”に厳しいからな。外から来て、うまくやって、勝手に去る──ってのに慣れすぎてる」
「はあ……」
ジルが項垂れた、その時。
「ちょっと待って、話は最後まで──え、ウソ、そこでビンタ!?」
隣のテーブルから、派手な声が響いてきた。
見れば、ナンパに失敗したらしい男が、頬を押さえて立ち尽くしている。
加賀谷は、ふとその横顔に目を留め──そして、思わず吹き出した。
「……レオン・グレイブ」
「え?」
「なんでここにいる」
そう言うと、件の男──加賀谷とともに公国の中継貿易を成功させた"貿易王"と呼ばれたレオンが、にやりと笑って振り返った。
「お前こそなんでいる。……って、あれ? そっちの子は?」
「あ、えっと……ジル・アルヴァです。インターンで、いま一緒に商圏再編の仕事を……」
「ふうん。かわいい顔して、胃に穴あきそうな顔してるな。失敗?」
「う……はい」
素直にうなだれたジルに、レオンは急に真顔になる。
「どこで断られた?」
「フィルノの織物商と問屋、あと金貸しの……」
「あー……あそこ、昔、俺が助けたことあってさ」
「えっ?」
「ちょっと待て」
加賀谷が言いかけるより先に、レオンはコップを一気に空け、言った。
「明日の朝、俺も連れてけ。あいつら、俺の顔見りゃ話くらいは聞くさ」
「……すみません、今回は見送らせてください」
問屋の男が、硬い表情でそう言った。
続いて、織物商も、金貸しのレイフォードも──どこか言い訳がましく、だが確固たる拒絶の意志を示してきた。
ジル・アルヴァは、それでも笑みを保とうと努めた。けれど、店を出て路地裏に抜ける頃には、その足取りは重くなっていた。
「うーん、失敗……ですよね、これ」
「まあ、そうだな」
加賀谷の声には、とくに責める響きはなかった。それでもジルは、自分の胸に生じた悔しさをごまかせなかった。
「準備したのに。全部、理にかなってたと思ったのに……」
「理屈だけで人は動かない。ってやつだな」
肩を落としたジルに、加賀谷は小さく笑って続けた。
「俺もな……最近はずっと、“理”で押してた気がするよ」
「え?」
「数字、構想、システム、改革。どれも正しい。でもな、誰かの気持ちや思い出を飛ばしてきた気もする。押し切って、奪って、走ってきた。その先に、本当に信頼が積めるかどうか……考えることはあるよ」
静かな夕暮れの風が、ふたりの間を抜けていった。
そしてその夜。
ふたりはフィルノの酒場で、反省会と称して木のコップを傾けていた。
「……やっぱり現地の人、難しいですねぇ」
「この辺りは特に“よそ者”に厳しいからな。外から来て、うまくやって、勝手に去る──ってのに慣れすぎてる」
「はあ……」
ジルが項垂れた、その時。
「ちょっと待って、話は最後まで──え、ウソ、そこでビンタ!?」
隣のテーブルから、派手な声が響いてきた。
見れば、ナンパに失敗したらしい男が、頬を押さえて立ち尽くしている。
加賀谷は、ふとその横顔に目を留め──そして、思わず吹き出した。
「……レオン・グレイブ」
「え?」
「なんでここにいる」
そう言うと、件の男──加賀谷とともに公国の中継貿易を成功させた"貿易王"と呼ばれたレオンが、にやりと笑って振り返った。
「お前こそなんでいる。……って、あれ? そっちの子は?」
「あ、えっと……ジル・アルヴァです。インターンで、いま一緒に商圏再編の仕事を……」
「ふうん。かわいい顔して、胃に穴あきそうな顔してるな。失敗?」
「う……はい」
素直にうなだれたジルに、レオンは急に真顔になる。
「どこで断られた?」
「フィルノの織物商と問屋、あと金貸しの……」
「あー……あそこ、昔、俺が助けたことあってさ」
「えっ?」
「ちょっと待て」
加賀谷が言いかけるより先に、レオンはコップを一気に空け、言った。
「明日の朝、俺も連れてけ。あいつら、俺の顔見りゃ話くらいは聞くさ」
21
あなたにおすすめの小説
「お前は無能だ」と追放した勇者パーティ、俺が抜けた3秒後に全滅したらしい
夏見ナイ
ファンタジー
【荷物持ち】のアッシュは、勇者パーティで「無能」と罵られ、ダンジョン攻略の直前に追放されてしまう。だが彼がいなくなった3秒後、勇者パーティは罠と奇襲で一瞬にして全滅した。
彼らは知らなかったのだ。アッシュのスキル【運命肩代わり】が、パーティに降りかかる全ての不運や即死攻撃を、彼の些細なドジに変換して無効化していたことを。
そんなこととは露知らず、念願の自由を手にしたアッシュは辺境の村で穏やかなスローライフを開始。心優しいエルフやドワーフの仲間にも恵まれ、幸せな日々を送る。
しかし、勇者を失った王国に魔族と内通する宰相の陰謀が迫る。大切な居場所を守るため、無能と蔑まれた男は、その規格外の“幸運”で理不尽な運命に立ち向かう!
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ
天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。
彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。
「お前はもういらない」
ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。
だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。
――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。
一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。
生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!?
彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。
そして、レインはまだ知らない。
夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、
「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」
「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」
と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。
そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。
理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。
王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー!
HOT男性49位(2025年9月3日0時47分)
→37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
貴族に無茶苦茶なことを言われたのでやけくそな行動をしたら、戦争賠償として引き抜かれました。
詰んだ
ファンタジー
エルクス王国の魔法剣士で重鎮のキースは、うんざりしていた。
王国とは名ばかりで、元老院の貴族が好き勝手なこと言っている。
そしてついに国力、戦力、人材全てにおいて圧倒的な戦力を持つヴォルクス皇国に、戦争を仕掛けるという暴挙に出た。
勝てるわけのない戦争に、「何とか勝て!」と言われたが、何もできるはずもなく、あっという間に劣勢になった。
日を追うごとに悪くなる戦況に、キースへのあたりがひどくなった。
むしゃくしゃしたキースは、一つの案を思いついた。
その案を実行したことによって、あんなことになるなんて、誰も想像しなかった。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
散々利用されてから勇者パーティーを追い出された…が、元勇者パーティーは僕の本当の能力を知らない。
アノマロカリス
ファンタジー
僕こと…ディスト・ランゼウスは、経験値を倍増させてパーティーの成長を急成長させるスキルを持っていた。
それにあやかった剣士ディランは、僕と共にパーティーを集めて成長して行き…数々の魔王軍の配下を討伐して行き、なんと勇者の称号を得る事になった。
するとディランは、勇者の称号を得てからというもの…態度が横柄になり、更にはパーティーメンバー達も調子付いて行った。
それからと言うもの、調子付いた勇者ディランとパーティーメンバー達は、レベルの上がらないサポート役の僕を邪険にし始めていき…
遂には、役立たずは不要と言って僕を追い出したのだった。
……とまぁ、ここまでは良くある話。
僕が抜けた勇者ディランとパーティーメンバー達は、その後も活躍し続けていき…
遂には、大魔王ドゥルガディスが収める魔大陸を攻略すると言う話になっていた。
「おやおや…もう魔大陸に上陸すると言う話になったのか、ならば…そろそろ僕の本来のスキルを発動するとしますか!」
それから数日後に、ディランとパーティーメンバー達が魔大陸に侵攻し始めたという話を聞いた。
なので、それと同時に…僕の本来のスキルを発動すると…?
2月11日にHOTランキング男性向けで1位になりました。
皆様お陰です、有り難う御座います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる