75 / 76
第六章:共栄連合構想──繁栄は交差する
第二十六節:共栄連合は加速していく
しおりを挟む
午後の陽が差し込む、政庁西館の会議室。
加賀谷、リィナ、そしてヴァルド、ミロの四人が、円卓を囲んでいた。
窓の外には、拡張工事の進む開発区と、帆船がひしめく港湾が広がっている。
この短期間で、公国は劇的な変化を遂げた。
ヴェステラの成長、共栄連合構想の発表、国家ファンドの立ち上げ、若者たちの育成。
そして、ついに公開株式制度が、この地に生まれた。
「……あなた、最初は“売ろう”としてたじゃない」
少しからかうようにいたずらっぽくリィナが呟いた。
加賀谷は視線を窓の外に向け、わずかに息を吐く。
「……まさか。今となっては、想像すらできないよ」
その言葉に、リィナは目を細めて微笑む。
「そう。……ちょっと安心した」
加賀谷はゆっくりと背にもたれかかり、天井を見上げながら続けた。
「俺はさ、別に王様じゃない。
偉そうに国家を語れるほどの人間じゃないし、正直、至らないところだらけだ。
あくまで本質は“商人”なんだよ。価値を見て、拾って、育てて、繋ぐ。……その繰り返しだ」
ヴァルドが静かに頷く。
「ですが、その価値の中に“人”があると気づいておられる。だからこそ、我々は動けたのです」
「それも……俺ひとりじゃ無理だった。
ヴァルド、あんたが見出して送り込んでくれた学生たち――あれがなきゃ、育成なんてできなかった。
ミロも、レーネを現場で支えてくれて、本当にありがとう。
リィナ、お前がミュリルを連れてレーナ連邦に交渉行ってくれたから、取引所とのコネクションが生きた。あれはでかい」
加賀谷は一拍おいて、ふと視線を伏せる。
「それと……ここにいないけど、ガロウにも。
あいつがいなきゃ、この国はとうに潰されてた。
制度も技術も人材も、武力がなきゃ守れない。マジで感謝してる」
誰も言葉を挟まなかった。
その空気は静かで、けれど確かにあたたかかった。
加賀谷は再び顔を上げ、二人を見渡す。
「そうして積み重ねてきたこの国を、“売る”なんてさ。
──もう、考えられるわけないだろ」
リィナは短く頷いた。
「……うん。それでいいのよ」
ヴァルドが静かに立ち上がり、深く一礼する。
「この都市が……いえ、この国が、新たな時代を切り拓く先駆けになると、私は信じております。
どうか、これからも共に歩ませてください」
「もちろん。あなたにもまだ、やってもらうことが山ほどありますからね」
リィナの言葉に、加賀谷は肩を竦める。
「ま、逃げてもどうせ仕事回されるしな。だったら前向いてやるしかない」
窓の外には、港に向かう魔導輸送船がひとつ、光の軌跡を描いて進んでいた。
かつて“売却”から始まったこの国は、今や“創出”という名の未来を育てる地となった。
これはまだ、始まりにすぎない。
だが今は確かに、希望がここにある――自分の手で育てた“価値”として。
――第六章 完
加賀谷、リィナ、そしてヴァルド、ミロの四人が、円卓を囲んでいた。
窓の外には、拡張工事の進む開発区と、帆船がひしめく港湾が広がっている。
この短期間で、公国は劇的な変化を遂げた。
ヴェステラの成長、共栄連合構想の発表、国家ファンドの立ち上げ、若者たちの育成。
そして、ついに公開株式制度が、この地に生まれた。
「……あなた、最初は“売ろう”としてたじゃない」
少しからかうようにいたずらっぽくリィナが呟いた。
加賀谷は視線を窓の外に向け、わずかに息を吐く。
「……まさか。今となっては、想像すらできないよ」
その言葉に、リィナは目を細めて微笑む。
「そう。……ちょっと安心した」
加賀谷はゆっくりと背にもたれかかり、天井を見上げながら続けた。
「俺はさ、別に王様じゃない。
偉そうに国家を語れるほどの人間じゃないし、正直、至らないところだらけだ。
あくまで本質は“商人”なんだよ。価値を見て、拾って、育てて、繋ぐ。……その繰り返しだ」
ヴァルドが静かに頷く。
「ですが、その価値の中に“人”があると気づいておられる。だからこそ、我々は動けたのです」
「それも……俺ひとりじゃ無理だった。
ヴァルド、あんたが見出して送り込んでくれた学生たち――あれがなきゃ、育成なんてできなかった。
ミロも、レーネを現場で支えてくれて、本当にありがとう。
リィナ、お前がミュリルを連れてレーナ連邦に交渉行ってくれたから、取引所とのコネクションが生きた。あれはでかい」
加賀谷は一拍おいて、ふと視線を伏せる。
「それと……ここにいないけど、ガロウにも。
あいつがいなきゃ、この国はとうに潰されてた。
制度も技術も人材も、武力がなきゃ守れない。マジで感謝してる」
誰も言葉を挟まなかった。
その空気は静かで、けれど確かにあたたかかった。
加賀谷は再び顔を上げ、二人を見渡す。
「そうして積み重ねてきたこの国を、“売る”なんてさ。
──もう、考えられるわけないだろ」
リィナは短く頷いた。
「……うん。それでいいのよ」
ヴァルドが静かに立ち上がり、深く一礼する。
「この都市が……いえ、この国が、新たな時代を切り拓く先駆けになると、私は信じております。
どうか、これからも共に歩ませてください」
「もちろん。あなたにもまだ、やってもらうことが山ほどありますからね」
リィナの言葉に、加賀谷は肩を竦める。
「ま、逃げてもどうせ仕事回されるしな。だったら前向いてやるしかない」
窓の外には、港に向かう魔導輸送船がひとつ、光の軌跡を描いて進んでいた。
かつて“売却”から始まったこの国は、今や“創出”という名の未来を育てる地となった。
これはまだ、始まりにすぎない。
だが今は確かに、希望がここにある――自分の手で育てた“価値”として。
――第六章 完
11
あなたにおすすめの小説
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
「お前は無能だ」と追放した勇者パーティ、俺が抜けた3秒後に全滅したらしい
夏見ナイ
ファンタジー
【荷物持ち】のアッシュは、勇者パーティで「無能」と罵られ、ダンジョン攻略の直前に追放されてしまう。だが彼がいなくなった3秒後、勇者パーティは罠と奇襲で一瞬にして全滅した。
彼らは知らなかったのだ。アッシュのスキル【運命肩代わり】が、パーティに降りかかる全ての不運や即死攻撃を、彼の些細なドジに変換して無効化していたことを。
そんなこととは露知らず、念願の自由を手にしたアッシュは辺境の村で穏やかなスローライフを開始。心優しいエルフやドワーフの仲間にも恵まれ、幸せな日々を送る。
しかし、勇者を失った王国に魔族と内通する宰相の陰謀が迫る。大切な居場所を守るため、無能と蔑まれた男は、その規格外の“幸運”で理不尽な運命に立ち向かう!
貴族に無茶苦茶なことを言われたのでやけくそな行動をしたら、戦争賠償として引き抜かれました。
詰んだ
ファンタジー
エルクス王国の魔法剣士で重鎮のキースは、うんざりしていた。
王国とは名ばかりで、元老院の貴族が好き勝手なこと言っている。
そしてついに国力、戦力、人材全てにおいて圧倒的な戦力を持つヴォルクス皇国に、戦争を仕掛けるという暴挙に出た。
勝てるわけのない戦争に、「何とか勝て!」と言われたが、何もできるはずもなく、あっという間に劣勢になった。
日を追うごとに悪くなる戦況に、キースへのあたりがひどくなった。
むしゃくしゃしたキースは、一つの案を思いついた。
その案を実行したことによって、あんなことになるなんて、誰も想像しなかった。
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
散々利用されてから勇者パーティーを追い出された…が、元勇者パーティーは僕の本当の能力を知らない。
アノマロカリス
ファンタジー
僕こと…ディスト・ランゼウスは、経験値を倍増させてパーティーの成長を急成長させるスキルを持っていた。
それにあやかった剣士ディランは、僕と共にパーティーを集めて成長して行き…数々の魔王軍の配下を討伐して行き、なんと勇者の称号を得る事になった。
するとディランは、勇者の称号を得てからというもの…態度が横柄になり、更にはパーティーメンバー達も調子付いて行った。
それからと言うもの、調子付いた勇者ディランとパーティーメンバー達は、レベルの上がらないサポート役の僕を邪険にし始めていき…
遂には、役立たずは不要と言って僕を追い出したのだった。
……とまぁ、ここまでは良くある話。
僕が抜けた勇者ディランとパーティーメンバー達は、その後も活躍し続けていき…
遂には、大魔王ドゥルガディスが収める魔大陸を攻略すると言う話になっていた。
「おやおや…もう魔大陸に上陸すると言う話になったのか、ならば…そろそろ僕の本来のスキルを発動するとしますか!」
それから数日後に、ディランとパーティーメンバー達が魔大陸に侵攻し始めたという話を聞いた。
なので、それと同時に…僕の本来のスキルを発動すると…?
2月11日にHOTランキング男性向けで1位になりました。
皆様お陰です、有り難う御座います。
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる