2 / 11
2、追放
しおりを挟む
セリアの生家はヤルス伯爵家と呼ばれている。
呼び名の通り、爵位持ちの貴族だ。
ただ、内情は呼び名ほどに華やかとはいかなかった。
かなりの借金があったのだ。
祖父の代に農園への投資に失敗した結果だということだったが、その返済にヤルス伯爵家は非常に苦労させられていた。
そこに、セリアが部屋にこもり、家を留守にしてきた理由があった。
商売に専念していたのだ。
主な事業は投資だ。
祖父の後追いにはなったが、彼のように知人の誘いのままに財布を緩めるような真似はしなかった。
各地各所に人脈を作り、連絡を密にすれば、将来の需要を冷静に測っていく。
その上で、有望であると思われる開拓先、商家などがあれば、自身で足を運んで確認し、投資の根拠を得る。
よって、必要があったのだ。
何十何百の手紙を相手する必要があれば、部屋にこもられなければなかった。
現地を確認する必要があれば、屋敷を空けざるを得なかった。
決して、非難を受けるような筋合いは無かった。
無事に借金の返済を成し遂げたのであればなおさらだ。
今日のパーティーはそのためのものだったのだ。
もちろん、借金返済を成し遂げたセリアはその主役であるはずだった。
非難よりもむしろ、称賛の声があってしかるべきだった。
だが、現実はこれだ
セリアは両親に向けて問いを叫ぶ。
「な、なんでですか!? 私がこの家のために何をしてきたのかって、分かってくれていたはずですよね!?」
秘密の行いでは無ければ、当然そのはずだ。
理解して応援してくれていたはずだった。
しかし、両親の顔に浮かんだのはセリアへの呆れの表情だった。
母親が侮蔑も露わに眉間にシワを寄せる。
「この子はまったく……今さら嘘をつくのはおよしなさい。全てヨカが話してくれました。今までのことは、全てあの子の行いだったのでしょう?」
セリアが疑問の声を挟む間も無かった。
父親が母親に次いで侮蔑の声を上げる。
「そして、その間のお前だな。外に男を作って遊び呆ければ、家ではその疲労に惰眠をむさぼっていたと。まったく、とんだ孝行娘だ」
身に覚えなどまったく無かった。
(よ、ヨカ? ヨカが話したって……)
セリアはヨカを見つめた。
彼女はひそかにだった。
ひそかにだが、確かにニヤリと笑みを浮かべた。
察することは出来た。
現実として、彼女はそんな虚言を両親に吹き込んだのだろう。
「……よ、ヨカ? なんで? なんでこんな?」
呆然と尋ねかける。
すると、ヨカはにこりとして、セリアの婚約者であるはずのクワイフの胸に顔を寄せた。
何ともなしに理解出来た。
日頃から、彼女はセリアの婚約者を羨んでいた。
血筋も容姿も良ければと口にしていた。
彼を手に入れるための策略に違いなかった。
そのために、セリアの功績を我が物にし、セリアを不当に貶めてきたのだ。
「……セリア」
父親の呼びかけだったが、そこには今までに聞いたことの無い酷薄な響きがあった。
セリアは思わずびくりと体を震わす。
「お、お父様……?」
「お前にそう呼ばれるのも今日限りだ。出ていけ。貴様のような不出来な娘を、当家の人間と認めるわけにはいかん」
愛した家族だった。
だからこそ、彼らのために1日の休みもなく働き続けた。
その家族に今、セリアは侮蔑の目つきで見つめられている。
セリアは唖然と彼らを見返した。
「……そ、そんな。出ていけなんて、そんな……なんで……」
誰か嘘だと言ってくれるのではないか?
期待した。
しかし、誰も何も言わない。
出ていけと無言の圧力ばかりがそこにはあった。
呼び名の通り、爵位持ちの貴族だ。
ただ、内情は呼び名ほどに華やかとはいかなかった。
かなりの借金があったのだ。
祖父の代に農園への投資に失敗した結果だということだったが、その返済にヤルス伯爵家は非常に苦労させられていた。
そこに、セリアが部屋にこもり、家を留守にしてきた理由があった。
商売に専念していたのだ。
主な事業は投資だ。
祖父の後追いにはなったが、彼のように知人の誘いのままに財布を緩めるような真似はしなかった。
各地各所に人脈を作り、連絡を密にすれば、将来の需要を冷静に測っていく。
その上で、有望であると思われる開拓先、商家などがあれば、自身で足を運んで確認し、投資の根拠を得る。
よって、必要があったのだ。
何十何百の手紙を相手する必要があれば、部屋にこもられなければなかった。
現地を確認する必要があれば、屋敷を空けざるを得なかった。
決して、非難を受けるような筋合いは無かった。
無事に借金の返済を成し遂げたのであればなおさらだ。
今日のパーティーはそのためのものだったのだ。
もちろん、借金返済を成し遂げたセリアはその主役であるはずだった。
非難よりもむしろ、称賛の声があってしかるべきだった。
だが、現実はこれだ
セリアは両親に向けて問いを叫ぶ。
「な、なんでですか!? 私がこの家のために何をしてきたのかって、分かってくれていたはずですよね!?」
秘密の行いでは無ければ、当然そのはずだ。
理解して応援してくれていたはずだった。
しかし、両親の顔に浮かんだのはセリアへの呆れの表情だった。
母親が侮蔑も露わに眉間にシワを寄せる。
「この子はまったく……今さら嘘をつくのはおよしなさい。全てヨカが話してくれました。今までのことは、全てあの子の行いだったのでしょう?」
セリアが疑問の声を挟む間も無かった。
父親が母親に次いで侮蔑の声を上げる。
「そして、その間のお前だな。外に男を作って遊び呆ければ、家ではその疲労に惰眠をむさぼっていたと。まったく、とんだ孝行娘だ」
身に覚えなどまったく無かった。
(よ、ヨカ? ヨカが話したって……)
セリアはヨカを見つめた。
彼女はひそかにだった。
ひそかにだが、確かにニヤリと笑みを浮かべた。
察することは出来た。
現実として、彼女はそんな虚言を両親に吹き込んだのだろう。
「……よ、ヨカ? なんで? なんでこんな?」
呆然と尋ねかける。
すると、ヨカはにこりとして、セリアの婚約者であるはずのクワイフの胸に顔を寄せた。
何ともなしに理解出来た。
日頃から、彼女はセリアの婚約者を羨んでいた。
血筋も容姿も良ければと口にしていた。
彼を手に入れるための策略に違いなかった。
そのために、セリアの功績を我が物にし、セリアを不当に貶めてきたのだ。
「……セリア」
父親の呼びかけだったが、そこには今までに聞いたことの無い酷薄な響きがあった。
セリアは思わずびくりと体を震わす。
「お、お父様……?」
「お前にそう呼ばれるのも今日限りだ。出ていけ。貴様のような不出来な娘を、当家の人間と認めるわけにはいかん」
愛した家族だった。
だからこそ、彼らのために1日の休みもなく働き続けた。
その家族に今、セリアは侮蔑の目つきで見つめられている。
セリアは唖然と彼らを見返した。
「……そ、そんな。出ていけなんて、そんな……なんで……」
誰か嘘だと言ってくれるのではないか?
期待した。
しかし、誰も何も言わない。
出ていけと無言の圧力ばかりがそこにはあった。
356
あなたにおすすめの小説
【完結済み】妹の婚約者に、恋をした
鈴蘭
恋愛
妹を溺愛する母親と、仕事ばかりしている父親。
刺繍やレース編みが好きなマーガレットは、両親にプレゼントしようとするが、何時も妹に横取りされてしまう。
可愛がって貰えず、愛情に飢えていたマーガレットは、気遣ってくれた妹の婚約者に恋をしてしまった。
無事完結しました。
「お姉様の味方なんて誰もいないのよ」とよく言われますが、どうやらそうでもなさそうです
越智屋ノマ
恋愛
王太子ダンテに盛大な誕生日の席で婚約破棄を宣言された侯爵令嬢イヴ。
彼の隣には、妹ラーラの姿――。
幼い頃から家族に疎まれながらも、王太子妃となるべく努力してきたイヴにとって、それは想定外の屈辱だった。
だがその瞬間、国王クラディウスが立ち上がる。
「ならば仕方あるまい。婚約破棄を認めよう。そして――」
その一声が、ダンテのすべてをひっくり返す。
※ふんわり設定。ハッピーエンドです。
捨てた私をもう一度拾うおつもりですか?
ミィタソ
恋愛
「みんな聞いてくれ! 今日をもって、エルザ・ローグアシュタルとの婚約を破棄する! そして、その妹——アイリス・ローグアシュタルと正式に婚約することを決めた! 今日という祝いの日に、みんなに伝えることができ、嬉しく思う……」
ローグアシュタル公爵家の長女――エルザは、マクーン・ザルカンド王子の誕生日記念パーティーで婚約破棄を言い渡される。
それどころか、王子の横には舌を出して笑うエルザの妹――アイリスの姿が。
傷心を癒すため、父親の勧めで隣国へ行くのだが……
【完結】何でも欲しがる義妹が『ずるい』とうるさいので魔法で言えないようにしてみた
堀 和三盆
恋愛
「ずるいですわ、ずるいですわ、お義姉様ばかり! 私も伯爵家の人間になったのだから、そんな素敵な髪留めが欲しいです!」
ドレス、靴、カバン等の値の張る物から、婚約者からの贈り物まで。義妹は気に入ったものがあれば、何でも『ずるい、ずるい』と言って私から奪っていく。
どうしてこうなったかと言えば……まあ、貴族の中では珍しくもない。後妻の連れ子とのアレコレだ。お父様に相談しても「いいから『ずるい』と言われたら義妹に譲ってあげなさい」と、話にならない。仕方なく義妹の欲しがるものは渡しているが、いい加減それも面倒になってきた。
――何でも欲しがる義妹が『ずるい』とうるさいので。
ここは手っ取り早く魔法使いに頼んで。
義妹が『ずるい』と言えないように魔法をかけてもらうことにした。
実家に帰ったら平民の子供に家を乗っ取られていた!両親も言いなりで欲しい物を何でも買い与える。
佐藤 美奈
恋愛
リディア・ウィナードは上品で気高い公爵令嬢。現在16歳で学園で寮生活している。
そんな中、学園が夏休みに入り、久しぶりに生まれ育った故郷に帰ることに。リディアは尊敬する大好きな両親に会うのを楽しみにしていた。
しかし実家に帰ると家の様子がおかしい……?いつものように使用人達の出迎えがない。家に入ると正面に飾ってあったはずの大切な家族の肖像画がなくなっている。
不安な顔でリビングに入って行くと、知らない少女が高級なお菓子を行儀悪くガツガツ食べていた。
「私が好んで食べているスイーツをあんなに下品に……」
リディアの大好物でよく召し上がっているケーキにシュークリームにチョコレート。
幼く見えるので、おそらく年齢はリディアよりも少し年下だろう。驚いて思わず目を丸くしているとメイドに名前を呼ばれる。
平民に好き放題に家を引っかき回されて、遂にはリディアが変わり果てた姿で花と散る。
「優秀な妹の相手は疲れるので平凡な姉で妥協したい」なんて言われて、受け入れると思っているんですか?
木山楽斗
恋愛
子爵令嬢であるラルーナは、平凡な令嬢であった。
ただ彼女には一つだけ普通ではない点がある。それは優秀な妹の存在だ。
魔法学園においても入学以来首位を独占している妹は、多くの貴族令息から注目されており、学園内で何度も求婚されていた。
そんな妹が求婚を受け入れたという噂を聞いて、ラルーナは驚いた。
ずっと求婚され続けても断っていた妹を射止めたのか誰なのか、彼女は気になった。そこでラルーナは、自分にも無関係ではないため、その婚約者の元を訪ねてみることにした。
妹の婚約者だと噂される人物と顔を合わせたラルーナは、ひどく不快な気持ちになった。
侯爵家の令息であるその男は、嫌味な人であったからだ。そんな人を婚約者に選ぶなんて信じられない。ラルーナはそう思っていた。
しかし彼女は、すぐに知ることとなった。自分の周りで、不可解なことが起きているということを。
婚約破棄されたので、隠していた力を解放します
ミィタソ
恋愛
「――よって、私は君との婚約を破棄する」
豪華なシャンデリアが輝く舞踏会の会場。その中心で、王太子アレクシスが高らかに宣言した。
周囲の貴族たちは一斉にどよめき、私の顔を覗き込んでくる。興味津々な顔、驚きを隠せない顔、そして――あからさまに嘲笑する顔。
私は、この状況をただ静かに見つめていた。
「……そうですか」
あまりにも予想通りすぎて、拍子抜けするくらいだ。
婚約破棄、大いに結構。
慰謝料でも請求してやりますか。
私には隠された力がある。
これからは自由に生きるとしよう。
精霊の愛し子が濡れ衣を着せられ、婚約破棄された結果
あーもんど
恋愛
「アリス!私は真実の愛に目覚めたんだ!君との婚約を白紙に戻して欲しい!」
ある日の朝、突然家に押し掛けてきた婚約者───ノア・アレクサンダー公爵令息に婚約解消を申し込まれたアリス・ベネット伯爵令嬢。
婚約解消に同意したアリスだったが、ノアに『解消理由をそちらに非があるように偽装して欲しい』と頼まれる。
当然ながら、アリスはそれを拒否。
他に女を作って、婚約解消を申し込まれただけでも屈辱なのに、そのうえ解消理由を偽装するなど有り得ない。
『そこをなんとか······』と食い下がるノアをアリスは叱咤し、屋敷から追い出した。
その数日後、アカデミーの卒業パーティーへ出席したアリスはノアと再会する。
彼の隣には想い人と思われる女性の姿が·····。
『まだ正式に婚約解消した訳でもないのに、他の女とパーティーに出席するだなんて·····』と呆れ返るアリスに、ノアは大声で叫んだ。
「アリス・ベネット伯爵令嬢!君との婚約を破棄させてもらう!婚約者が居ながら、他の男と寝た君とは結婚出来ない!」
濡れ衣を着せられたアリスはノアを冷めた目で見つめる。
······もう我慢の限界です。この男にはほとほと愛想が尽きました。
復讐を誓ったアリスは────精霊王の名を呼んだ。
※本作を読んでご気分を害される可能性がありますので、閲覧注意です(詳しくは感想欄の方をご参照してください)
※息抜き作品です。クオリティはそこまで高くありません。
※本作のざまぁは物理です。社会的制裁などは特にありません。
※hotランキング一位ありがとうございます(2020/12/01)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる