身代りの花嫁は25歳年上の海軍士官に溺愛される

絵麻

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身代りの花嫁は25歳年上の海軍士官に溺愛される(また、25歳差)

一話『先生と生徒』

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 杉崎花。

 生徒達のリストを開くと、現住所と育った実家の住所が違うことが分かる。

「あの田城先生」
 透匡は海陽女学院の教員だったシスターに声をかける。
「これは、工藤先生。何でしょうか」
 優しい慈愛に満ちた笑顔は、誰かに似ている。
「あの、杉崎さんの住所なんですが」
「ああ、彼女はですね」
 シスターは悲しげに目を伏せた。
「両親がいないのです。幼い日に事故で亡くして、以降は伯母夫婦に引き取られたのですが。絵に書いた虐待を」
「え」
 言葉を失くす。
「食事も満足にもらえない、服も・・・見かねて近所の方が通報して。その後は我がカトリックの幼稚舎に入園して、猛勉強で学費免除に」
「・・・」
 前世で継母に愛されなかった花、来世では幸せでいて欲しいと願ったのに。

(・・・また、君は苦しい日々を過ごしたんだな)

 胸が痛む。
 あの小さく華奢な身体に、深い傷を抱えた少女。来世では自分に会うことなく、相応しい年頃の若者と出会って欲しいと願ったのに。また、自分の目の中に映り込んでしまった。

(義孝さん。工藤先生は、義孝さんの生まれ変わりだ。顔とか違うけど、私にはわかる。先生は義孝さんだ)

 再会出来たのは嬉しいが、今は先生と生徒だ。必要以上に親しくなるのは、透匡にはよくない。
 だが、花は学級委員に選ばれてしまった。

「女子は杉崎さんに決まりか」
「・・・えとっ」
「宜しく、杉崎さん」
 男子の学級委員・里中美弦が笑顔を浮かべた。
「よ、よろしく」
 花が笑顔を浮かべた。

 学級委員は色々と担任と接点が多い、配布物に教室の戸締まり。
 その他諸々で、担任を手伝う。

「ね、杉崎さんは恋人とかいるの?」
 美弦に訊ねられ、花は首を振る。修道院で育ち、女子校生活。
 女の園で生きてきた花に、男性と触れ合う機会がある筈もない。
「私、ずっと女子ばかりの学院にいたから、こんな風に男の子と話したり作業したのは初めて」
「なるほど。なら、大丈夫かな」
「え?」
 花が目をぱちくりする。
 何が「大丈夫」なのか、この時の花には見当もつかなかった。

「先生、終わりました」
 印刷物を抱えた花と美弦が、職員室に戻る。
「ありがとう、お疲れ様です」
「はい」
 花は透匡を見るたび、胸がドキドキしていた。
「さて、帰ろうか」
「は、はい」
 花が頷く。
「気をつけて帰ってください」
 透匡の言葉に、二人は会釈した。

(・・・そうだ、それでいい。私と関わらず、相応の相手と付き合って・・・幸せに)
 透匡の思惑など、つゆ知らず。
 花はどうしたら、問題なく透匡と近づけるかを思案していた。
(また、二十五歳も違うけど。年なんて、関係ないもん。私、先生が好き。他の人なんて、やっぱり嫌だもん)

 美沙と佳代には、出会った瞬間に仲良くなれると直感した。
「ね、どこの小学?」
「生まれは!?」
 涙が出そうなほどに、二人と馬が合う。

(先生はどう考えてるか分かんないけど、私・・・先生が好き)

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