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山登りは過酷①
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「となれば、近くにはあるけど常人にはたどり着けない場所ってのが、一番わかりやすいよな……っと」
茂みから襲い掛かってきた角が生えた熊を剣で一刀両断しながら、一人思想に耽る。
「妹が考えるご都合主義」を想定して、ためしに【解体】と唱えてみたら、何てことでしょう。グロテスクな熊の死体はあっという間に、血のシミ一つない美しい毛皮に。このまま店に出しても良いくらいの匠の一品へと変化しました。回収して、亜空間に収納しておいて、そのうち売っぱらって領政チートに役立てることにしましょう。
「あいつ大概ゲーム脳だから、絶対できると思った……ただ自分で解体するのと違ってドロップ品を指定できないのは難点っちゃ難点か」
まあどうしても欲しい素材の時だけ、自分でやればいいだろう。獲物の解体も、辺境伯嫡男の教養の一つなのかきっちり叩き込まれてる。いちいち解体してちゃキリがない時だけ、魔法で省略するとしよう。
「妹にとってのご都合主義」は残念ながら「俺にとってのご都合主義」は違うらしく、女神のチートで思い出せる記憶を超えた範囲になると、全てが都合よくいくわけではない。【探索】と唱えてみても何も起こらないし、【転移】も今まで行ったことがない場所には使えないようだ。
だから、俺の推測が必ずしも正しいとは限らないのではあるが。
「だが、妹ならそういう都合のいい作物は、絶対あの山の頂上に生やすはず……」
樹海のような森を抜けると、急斜面の崖が現れる。
常人ではとても登れないようなその険しい崖は、常に山頂が雲に覆われた滅茶苦茶高くてどでかい山の側面。
横長な大陸を縦断する巨大なネーバ山は、リシス王国とセネーバの国境だ。
麓の部分は、360°全てが急勾配の崖。中腹の部分は凶暴な魔物が跋扈し、さらにその上は常に吹雪が吹き荒れているこの山は、牙を剥いた獣人たちの侵攻から逃げる人間にとっては非常に都合がいい自然の要塞。雲の上の頂上付近には神獣が住むと言われていて、獣人たちにとって聖なる土地扱いされているのも都合が良かった。
当時セネーバの土地に住んでいたリシス王国の民は、優秀な魔術師の転移魔法と船を駆使して山越えに成功。土地が痩せているが故に、神聖国の侵攻もなかった山の反対側の領土を必死に開拓し、王都を移した。
もしこの山がなかったら、とっくにリシス王国はセネーバに併合され、かつて獣人がそうであったようにリシス王国の民は奴隷化させられていただろう。……もっとも妹の小説の時点でリシス王国が滅ぼされている可能性が高いことを考えれば、遅かれ早かれかもしれないが。
「よっし……行くか」
常人ならば登れないような崖でも、チートスキル持ちな俺には問題ない。
重力魔法で限度ぎりぎりまで体重を軽くして、身体強化で脚力の強化。あとは風魔法の後押しがあれば、どんな崖でも簡単に駆け上がれる。
「……うん。体感的には、魔力の消費量も問題なし。さて、どんどん行くぞ」
頂上付近の雪山地帯で難儀する可能性を考えると、できれば今日中には雲の上にあるという頂上に行ってしまいたい。
崖の上には木がうっそうと生い茂っていて、当然人間が上るのに都合が良いような道なんかない。身体強化と風魔法を常時発動した状態で、剣で邪魔な木を薙ぎ払いながら獣道をひたすら登っていく。
「……と、ここで魔物が登場すると」
羽が生えたり、毒を駆使したりと、樹海よりも難易度が上がった魔物を片手間の呪文で倒しながら、足を進める。いちいち殺して解体する時間も惜しいので、取りあえず逃げるか戦闘不能になってくれればそれでいい。
幸い現れる魔物はそこそこ知能が高いのか、俺が片手間で凶暴な魔物を殺せるくらい力があるのがわかると、一切襲ってくることはなくなった。まあこの辺りは食料となる植物も豊富にあるようだし、魔物も飢えてはいないのだろう。雪山エリアの魔物はそうはいかない可能性が高い。
「ふう……ちょっと休憩」
近くにあった木を倒して切り株に腰を掛けると、亜空間からサンドイッチとコーヒーを取り出す。せっかくの今世初めてのアウトドアなのだから、本当ならゆっくり調理もしたいところではあるけど、それは山頂についてからのお楽しみだ。食材も調理器具も、出発前にあらかた揃えて収納してあるので、現地調達の食材も併せて何が作れるか今からわくわくしている。
茂みから襲い掛かってきた角が生えた熊を剣で一刀両断しながら、一人思想に耽る。
「妹が考えるご都合主義」を想定して、ためしに【解体】と唱えてみたら、何てことでしょう。グロテスクな熊の死体はあっという間に、血のシミ一つない美しい毛皮に。このまま店に出しても良いくらいの匠の一品へと変化しました。回収して、亜空間に収納しておいて、そのうち売っぱらって領政チートに役立てることにしましょう。
「あいつ大概ゲーム脳だから、絶対できると思った……ただ自分で解体するのと違ってドロップ品を指定できないのは難点っちゃ難点か」
まあどうしても欲しい素材の時だけ、自分でやればいいだろう。獲物の解体も、辺境伯嫡男の教養の一つなのかきっちり叩き込まれてる。いちいち解体してちゃキリがない時だけ、魔法で省略するとしよう。
「妹にとってのご都合主義」は残念ながら「俺にとってのご都合主義」は違うらしく、女神のチートで思い出せる記憶を超えた範囲になると、全てが都合よくいくわけではない。【探索】と唱えてみても何も起こらないし、【転移】も今まで行ったことがない場所には使えないようだ。
だから、俺の推測が必ずしも正しいとは限らないのではあるが。
「だが、妹ならそういう都合のいい作物は、絶対あの山の頂上に生やすはず……」
樹海のような森を抜けると、急斜面の崖が現れる。
常人ではとても登れないようなその険しい崖は、常に山頂が雲に覆われた滅茶苦茶高くてどでかい山の側面。
横長な大陸を縦断する巨大なネーバ山は、リシス王国とセネーバの国境だ。
麓の部分は、360°全てが急勾配の崖。中腹の部分は凶暴な魔物が跋扈し、さらにその上は常に吹雪が吹き荒れているこの山は、牙を剥いた獣人たちの侵攻から逃げる人間にとっては非常に都合がいい自然の要塞。雲の上の頂上付近には神獣が住むと言われていて、獣人たちにとって聖なる土地扱いされているのも都合が良かった。
当時セネーバの土地に住んでいたリシス王国の民は、優秀な魔術師の転移魔法と船を駆使して山越えに成功。土地が痩せているが故に、神聖国の侵攻もなかった山の反対側の領土を必死に開拓し、王都を移した。
もしこの山がなかったら、とっくにリシス王国はセネーバに併合され、かつて獣人がそうであったようにリシス王国の民は奴隷化させられていただろう。……もっとも妹の小説の時点でリシス王国が滅ぼされている可能性が高いことを考えれば、遅かれ早かれかもしれないが。
「よっし……行くか」
常人ならば登れないような崖でも、チートスキル持ちな俺には問題ない。
重力魔法で限度ぎりぎりまで体重を軽くして、身体強化で脚力の強化。あとは風魔法の後押しがあれば、どんな崖でも簡単に駆け上がれる。
「……うん。体感的には、魔力の消費量も問題なし。さて、どんどん行くぞ」
頂上付近の雪山地帯で難儀する可能性を考えると、できれば今日中には雲の上にあるという頂上に行ってしまいたい。
崖の上には木がうっそうと生い茂っていて、当然人間が上るのに都合が良いような道なんかない。身体強化と風魔法を常時発動した状態で、剣で邪魔な木を薙ぎ払いながら獣道をひたすら登っていく。
「……と、ここで魔物が登場すると」
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幸い現れる魔物はそこそこ知能が高いのか、俺が片手間で凶暴な魔物を殺せるくらい力があるのがわかると、一切襲ってくることはなくなった。まあこの辺りは食料となる植物も豊富にあるようだし、魔物も飢えてはいないのだろう。雪山エリアの魔物はそうはいかない可能性が高い。
「ふう……ちょっと休憩」
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