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農業改革
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「……ふう。いい空気だ。これぞまさに、マイナスイオン……」
まあ、魔法が普通のこの世界に、イオンが存在するかなんて知らねえけども。
衝撃の前世を思い出してから、三日。
俺は単身で森に来ていた。
「いや、まさか『一人で森で修行したい』って言って、それが通ってしまうとは……」
何度も言うが、俺はまだ八歳。そして、王家の血も混ざったネルドゥース辺境伯家の嫡男。
本来だったら、ちょっとした外出ですら護衛がいるくらいの立場である。いくらチート持ちとはいえ、ふつう魔物がうじゃうじゃいる森に、一人で籠る許可なんか与えるかあ? と常識人な俺は思うけど、それが通じないくらい重すぎる大人たちの俺への信頼よ。
「特に剣と魔法のW師匠がノリノリだったな……『俺は五歳で山籠もりしたから、遅すぎるくらいだな!』『私は六歳だったな』ってなんだよ……てか、いつか俺があのじじい共を超える未来が来るとは思えねぇんだけど」
二人とも七十そこそこなはずなのに、化け物じみたじじい共だ。
剣と魔法を俺なりに極めたとしても、どっちかだけでは師匠どもに勝てる未来が思い浮かべない。……だからこそ、俺は両方のチート持ちなのかもだが。併用して対抗しろってことだろ。要は。
てかさ、あの二人なんでうちの領なんかにいるのか、とっても疑問。あんだけ才能あったら、普通王城で囲いこまれねぇ? うちの領地はわりと王都から独立した権限持ってるし、軍事費も国税から支払われているけど、王都周辺以上に土地が痩せているから割と貧乏よ? 王家から派遣された国境警備兵以外にも、辺境伯直属の兵士も養わないといけないからどうしてもそっちに予算取られるし。魔石が採掘できる鉱山があるとはいえ、それだって取り過ぎたら枯渇するから、収入は常に横ばいな状態。
大した給金支払われねぇうえに、王都と違って娯楽もない辺境なのに、よくこんな所にいるよ。本当。
「……まあ、その貧しい懐事情を何とかする為に、俺はここに来たんだけど」
あれからじっくり考えたわけだが、結局のところ獣人との戦争を引き起こすかもしれない最大の要因は、貧困だ。
食えないから、豊かな土地を持つ隣国を妬み、それを正当化する為宗教を持ち出す。もしくは、貧困から目を反らすために、宗教や獣人ヘイトに縋る。……それが一番なんだと思う。
第一次世界大戦から多額の賠償金を負わされたドイツ国民が、貧困から金持ちであるユダヤ人ヘイトに走り、その根拠にキリストがユダヤの王に殺された話を持ってきて虐殺を正当化したのと構図は一緒だな。こういう場合いくら「差別は良くない!」と叫んでも通じない。だって差別をやめたところで、貧困は解決しないから。
つまり、俺が今一番すべきことは、この国の食糧事情を解決することだ。そして、俺は自分がそれをできないとは思わない。
「あいつは確か『領政チートをする為には、ある程度のご都合主義は必要』って言ってたからな。『主人公が必死に考えてチートを駆使すれば、それだけであっさり国単位が救われてしまうくらいのご都合主義がないと話は盛り上がらない』って」
『「地球で思いつかれた知識なら、異世界でも先人が思いついてしかるべき」って突っ込まれることを想定するなら、逆に「なぜその異世界では先人が思いつかなかったのか」理由づけすればいいの! 領政チートの結果あり気で、後付けでそれが今までできなかった理由を考えるの!』
『……なるほど。一理ある』
『というわけで、お兄! 土地が貧しい場所で、食糧事情を大幅に解決できるような案を、ネットで検索して私に提案してください! 中世ヨーロッパくらいの設備でも何とかできるような案を!』
『そこは俺に丸投げなのかよ……』
結局その後妹は案を出させるだけ出させて、『……うまく小説に組み込む自信なくなったからやっぱいーかな。てか、私正直近親相姦エロ書きたいだけで、チート萌そこまでなかったわ』とかふざけたことを言ってたわけだが。
一度でも知識があいつの頭に刻まれたってことは、この世界でもあの時の案が通じる可能性は高い。
「……確かあの時最有力候補になったのは、【ノーフォーク農法】もしくは【ジャガイモやそばのように痩せた土地でも育ちやすい植物の新発見】の二つ……」
高校の歴史で習った「農業革命」をネットでググって、【ノーフォーク農法】を提案したのが、前世の俺。連作の結果土地が痩せるのを防ぐため、間にマメ科であるクローバーを挟んで土壌を改良したうえで、クローバーは牧草として消費するんだとか。何故土壌を改良してくれるかも書いてあった気がするけど、文系の俺にはわからなかったので割愛。
ざっと家庭教師に聞いた限り、我が辺境伯領は現在、耕地を三分割して「春耕地」「秋耕地」「休耕地」を作ってローテーションする「三圃式農業」で頑張ってるらしいので、地球の歴史に照らし合わせるとまあまあ有効な策なはず。……まあ、できれば地球のクローバー以上に土壌を改良してくれて、生命力がめちゃくちゃ強くて、めっちゃ家畜を太らせてくれるマメ科?の新種が見つかれば、尚よし。ファンタジー世界なら、そういうご都合チート植物もある気がする。
そして、妹が推して来たのが【ジャガイモチート】。妹曰く、ジャガイモはなんか領政チートでは定番らしい。定番なら、同じように痩せた土地で育つらしいソバもいいんじゃね? って提案したら『中世ヨーロッパが江戸になっちゃう……』としょっぱい顔をしてた。……そば粉のガレットとかもあるって言ったのになあ。
まあ、何にせよ、そういう「痩せた土地でも育つ、主食になりうる栄養価の高い穀物」を新発見できれば、いいのだ。
ちなみにその時ググった情報によると、ジャガイモとかのナス科は特に連作障害を起こしやすく、一度ジャガイモ育てたら2~3年は同じ場所で育てない方がいいらしいので、そういう特性がないファンタジースーパー穀物があるとなおよしだ。違う科の植物でローテーションすればいいんらしいんだけど、そこまで詳しく調べてないしな……。
この二つの案の良いところは、「鑑定さえ使えれば、新発見しても不自然はない」「作物を発見できさえすれば、専門的な農業知識がなくても領政チートが可能」という二点。じつに主人公にとって、都合がよすぎる植物だ。
で、ここでご都合主義を正当化させる「なぜその異世界では先人が思いつかなかったのか」という事情が発生するわけである。
まあ、魔法が普通のこの世界に、イオンが存在するかなんて知らねえけども。
衝撃の前世を思い出してから、三日。
俺は単身で森に来ていた。
「いや、まさか『一人で森で修行したい』って言って、それが通ってしまうとは……」
何度も言うが、俺はまだ八歳。そして、王家の血も混ざったネルドゥース辺境伯家の嫡男。
本来だったら、ちょっとした外出ですら護衛がいるくらいの立場である。いくらチート持ちとはいえ、ふつう魔物がうじゃうじゃいる森に、一人で籠る許可なんか与えるかあ? と常識人な俺は思うけど、それが通じないくらい重すぎる大人たちの俺への信頼よ。
「特に剣と魔法のW師匠がノリノリだったな……『俺は五歳で山籠もりしたから、遅すぎるくらいだな!』『私は六歳だったな』ってなんだよ……てか、いつか俺があのじじい共を超える未来が来るとは思えねぇんだけど」
二人とも七十そこそこなはずなのに、化け物じみたじじい共だ。
剣と魔法を俺なりに極めたとしても、どっちかだけでは師匠どもに勝てる未来が思い浮かべない。……だからこそ、俺は両方のチート持ちなのかもだが。併用して対抗しろってことだろ。要は。
てかさ、あの二人なんでうちの領なんかにいるのか、とっても疑問。あんだけ才能あったら、普通王城で囲いこまれねぇ? うちの領地はわりと王都から独立した権限持ってるし、軍事費も国税から支払われているけど、王都周辺以上に土地が痩せているから割と貧乏よ? 王家から派遣された国境警備兵以外にも、辺境伯直属の兵士も養わないといけないからどうしてもそっちに予算取られるし。魔石が採掘できる鉱山があるとはいえ、それだって取り過ぎたら枯渇するから、収入は常に横ばいな状態。
大した給金支払われねぇうえに、王都と違って娯楽もない辺境なのに、よくこんな所にいるよ。本当。
「……まあ、その貧しい懐事情を何とかする為に、俺はここに来たんだけど」
あれからじっくり考えたわけだが、結局のところ獣人との戦争を引き起こすかもしれない最大の要因は、貧困だ。
食えないから、豊かな土地を持つ隣国を妬み、それを正当化する為宗教を持ち出す。もしくは、貧困から目を反らすために、宗教や獣人ヘイトに縋る。……それが一番なんだと思う。
第一次世界大戦から多額の賠償金を負わされたドイツ国民が、貧困から金持ちであるユダヤ人ヘイトに走り、その根拠にキリストがユダヤの王に殺された話を持ってきて虐殺を正当化したのと構図は一緒だな。こういう場合いくら「差別は良くない!」と叫んでも通じない。だって差別をやめたところで、貧困は解決しないから。
つまり、俺が今一番すべきことは、この国の食糧事情を解決することだ。そして、俺は自分がそれをできないとは思わない。
「あいつは確か『領政チートをする為には、ある程度のご都合主義は必要』って言ってたからな。『主人公が必死に考えてチートを駆使すれば、それだけであっさり国単位が救われてしまうくらいのご都合主義がないと話は盛り上がらない』って」
『「地球で思いつかれた知識なら、異世界でも先人が思いついてしかるべき」って突っ込まれることを想定するなら、逆に「なぜその異世界では先人が思いつかなかったのか」理由づけすればいいの! 領政チートの結果あり気で、後付けでそれが今までできなかった理由を考えるの!』
『……なるほど。一理ある』
『というわけで、お兄! 土地が貧しい場所で、食糧事情を大幅に解決できるような案を、ネットで検索して私に提案してください! 中世ヨーロッパくらいの設備でも何とかできるような案を!』
『そこは俺に丸投げなのかよ……』
結局その後妹は案を出させるだけ出させて、『……うまく小説に組み込む自信なくなったからやっぱいーかな。てか、私正直近親相姦エロ書きたいだけで、チート萌そこまでなかったわ』とかふざけたことを言ってたわけだが。
一度でも知識があいつの頭に刻まれたってことは、この世界でもあの時の案が通じる可能性は高い。
「……確かあの時最有力候補になったのは、【ノーフォーク農法】もしくは【ジャガイモやそばのように痩せた土地でも育ちやすい植物の新発見】の二つ……」
高校の歴史で習った「農業革命」をネットでググって、【ノーフォーク農法】を提案したのが、前世の俺。連作の結果土地が痩せるのを防ぐため、間にマメ科であるクローバーを挟んで土壌を改良したうえで、クローバーは牧草として消費するんだとか。何故土壌を改良してくれるかも書いてあった気がするけど、文系の俺にはわからなかったので割愛。
ざっと家庭教師に聞いた限り、我が辺境伯領は現在、耕地を三分割して「春耕地」「秋耕地」「休耕地」を作ってローテーションする「三圃式農業」で頑張ってるらしいので、地球の歴史に照らし合わせるとまあまあ有効な策なはず。……まあ、できれば地球のクローバー以上に土壌を改良してくれて、生命力がめちゃくちゃ強くて、めっちゃ家畜を太らせてくれるマメ科?の新種が見つかれば、尚よし。ファンタジー世界なら、そういうご都合チート植物もある気がする。
そして、妹が推して来たのが【ジャガイモチート】。妹曰く、ジャガイモはなんか領政チートでは定番らしい。定番なら、同じように痩せた土地で育つらしいソバもいいんじゃね? って提案したら『中世ヨーロッパが江戸になっちゃう……』としょっぱい顔をしてた。……そば粉のガレットとかもあるって言ったのになあ。
まあ、何にせよ、そういう「痩せた土地でも育つ、主食になりうる栄養価の高い穀物」を新発見できれば、いいのだ。
ちなみにその時ググった情報によると、ジャガイモとかのナス科は特に連作障害を起こしやすく、一度ジャガイモ育てたら2~3年は同じ場所で育てない方がいいらしいので、そういう特性がないファンタジースーパー穀物があるとなおよしだ。違う科の植物でローテーションすればいいんらしいんだけど、そこまで詳しく調べてないしな……。
この二つの案の良いところは、「鑑定さえ使えれば、新発見しても不自然はない」「作物を発見できさえすれば、専門的な農業知識がなくても領政チートが可能」という二点。じつに主人公にとって、都合がよすぎる植物だ。
で、ここでご都合主義を正当化させる「なぜその異世界では先人が思いつかなかったのか」という事情が発生するわけである。
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