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新しい家の建設は、宴会の後も順調に進んでいきました。
そして数日後、ついに私の新しい家が完成したのです。
「わあ……素敵……!」
目の前に建つ真新しい我が家を見上げて、私は感動のため息を漏らしました。
それは私が夢に見ていた通りの、素敵な木の山小屋でした。
いえ、夢で見た以上のものです。
森の木々をふんだんに使って建てられた家は、周りの景色に完璧に溶け込んでいます。
屋根にはサラマンダーが焼いてくれた、赤茶色の瓦が綺麗に並べられていました。
窓も大きくてたくさんの光が、部屋の中に差し込んできそうです。
窓枠には、綺麗な花の彫刻が施されています。
「主殿、どうぞ、中へお入りください」
代表のノームが、少しだけ照れくさそうに私を促してくれました。
私は期待に胸を膨らませながら、木の扉をそっと開けます。
家の中はまだ新しい木の、とても良い香りで満ていました。
一階は、広々としたリビングダイニングになっています。
部屋の中央にはノームたちが作ってくれた、大きな石造りの暖炉がどっしりと構えていました。
壁際にはこれまた見事な作りの、食器棚や本棚が備え付けられています。
テーブルや椅子も全て、森の木を使った手作りのものでした。
その一つ一つに、作り手の温かみが感じられます。
「すごいわ……、まるでおとぎ話に出てくるお家みたい」
私が感心しているとノームたちが、得意げに説明を始めました。
「この床板はな、水や汚れに強い特別な木を使っとるんじゃ」
「壁にはシルフ様の力を借りて、風通しが良くなるような魔法をかけておりますぞ」
「この暖炉は、サラマンダー様のお墨付きじゃ、冬でも家中がぽかぽかになること請け合いじゃわい」
精霊たちの祝福が、家の隅々にまで込められているようです。
なんて、贅沢な家なのでしょう。
リビングの奥には、キッチンとお風呂場がありました。
キッチンには、最新式の竈門まであります。
そしてお風呂場にはなんと、あの温泉から直接お湯を引いた檜風呂が設置されていました。
「家で、温泉に入れるなんて……!」
もはや貴族の館も、顔負けの豪華さです。
二階には、私の寝室とゲストルームがありました。
私の寝室には、大きな窓と可愛らしいバルコニーがついています。
バルコニーに出ると森の美しい景色が、一望できました。
遠くの山々まで、はっきりと見渡せます。
「ここからなら、毎日朝日が見られるわね」
ベッドも動物たちの毛と、柔らかな綿を使って作った特注品です。
ふかふかで雲の上で眠っているような、寝心地でした。
そして家の隣には、動物たちがいつでも自由に遊べる広々としたプレイルームまで作られています。
中には木で作った、滑り台やブランコまでありました。
ルーンも他の動物たちも、大喜びで新しい遊び場で駆け回っています。
「みんな本当にありがとう、こんなに素敵な家を作ってくれて」
私はノームたちに、心からの感謝を伝えました。
「なに主殿に喜んでもらえるのが、わしらにとって一番の喜びじゃ」
「今日からここが、主殿の新しい城ですな」
ノームたちは、本当に嬉しそうに笑っていました。
こうして私の、新しい家での生活が始まったのです。
その日の夜は完成祝いに、ささやかなパーティーを開きました。
新しい家の暖炉に、初めて火を入れます。
パチパチと心地よい音を立てて燃える炎を、みんなで囲みました。
私は腕によりをかけて、特製のビーフシチューを作ります。
みんな新しい家の居心地の良さに、すっかりくつろいでいました。
動物たちはふかふかの絨毯の上で、気持ちよさそうに寝そべっています。
精霊たちも、思い思いの場所でくつろいでいました。
その光景は、まるで一つの大きな家族のようです。
私はこの温かい光景を、何としても守り抜きたいと強く思いました。
そんな穏やかな日々が、数日続いたある日のことです。
森に、新たな来訪者が現れました。
それは一本の角を持つ、純白の馬でした。
伝説の聖獣、ユニコーンです。
ユニコーンはまだ子供のようで、その体は普通の馬よりも一回り小さいです。
そしてその後ろ足を、少しだけ引きずっていました。
どうやら、怪我をしているようです。
『森の主様、どうか、我らをお助けください』
ユニコーンの母親と思われる立派な大人のユニコーンが、テレパシーで私に助けを求めてきました。
彼女の純白の体毛は、月光のように輝いています。
彼女の話によると親子で森を旅している途中、獰猛な魔物に襲われてしまったそうです。
母親は必死に戦い、なんとか魔物を追い払いました。
しかし子供は、その時に足を怪我してしまいました。
この森が清らかな聖域になったという噂を聞き、癒やしの力を求めてやってきたというのです。
「まあ大変でしたわね、すぐにこちらへ来てください」
私はユニコーンの親子を、家の近くの泉へと案内しました。
子ユニコーンの後ろ足には、魔物の爪によるものと思われる深い傷があります。
傷口からは、邪悪な気が微かに漏れ出ていました。
このままでは、傷がどんどん悪化してしまうでしょう。
「大丈夫よ、怖くないからね、すぐに楽にしてあげるわ」
私は子ユニコーンの前に、そっとしゃがみ込みました。
そしてその傷口に、優しく手をかざします。
「清浄」
私の手から放たれた温かい光が、傷をゆっくりと包み込んでいきました。
傷口から漏れ出ていた邪悪な気が、光に触れて霧のように消え去っていきます。
そして深く裂けていた傷が、みるみるうちに塞がっていきました。
数秒後には、そこには傷跡一つ残っていませんでした。
「もう大丈夫よ、歩いてごらんなさい」
私がそう言うと子ユニコーンは、おそるおそる足を地面につけました。
もう、痛みはないようです。
嬉しそうにその場で、ぴょんぴょんと軽やかに跳ねてみせました。
『おお……! なんと、素晴らしい奇跡でしょう!』
母親のユニコーンが、感動の声を上げます。
『森の主様、このご恩は、決して忘れませぬ』
彼女は私に向かって、深く深く頭を下げました。
「いいえ、困っている時は、お互い様ですわ」
私は、にっこりと微笑みかけます。
子ユニコーンはすっかり元気になったのか、私の足元にすり寄ってきました。
そして感謝を示すように、私の頬を優しくぺろりと舐めます。
その仕草があまりにも可愛らしくて、私の心はすっかりとろけてしまいました。
こうしてユニコーンの親子も、しばらくの間この森で体を休めていくことになったのです。
私の楽園は、日に日に賑やかになっていきました。
そんな平和な昼下がりでした。
空の偵察をしていたグリフォンのフィリアが、少し神妙な顔つきで私の元へと舞い降りてきます。
『主様、また、王都からの使者が森の入り口に到着したようです』
「また、使者ですって?」
聖水は、もう十分に渡したはずです。
一体、今度は何の用なのでしょう。
『今回の使者は、アルフォンス王太子、その人です』
「殿下が、自ら……」
私は、思わず眉をひそめました。
あの傲慢な王太子が、わざわざここまで足を運ぶとは思えません。
何か、良からぬ魂胆があるに違いありませんでした。
『しかし主様、今回は軍隊を率いているわけではございません』
『供の者は数名の側近のみ、そして一台の豪華な馬車を連れております』
「馬車、ですか」
『はい、その馬車には、クライネルト侯爵家の紋章が』
「えっ……!?」
フィリアの言葉に、私は息を呑みました。
クライネルト侯爵家、それは紛れもなく私の実家の紋章です。
「まさか馬車の中にいるのは……、お父様とお母様……?」
アルフォンス殿下は私の両親を、人質代わりに連れてきたというのでしょうか。
グレンが、言っていた通りでした。
『主様が、無視できないような何かを盾にして』と。
これほど卑劣で、狡猾な手を使ってくるとは。
私の胸の中に、強い怒りの炎が燃え上がりました。
でも同時に、両親の安否が心配でたまりません。
追放されたとはいえ私を産み、育ててくれた唯一の家族なのですから。
『主様、いかがいたしますか、今回も追い返しますか?』
フィリアの問いに私は、唇をぎゅっと噛み締めました。
アルフォンス殿下の顔は、見たくありません。
でも両親を、このまま見捨てるわけにはいきませんでした。
私は、大きく深呼吸を一つします。
そして、心を決めました。
「いいえフィリア、今回は私が直接会います」
私の楽園を、そして私の家族を守るために。
私は初めて、王国の人間と対峙する覚悟を決めたのです。
そして数日後、ついに私の新しい家が完成したのです。
「わあ……素敵……!」
目の前に建つ真新しい我が家を見上げて、私は感動のため息を漏らしました。
それは私が夢に見ていた通りの、素敵な木の山小屋でした。
いえ、夢で見た以上のものです。
森の木々をふんだんに使って建てられた家は、周りの景色に完璧に溶け込んでいます。
屋根にはサラマンダーが焼いてくれた、赤茶色の瓦が綺麗に並べられていました。
窓も大きくてたくさんの光が、部屋の中に差し込んできそうです。
窓枠には、綺麗な花の彫刻が施されています。
「主殿、どうぞ、中へお入りください」
代表のノームが、少しだけ照れくさそうに私を促してくれました。
私は期待に胸を膨らませながら、木の扉をそっと開けます。
家の中はまだ新しい木の、とても良い香りで満ていました。
一階は、広々としたリビングダイニングになっています。
部屋の中央にはノームたちが作ってくれた、大きな石造りの暖炉がどっしりと構えていました。
壁際にはこれまた見事な作りの、食器棚や本棚が備え付けられています。
テーブルや椅子も全て、森の木を使った手作りのものでした。
その一つ一つに、作り手の温かみが感じられます。
「すごいわ……、まるでおとぎ話に出てくるお家みたい」
私が感心しているとノームたちが、得意げに説明を始めました。
「この床板はな、水や汚れに強い特別な木を使っとるんじゃ」
「壁にはシルフ様の力を借りて、風通しが良くなるような魔法をかけておりますぞ」
「この暖炉は、サラマンダー様のお墨付きじゃ、冬でも家中がぽかぽかになること請け合いじゃわい」
精霊たちの祝福が、家の隅々にまで込められているようです。
なんて、贅沢な家なのでしょう。
リビングの奥には、キッチンとお風呂場がありました。
キッチンには、最新式の竈門まであります。
そしてお風呂場にはなんと、あの温泉から直接お湯を引いた檜風呂が設置されていました。
「家で、温泉に入れるなんて……!」
もはや貴族の館も、顔負けの豪華さです。
二階には、私の寝室とゲストルームがありました。
私の寝室には、大きな窓と可愛らしいバルコニーがついています。
バルコニーに出ると森の美しい景色が、一望できました。
遠くの山々まで、はっきりと見渡せます。
「ここからなら、毎日朝日が見られるわね」
ベッドも動物たちの毛と、柔らかな綿を使って作った特注品です。
ふかふかで雲の上で眠っているような、寝心地でした。
そして家の隣には、動物たちがいつでも自由に遊べる広々としたプレイルームまで作られています。
中には木で作った、滑り台やブランコまでありました。
ルーンも他の動物たちも、大喜びで新しい遊び場で駆け回っています。
「みんな本当にありがとう、こんなに素敵な家を作ってくれて」
私はノームたちに、心からの感謝を伝えました。
「なに主殿に喜んでもらえるのが、わしらにとって一番の喜びじゃ」
「今日からここが、主殿の新しい城ですな」
ノームたちは、本当に嬉しそうに笑っていました。
こうして私の、新しい家での生活が始まったのです。
その日の夜は完成祝いに、ささやかなパーティーを開きました。
新しい家の暖炉に、初めて火を入れます。
パチパチと心地よい音を立てて燃える炎を、みんなで囲みました。
私は腕によりをかけて、特製のビーフシチューを作ります。
みんな新しい家の居心地の良さに、すっかりくつろいでいました。
動物たちはふかふかの絨毯の上で、気持ちよさそうに寝そべっています。
精霊たちも、思い思いの場所でくつろいでいました。
その光景は、まるで一つの大きな家族のようです。
私はこの温かい光景を、何としても守り抜きたいと強く思いました。
そんな穏やかな日々が、数日続いたある日のことです。
森に、新たな来訪者が現れました。
それは一本の角を持つ、純白の馬でした。
伝説の聖獣、ユニコーンです。
ユニコーンはまだ子供のようで、その体は普通の馬よりも一回り小さいです。
そしてその後ろ足を、少しだけ引きずっていました。
どうやら、怪我をしているようです。
『森の主様、どうか、我らをお助けください』
ユニコーンの母親と思われる立派な大人のユニコーンが、テレパシーで私に助けを求めてきました。
彼女の純白の体毛は、月光のように輝いています。
彼女の話によると親子で森を旅している途中、獰猛な魔物に襲われてしまったそうです。
母親は必死に戦い、なんとか魔物を追い払いました。
しかし子供は、その時に足を怪我してしまいました。
この森が清らかな聖域になったという噂を聞き、癒やしの力を求めてやってきたというのです。
「まあ大変でしたわね、すぐにこちらへ来てください」
私はユニコーンの親子を、家の近くの泉へと案内しました。
子ユニコーンの後ろ足には、魔物の爪によるものと思われる深い傷があります。
傷口からは、邪悪な気が微かに漏れ出ていました。
このままでは、傷がどんどん悪化してしまうでしょう。
「大丈夫よ、怖くないからね、すぐに楽にしてあげるわ」
私は子ユニコーンの前に、そっとしゃがみ込みました。
そしてその傷口に、優しく手をかざします。
「清浄」
私の手から放たれた温かい光が、傷をゆっくりと包み込んでいきました。
傷口から漏れ出ていた邪悪な気が、光に触れて霧のように消え去っていきます。
そして深く裂けていた傷が、みるみるうちに塞がっていきました。
数秒後には、そこには傷跡一つ残っていませんでした。
「もう大丈夫よ、歩いてごらんなさい」
私がそう言うと子ユニコーンは、おそるおそる足を地面につけました。
もう、痛みはないようです。
嬉しそうにその場で、ぴょんぴょんと軽やかに跳ねてみせました。
『おお……! なんと、素晴らしい奇跡でしょう!』
母親のユニコーンが、感動の声を上げます。
『森の主様、このご恩は、決して忘れませぬ』
彼女は私に向かって、深く深く頭を下げました。
「いいえ、困っている時は、お互い様ですわ」
私は、にっこりと微笑みかけます。
子ユニコーンはすっかり元気になったのか、私の足元にすり寄ってきました。
そして感謝を示すように、私の頬を優しくぺろりと舐めます。
その仕草があまりにも可愛らしくて、私の心はすっかりとろけてしまいました。
こうしてユニコーンの親子も、しばらくの間この森で体を休めていくことになったのです。
私の楽園は、日に日に賑やかになっていきました。
そんな平和な昼下がりでした。
空の偵察をしていたグリフォンのフィリアが、少し神妙な顔つきで私の元へと舞い降りてきます。
『主様、また、王都からの使者が森の入り口に到着したようです』
「また、使者ですって?」
聖水は、もう十分に渡したはずです。
一体、今度は何の用なのでしょう。
『今回の使者は、アルフォンス王太子、その人です』
「殿下が、自ら……」
私は、思わず眉をひそめました。
あの傲慢な王太子が、わざわざここまで足を運ぶとは思えません。
何か、良からぬ魂胆があるに違いありませんでした。
『しかし主様、今回は軍隊を率いているわけではございません』
『供の者は数名の側近のみ、そして一台の豪華な馬車を連れております』
「馬車、ですか」
『はい、その馬車には、クライネルト侯爵家の紋章が』
「えっ……!?」
フィリアの言葉に、私は息を呑みました。
クライネルト侯爵家、それは紛れもなく私の実家の紋章です。
「まさか馬車の中にいるのは……、お父様とお母様……?」
アルフォンス殿下は私の両親を、人質代わりに連れてきたというのでしょうか。
グレンが、言っていた通りでした。
『主様が、無視できないような何かを盾にして』と。
これほど卑劣で、狡猾な手を使ってくるとは。
私の胸の中に、強い怒りの炎が燃え上がりました。
でも同時に、両親の安否が心配でたまりません。
追放されたとはいえ私を産み、育ててくれた唯一の家族なのですから。
『主様、いかがいたしますか、今回も追い返しますか?』
フィリアの問いに私は、唇をぎゅっと噛み締めました。
アルフォンス殿下の顔は、見たくありません。
でも両親を、このまま見捨てるわけにはいきませんでした。
私は、大きく深呼吸を一つします。
そして、心を決めました。
「いいえフィリア、今回は私が直接会います」
私の楽園を、そして私の家族を守るために。
私は初めて、王国の人間と対峙する覚悟を決めたのです。
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