役立たずの【清浄】スキルと追放された私、聖女の浄化が効かない『呪われた森』を清めたら、もふもふ達と精霊に囲まれる楽園になりました

☆ほしい

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水源地をきれいにして浄化した帰り道は、来た時よりもずっと足取りが軽やかでした。
私の心は、大きな仕事を一つやり遂げたという、確かな満足感で満たされていたのです。
森の空気も、心なしか以前よりもさらに澄み渡っているように、私には感じられました。
道端で可憐に咲いている花の色も、より一層鮮やかに見えるのでした。
「ホーウェルさん、これでウンディーネも、きっとすぐに元気になりますわね。」
私の肩でゆっくりと羽を休めていたホーウェルさんが、私の言葉に深くうなずいてくれます。
「うむ、主殿の素晴らしいお力で、この森の命の源が守られたのですからのう。」
「水の流れが、本来の清らかさを取り戻せば、森全体がさらに活気づくことでしょう。」
彼の言う通りで、森はあちこちで喜びの声に満ちているようでした。
木々たちが、心地よい風に揺れてざわざわと楽しそうに歌っています。
たくさんの動物たちも、いつもより元気いっぱいに森の中を駆け回っていました。
私たちの住んでいる家に帰り着くと、ウンディーネが泉のほとりで私たちを待っていてくれました。
彼女の、まるで水晶のように透き通る水色の髪は、以前の美しい輝きを完全に取り戻しています。
その神々しい姿は、まるで物語に出てくる水の女神様のようで、本当にきれいでした。
『エリアーナ様、お帰りなさいませ。』
『おかげさまで、私の体も、すっかり元の通りになりましたわ。』
ウンディーネは、私に向かって優雅に微笑みかけます。
その声は、まるで鈴の音のように涼やかで、私の心に心地よく響きました。
『このご恩は、決して忘れませぬ。我ら水の精霊一同、エリアーナ様に永遠の感謝を捧げます。』
「まあ、そんなに大げさなことではございませんわ。」
「ウンディーネが、元気になってくださったことが、私にとって何よりの大きな喜びです。」
私が心からそう言うと、ウンディーネはとても嬉しそうに微笑みました。
そして、彼女が泉の澄んだ水にそっと手を触れます。
すると、水面からきらきらとまばゆく輝く、美しい水の玉がいくつも浮かび上がりました。
その不思議な水の玉は、まるで意思を持っているかのように、私の周りをふわりと舞い始めます。
『これは、我らからのささやかな感謝の印です。』
『この「精霊の涙」は、あらゆる植物の成長を促す、不思議な力を持っておりますの。』
『エリアーナ様の薬草園に、どうぞお使いくださいませ。』
「まあ、なんて綺麗なのでしょう。」
私は、そのあまりにも幻想的な光景に、思わずうっとりと見とれてしまいました。
精霊の涙は、まるで宝石のように輝きながら、薬草園の土にゆっくりと吸い込まれていきます。
これで、私の大切な薬草園は、さらに素晴らしいものになることでしょう。
私は、ウンディーネの優しい心遣いに、心からの感謝を何度も伝えました。

その夜、私はホーウェルさんと一緒に、リビングの暖かい暖炉の前で話し合います。
水源地で見た、あの不吉な未来の光景のことが、どうしても頭から離れなかったのです。
「ホーウェルさん、やはり、王国のことがとても心配ですわ。」
「このままでは、本当に取り返しのつかないことになってしまうかもしれません。」
ホーウェルさんは、私のその言葉に、静かにうなずいてくれました。
「うむ、わしも、主殿と全く同じ気持ちですじゃ。」
「ミレイ殿の行ったあの魔法は、大地に対する、あまりにも大きな罪です。」
「その代償は、いずれ王国全体を飲み込むほどの、大きな災いとなって返ってくるでしょう。」
彼の、いつも通り落ち着いているけれど重い言葉。
その言葉が、私の胸にずしりと重く響きました。
罪のないたくさんの人々が、その恐ろしい災いに巻き込まれるのを、見過ごすことはできません。
「ホーウェルさん、私は、バーンズ子爵に手紙を書こうと思います。」
「王国の北の土地で起きているという異変について、詳しく調べてほしいと、お願いするつもりです。」
「うむ、それがよろしいでしょうな。」
「まずは、正確な情報を集めることが、何よりも肝心ですからのう。」
ホーウェルさんは、私の考えに、すぐに賛成してくれました。
私たちは、早速書斎の机に向かいます。
そして、バーンズ子爵への手紙の文面を、一言一句、とても慎重に考え始めました。
アルフォンス殿下や、ミレイ様の気分を害して、刺激しないようにしなければいけません。
でも、事の重大さを、きちんと伝えなければなりませんでした。
『最近、王国の北の土地で、大地の力が弱まっているという不吉な噂を耳にしました。』
『民の暮らしを案じる者として、その真偽を確かめたく、信頼できるあなた様に調査をお願いする次第です。』
私たちは、そんな風に、できるだけ穏便な言葉を選んで手紙を丁寧に書き上げました。
書き終えた手紙を、私は美しい花の模様が入った封筒に入れます。
そして、その大切な手紙を、再び聖獣グリフォンのグレンに託すことにしました。
「グレン、また大変なお願いになってしまいますが、よろしいでしょうか。」
『はっ、主様のお役に立てるのでしたら、このグレン、いかなる場所へも飛んでまいります。』
グレンは、力強くそう言うと、手紙を傷つけないように、とても大切にくわえました。
そして、大きな翼で、夜の闇へと力強く飛び立っていったのです。
王都にいる、信頼できるバーンズ子爵の元へ。
私は、遠ざかっていくグレンのたくましい姿を、ルーンと一緒にいつまでも見送りました。
胸の中には、大きな不安と、そしてほんの少しの希望が満ちています。
どうか、私のこの心配が、ただの思い過ごしでありますように。
私は、夜空に浮かぶ月に、そっとそう祈るのでした。

グレンが、王都へ旅立った後も、森での穏やかな日常は続きます。
私たちは、ウンディーネからもらった「精霊の涙」を、早速薬草園に撒いてみました。
すると、本当に驚くべきことが起こったのです。
薬草たちが、今まで以上に生き生きと輝き始めました。
葉の色は、さらに深い緑色になり、茎もぐんぐんと力強く伸びていきます。
そして、まだ蕾だったたくさんの花が、次々と美しい花を咲かせ始めたのです。
「すごいわ、これが精霊の涙の力なのですね。」
その、まるで奇跡のような光景に、私たちは皆、感嘆の声を漏らしました。
ノームの若者は、まるで自分の子供の成長を喜ぶかのように、目を細めています。
「これなら、薬の収穫量も、今までの倍以上になりますぞ。」
「薬の品質も、きっとさらに素晴らしいものになるに違いありません。」
彼の言う通りで、精霊の涙を浴びた薬草からは、今まで以上に清らかで強い力が感じられました。
この薬草を使えば、さらに多くの人々を救うことができるでしょう。
私は、薬草園のさらなる発展に、胸をときめかせていました。
そんな時、ホーウェルさんが、私に新しい提案をしてくれます。
「主殿、これだけ素晴らしい薬草が揃ったのです。」
「人々の体を癒やす薬だけでなく、心を癒やす薬も作ってみてはいかがでしょうかな。」
「心を、癒やす薬、ですって。」
「うむ。例えば、飲むと心が安らぎ、良い夢が見られるようなハーブティーなどです。」
「王都には、日々の疲れや悩みを抱えている者も、たくさんいるはずですからのう。」
ホーウェルさんの提案は、とても素敵なものでした。
確かに、体の健康と同じくらい、心の健康も大切です。
優しい香りのハーブティーが、人々の心を少しでも軽くできるのなら、それほど嬉しいことはありません。
「ぜひ、作ってみたいですわ。」
「ホーウェルさん、おすすめの薬草はございますか。」
「ふむ、それでしたら、あの丘に咲くカモミールと、ラベンダーを組み合わせるのが良いでしょう。」
「それらを、蜂蜜でほんのり甘くすれば、極上のリラックスティーが完成するはずです。」
私たちは、早速その新しいハーブティーの開発に取り掛かりました。
仲間たちと、新しいものを作り出す時間は、いつも本当に楽しいものです。
私の楽園は、今日も平和な創造の喜びに満ちていました。

その頃、王都にあるバーンズ子爵の屋敷では、主人が一人、難しい顔で腕を組んでいます。
彼の元には、エリアーナ様からの新しい手紙が、聖獣グリフォンによって届けられていました。
手紙の内容を読んだ彼は、深い衝撃を受けています。
「なんと、エリアーナ様は、北の土地の異変にまでお気づきであったか。」
その、あまりにも鋭い洞察力に、彼は改めて感服していました。
そして同時に、エリアーナ様が心配していることが、おそらく真実だろうと直感します。
彼自身も、最近の王国の様子に、言いようのない不安を感じていたのです。
ミレイ様の起こした「豊穣の奇跡」という、あまりにも出来すぎた話。
そして、その裏で囁かれ始めた、不吉な噂。
「これは、一刻の猶予もならんようですな。」
バーンズ子爵は、すぐに信頼できる部下を数人、自室に呼びました。
そして、彼らに極秘の任務を与えます。
「今すぐ、王都の北にある、あの麦畑へ向かえ。」
「そして、そこで何が起きているのか、この目で確かめてくるのだ。」
「これは、王家にも知られてはならぬ、極秘の調査である。くれぐれも、気をつけて行け。」
部下たちは、主人のただならぬ様子に、緊張した面持ちでうなずきました。
そして、夜の闇に紛れて、王都を静かに出発していったのです。
彼らが、そこで目撃することになる光景。
その光景が、彼らの想像を絶するほど、恐ろしいものであるとは、まだ誰も知りません。
バーンズ子爵は、部下たちを見送った後、一人静かにため息をつきました。
そして、窓の外に広がる王都の夜景を見つめながら、ぽつりとつぶやきます。
「エリアーナ様、どうか、この国をお守りください。」
彼のその祈りは、夜の風に乗って、遠い森へと運ばれていったのでした。
ミレイは、その夜も悪夢にうなされていました。
自分の足元から、大地が崩れ落ちていく夢です。
彼女の悲鳴は、豪華な寝室の壁に、むなしく吸い込まれていきました。
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