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リリアーナ王女の宣言に、その場にいた全員が息を飲んだ。
普段は温厚で優雅な彼女の口から、これほど冷たく、そして絶対的な意志を込めた言葉が出るとは、誰も予想していなかったのだろう。
各国の代表者たちも、ライオスたちの卑劣な企みに怒りをあらわにし、口々に叫んでいる。
「アルス様を愚弄するとは許しがたし!」
「レイグランド王国には、連合軍で制裁を!」
「皆様、落ち着いてください」
俺は静かにそう言って、騒然とした空気をなだめた。
「俺は、そこまで大袈裟な話にするつもりはありません。向こうが挑んできたのなら、こちらもそれに応じるまでです。リリアーナ王女、彼らはまだ、俺の本当の力に気づいていないのでしょう。ならば、教えてやるまでです」
俺の言葉に、リリアーナ王女の瞳が再び輝き始めた。
「アルス様、まさか……!」
「ええ。どうせなら、徹底的に叩きのめして、もう二度と俺に、そしてこのアルス連合にちょっかいを出せないようにしてやりましょう。それで、俺の平和なスローライフが守られるのなら、安いものですからね」
リリアーナ王女は満面の笑みを浮かべた。
「ふふ、さすがはアルス様ですわ。わたくし、そのご決断、心より嬉しく思います。では、早速ですが、ライオスたちを迎え撃つための準備を始めましょう」
王女の号令の下、アルス連合の面々は一致団結して動き始めた。
俺の作った生命の城壁の警備はさらに強化され、各国から派遣された精鋭兵士たちは城壁の死角になりそうな場所に特殊な罠を仕掛ける。
俺も城壁に新たな植物を追加した。
それは甘い香りを放ち、侵入者の嗅覚を麻痺させ、さらにその香りを嗅いだ者に一時的な幻覚を見せるという特殊な植物だ。
「これなら、侵入者は自分の位置を見失い、簡単に捕縛草の罠にかかるはずだ」
俺の防衛システムに、バルトロ建築士長は深く感銘を受けていた。
「アルス様、あなた様のスキルは、もはや自然そのものを操る領域に達しておられますな。この城壁があれば、いかなる軍勢も、この地に足を踏み入れることはできませぬぞ」
まあ、さすがにそこまで大袈裟ではないと思うが、これで拠点の安全性はほぼ完璧だろう。
ライオスたちが来ても、無傷で捕らえることができるはずだ。
その夜、リリアーナ王女が少し真面目な顔で俺に尋ねた。
「アルス様、一つ、よろしいでしょうか」
「何です、王女殿下」
「あの……ライオスという勇者、あなた様を追放した人物と聞いております。……その、お辛い過去を思い出させてしまうのでは、と……」
リリアーナ王女の心遣いが胸に響く。
「大丈夫ですよ、王女殿下。今となっては、感謝こそすれ、辛い過去でもなんでもありませんから」
「感謝、ですか?」
「ええ。彼らが俺を追放してくれたおかげで、俺は自分のスキルの本当の力に気づくことができました。そして、この素晴らしい仲間たちと出会えた。俺の人生は、あの追放を境に、大きく良い方向へ舵を切ったのです。むしろ、彼らにはお礼を言いたいくらいですよ」
俺が笑顔で答えると、王女ははっとした表情を浮かべ、やがて安堵したように微笑んだ。
「アルス様は、本当に心が広いお方ですわね。わたくし、また一つ、アルス様のお人柄に触れ、ますます尊敬の念を抱きましたわ」
そう言って、彼女は少し照れたように微笑み、俺の淹れたハーブティーを一口飲んだ。
そのハーブティーには心を落ち着かせる効果がある。王女も少し緊張していたのかもしれない。
そんな無邪気な姿が、俺にはとても愛おしく思えた。
「そういえば、王都での治療薬の臨床試験はどうなっているんですか?」
リリアーナ王女は誇らしげに語り始めた。
「はい。ゼフィルス様が持ち帰った治療薬は王都の病院で多くの患者の命を救っています。今では、ゼフィルス様が中心となり、王立薬草研究所・辺境支部で得られた知見をもとに更なる改良が進められているようです。特に、アルス様が開発された『黄金の花』の万能適応型特性は、薬学界の常識を覆す画期的な発見だと、ゼフィルス様は興奮気味に語っておられました」
ゼフィルス様も元気そうで何よりだ。俺が提供した薬草が、彼らの知識と合わさって進化していく。
世界の医療技術が発展していくなら、これほど嬉しいことはない。
「そして、この治療薬はエルグランド王国だけでなく、紫斑熱に苦しむ全ての国々へ無償提供されることが決定いたしました。これも、アルス様が仰った『全ての民の共有財産とすること』という理念に基づき、わたくしと宰相が懸命に交渉した結果ですわ」
俺は心から感動した。
「それは素晴らしいことですね、王女殿下。これで多くの命が救われる」
「はい。ですが、そのためにもアルス様の安全と、この拠点の平和は絶対に守らなければなりません。ですから……どうか、ご安心してお任せくださいまし」
そう言って、リリアーナ王女は俺の手にそっと自分の手を重ねた。
その温かさが心に染み渡る。
「ありがとう、王女殿下」
俺は微笑んだ。
普段は温厚で優雅な彼女の口から、これほど冷たく、そして絶対的な意志を込めた言葉が出るとは、誰も予想していなかったのだろう。
各国の代表者たちも、ライオスたちの卑劣な企みに怒りをあらわにし、口々に叫んでいる。
「アルス様を愚弄するとは許しがたし!」
「レイグランド王国には、連合軍で制裁を!」
「皆様、落ち着いてください」
俺は静かにそう言って、騒然とした空気をなだめた。
「俺は、そこまで大袈裟な話にするつもりはありません。向こうが挑んできたのなら、こちらもそれに応じるまでです。リリアーナ王女、彼らはまだ、俺の本当の力に気づいていないのでしょう。ならば、教えてやるまでです」
俺の言葉に、リリアーナ王女の瞳が再び輝き始めた。
「アルス様、まさか……!」
「ええ。どうせなら、徹底的に叩きのめして、もう二度と俺に、そしてこのアルス連合にちょっかいを出せないようにしてやりましょう。それで、俺の平和なスローライフが守られるのなら、安いものですからね」
リリアーナ王女は満面の笑みを浮かべた。
「ふふ、さすがはアルス様ですわ。わたくし、そのご決断、心より嬉しく思います。では、早速ですが、ライオスたちを迎え撃つための準備を始めましょう」
王女の号令の下、アルス連合の面々は一致団結して動き始めた。
俺の作った生命の城壁の警備はさらに強化され、各国から派遣された精鋭兵士たちは城壁の死角になりそうな場所に特殊な罠を仕掛ける。
俺も城壁に新たな植物を追加した。
それは甘い香りを放ち、侵入者の嗅覚を麻痺させ、さらにその香りを嗅いだ者に一時的な幻覚を見せるという特殊な植物だ。
「これなら、侵入者は自分の位置を見失い、簡単に捕縛草の罠にかかるはずだ」
俺の防衛システムに、バルトロ建築士長は深く感銘を受けていた。
「アルス様、あなた様のスキルは、もはや自然そのものを操る領域に達しておられますな。この城壁があれば、いかなる軍勢も、この地に足を踏み入れることはできませぬぞ」
まあ、さすがにそこまで大袈裟ではないと思うが、これで拠点の安全性はほぼ完璧だろう。
ライオスたちが来ても、無傷で捕らえることができるはずだ。
その夜、リリアーナ王女が少し真面目な顔で俺に尋ねた。
「アルス様、一つ、よろしいでしょうか」
「何です、王女殿下」
「あの……ライオスという勇者、あなた様を追放した人物と聞いております。……その、お辛い過去を思い出させてしまうのでは、と……」
リリアーナ王女の心遣いが胸に響く。
「大丈夫ですよ、王女殿下。今となっては、感謝こそすれ、辛い過去でもなんでもありませんから」
「感謝、ですか?」
「ええ。彼らが俺を追放してくれたおかげで、俺は自分のスキルの本当の力に気づくことができました。そして、この素晴らしい仲間たちと出会えた。俺の人生は、あの追放を境に、大きく良い方向へ舵を切ったのです。むしろ、彼らにはお礼を言いたいくらいですよ」
俺が笑顔で答えると、王女ははっとした表情を浮かべ、やがて安堵したように微笑んだ。
「アルス様は、本当に心が広いお方ですわね。わたくし、また一つ、アルス様のお人柄に触れ、ますます尊敬の念を抱きましたわ」
そう言って、彼女は少し照れたように微笑み、俺の淹れたハーブティーを一口飲んだ。
そのハーブティーには心を落ち着かせる効果がある。王女も少し緊張していたのかもしれない。
そんな無邪気な姿が、俺にはとても愛おしく思えた。
「そういえば、王都での治療薬の臨床試験はどうなっているんですか?」
リリアーナ王女は誇らしげに語り始めた。
「はい。ゼフィルス様が持ち帰った治療薬は王都の病院で多くの患者の命を救っています。今では、ゼフィルス様が中心となり、王立薬草研究所・辺境支部で得られた知見をもとに更なる改良が進められているようです。特に、アルス様が開発された『黄金の花』の万能適応型特性は、薬学界の常識を覆す画期的な発見だと、ゼフィルス様は興奮気味に語っておられました」
ゼフィルス様も元気そうで何よりだ。俺が提供した薬草が、彼らの知識と合わさって進化していく。
世界の医療技術が発展していくなら、これほど嬉しいことはない。
「そして、この治療薬はエルグランド王国だけでなく、紫斑熱に苦しむ全ての国々へ無償提供されることが決定いたしました。これも、アルス様が仰った『全ての民の共有財産とすること』という理念に基づき、わたくしと宰相が懸命に交渉した結果ですわ」
俺は心から感動した。
「それは素晴らしいことですね、王女殿下。これで多くの命が救われる」
「はい。ですが、そのためにもアルス様の安全と、この拠点の平和は絶対に守らなければなりません。ですから……どうか、ご安心してお任せくださいまし」
そう言って、リリアーナ王女は俺の手にそっと自分の手を重ねた。
その温かさが心に染み渡る。
「ありがとう、王女殿下」
俺は微笑んだ。
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